ユダヤ教の聖書(旧約聖書)には、「創造説・終末論・メシア思想(救世主思想)」といった神秘主義思想が多く収載されていますが、これらのユダヤ教の神秘主義思想は「カバラ」とも呼ばれています。
「クリフォト(Qliphoth)」というのは、ユダヤ教のカバラの中で「悪の勢力・正しい均衡を乱す諸力・悪事悪徳」を意味する邪悪と相関する概念なのです。
この記事では、クリフォトについて徹底的に分かりやすく解説していきます。
- クリフォトの悪と反対の特徴を持つ生命の樹:生命の樹と邪悪の樹
- クリフォトを図式化した「邪悪の樹」を構成する10個のクリファー
- 邪悪の樹の世界とはどんな世界か?
- 邪悪の樹のクリファーに対応する悪魔たちとセトのトンネル
- まとめ
1. クリフォトの悪と反対の特徴を持つ生命の樹:生命の樹と邪悪の樹
クリフォトとはユダヤ教の神秘主義カバラにおいて、「邪悪な勢力・要因・問題」などを指し示す概念であり、クリフォトの全体的な概略やモデル図は「邪悪の樹(Tree of Evil)によって描かれることになります。
この項目では、ユダヤ教の聖書・カバラで「生命の樹」と対置される「邪悪の樹」についての概略を説明します。
1-1. 「生命の樹」の概略の説明:邪悪なクリフォトと反対の世界を示す「生命の樹」
「生命の樹」は、旧約聖書の創世記(2章9節~)に登場するエデンの園の中央に植えられた神聖な木であり、生命の樹の実を食べると神と同じ「永遠の命」を得られると伝えられています。
ユダヤ教のカバラでは、生命の樹は「セフィロトの木」とも呼ばれていて、セフィラと呼ばれる「10個の光の球」と「22個の小径(パス)」で構成されている木とされています。
生命の樹の実と知恵の樹の実を両方とも食べた場合、人間も神と同等の「永遠の生命+無限の知恵」を手に入れられるので、唯一神はそれを恐れたとも言われます。
知恵の樹の実を食べたアダムとイブ(エヴァ)が「天国の楽園」を追放された理由も、生命の樹の実まで食べられたら人間が神を脅かす「永遠の存在」になりかねないからだったという説もあるのです。
1-2. 「生命の樹」を構成する善のセフィラ
生命の樹は、クリフォトとは反対の「善の属性」を持つ「10個のセフィラ(光の球)」によって構成されています。
生命の樹を作る「10個+1個のセフィラ」とはそれぞれ以下になります。
1-2-1. ケテル(Keter:王冠)
ケテルは第1のセフィラで思考・創造を司り、王冠の権威を持つ王の横顔で表現され、最後の剣であるマルクトと連結しています。
数字は1、色は白、宝石はダイアモンド、惑星は海王星を象徴します。
神名はエヘイエ、守護天使はメタトロンです。
1-2-2. コクマー(Chokhmah:知恵)
コクマーは第2のセフィラで男性原理を司り、無限の知恵を有する至高の父とも呼ばれます。
数字は2、色は灰色、宝石はトルコ石、惑星は天王星を象徴します。
神名はヨッド、守護天使はラツィエルです。
1-2-3. ビナー(Binah:理解)
ビナーは第3のセフィラで女性原理を司り、理解のある至高の母とも呼ばれます。
数字は3、色は黒、宝石は真珠、金属は鉛、惑星は土星を象徴して、神名はエロヒム、守護天使はザフキエルです。
1-2-4. ケセド(Chesed:慈悲)
ケセドは第4のセフィラで、慈悲と相関して王座に鎮座する王で表現されます。
数字は4、色は青、金属は錫、図形は正四面体、宝石はサファイア、惑星は木星を象徴します。
神名はエル、守護天使はザドキエルです。
1-2-5. ゲブラー(Gevurah:峻厳)
ゲブラーは第5のセフィラで、天空の外科医の異名を取ります。
数字は5、色は赤、図形は五角形、金属は鉄、宝石はルビー、惑星は火星を象徴します。
神名はエロヒム・ギボール、守護天使はカマエルです。
1-2-6. ティファレト(Tiphereth:美)
生命の樹の中央部に鎮座するティファレトは第6のセフィラで美と相関します。
数字は6、色は黄、金属は金、惑星は太陽を象徴します。
神名はエロハ、守護天使はミカエルです。
1-2-7. ネツァク(Netzach:勝利)
ネツァクは第7のセフィラで、勝利を示唆する全裸の女性で表現します。
数字は7、色は緑、金属は銅、宝石はエメラルド、惑星は金星を象徴します。
神名はアドナイ・ツァバオト、守護天使はハニエルです。
1-2-8. ホド(Hod:栄光)
ホドは第8のセフィラで、栄光を予見します。
数字は8、色は橙色、金属は水銀、惑星は水星を象徴します。
神名はエロヒム・ツァバオト、守護天使はラファエルです。
1-2-9. イェソド(Yesod:基礎)
イェソドは第9のセフィラで、世界の基礎と為すアストラル界を象徴し、裸の男性で表現します。
数字は9、色は紫、金属は銀、惑星は月を象徴します。
神名はシャダイ・エル・カイ、守護天使はガブリエルです。
1-2-10. マルクト(Malkuth:王国)
マルクトは第10のセフィラで、来るべき神の王国を象徴して、物質世界を意味します。
数字は10、色はレモン色・オリーブ色・小豆色・黒の4色、宝石は水晶、惑星は地球を象徴します。
神名はアドナイ・メレク。
守護天使はサンダルフォンです。
1-2-11. ダアト(Daat:知識)
ダアトは隠れたセフィラ(=次元が異なる深淵に存在する特別なセフィラ)とされ、神の真意とつながる知識を司っています。
惑星は天王星を象徴します。
2. クリフォトのモデルとなる「邪悪の樹」とは何か?
ユダヤ教のバカラで邪悪な勢力や悪徳のパワーを意味しているクリフォトは、「生命の樹」と対置される「邪悪の樹」によって具体的に表現されることになります。
この項目では、邪悪の樹の概略とモデルについて説明していきます。
2-1. 邪悪の樹は「悪の属性」を持つ逆さまの樹:邪悪の樹は10個のクリファーで構成
「邪悪の樹」は生命の樹とは反対の「邪悪の属性」を持つ樹で、クリファーと呼ばれる「10個の殻・皮」から構成されています。
邪悪の樹はクリフォトを図式化した代表的なモデルの一つで、生命の樹の最下位の10番目のセフィラ「マルクト」の下方に伸びた形態を持ちます。
邪悪の樹は、生命の樹を逆さまにした構造なので「逆さまの樹」と呼ばれることもありますが、邪悪の樹のクリファー(球体番号は虚数単位のi)には「各種の悪徳・悪魔」が対応しています。
2-2. 邪悪の樹は「虚無(虚数単位i)」に引き込まれる樹
生命の樹は「高次の光・善性」を志向する明るい樹ですが、邪悪の樹は「虚無・悪徳」の世界に引き込まれるような暗い樹としての特徴を持っています。
邪悪の樹を構成している暗黒の殻・球体であるクリファーが複数形になると「クリフォト」と呼ばれます。
クリファーは「殻(抜け殻)・皮」と翻訳されますが、暗黒の球体の形状をしていて、人類が普遍的に持たざるを得ないとされる「10個の悪徳・悪事・悪しき精神」などを象徴しているのです。
クリフォトのクリファーはセフィラの「光」の反対の属性を持っていますが、「暗闇」ではなく「虚無」の意味を持つものとして解釈されています。
3. クリフォトを図式化した「邪悪の樹」を構成する10個のクリファー
クリフォトを図式化したモデルである「邪悪の樹」は、以下の10個のクリファーから構成されていると考えられています。
3-1. キムラヌート(物質主義:10i)
キムラヌート(物質主義:10i)は、「モノ・金銭」にしか価値を感じることができないという俗物主義の悪徳であり、「人としての温かい心」や「物事に感動する感受性」を失いやすくなってしまいます。
人間が生きている世界は「物質主義」と「精神主義(人情と倫理)」のバランスによって秩序が保たれていますから、物質主義に偏りすぎることは「人としての心」を失ってしまうリスクにもなるのです。
3-2. アィーアツブス(不安定:9i)
アィーアツブス(不安定:9i)は、人間の幸福感・安心感と深く関わっている「精神状態や物質生活の安定」を失ってしまうという悪徳・不幸です。
精神状態が不安定になれば、私たちは平穏な日常生活や人間関係を楽しむこともできなくなってしまいます。
精神的な不安定だけではなく経済生活の不安定もまた、人間の心を悪い方向に荒廃させてしまう一因になるのです。
3-3. ケムダー(貪欲:8i)
ケムダー(貪欲:8i)は、ユダヤ教だけではなく仏教とも通じている「貪欲(欲深さ)の悪徳」であり、満足することを知らずに「もっと欲しいもっと欲しいという欲深い気持ち」を持っていると私たちはいつまでも幸せな心理状態に至ることができません。
それどころか、貪欲さがあまりに強くなると、「人のモノを奪ってでも欲しい」や「他人はどうでもいいから自分だけ楽しみたい」という悪徳に陥ってしまうのです。
3-4. ツァーカブ(色欲:7i)
ツァーカブ(色欲:7i)は、「色々なタイプの異性に対する過剰な性的関心・性欲充足」のことを意味していますが、「女遊び(男遊び)」が派手になりすぎると、世の中の婚姻・恋愛の秩序は乱れて、人の心が荒みきってしまいます。
愛情に基づかない性的行為の虚しさに気づかずに、「もっといい女(いい男)を抱きたい・パートナーだけでは性的に満足できない」と考えるようになると、自分だけではなく家族や周囲の人みんなが不幸になってしまいやすいのです。
3-5. カイツール(醜悪:6i)
カイツール(醜悪:6i)は、「人としての正しい道=倫理」を踏み外すという醜悪な悪徳を意味しています。
人間の生き様や価値観として醜悪になってしまうと、「人からどう見られてもいいから自分の生々しい欲望を満たしたい」という動物のような存在にまで我が身を落としてしまいます。
人間としての心の美しさや生き方の正しさを見失うと、人は簡単に「醜悪」の悪徳・情けない立場に落ちてしまうのです。
3-6. アクゼリュス(残酷:5i)
アクゼリュス(残酷:5i)は、人としての思いやりや慈悲心・良心を失ってしまう悪徳であり、「他人の肉体や精神の痛み」が分からなくなってしまうのです。
自分の利益や欲望、正義のためなら、他人の生命・心などどうなっても構わないと思う時に、「残酷の悪徳」が強まってきます。
人を傷つけたり殺してまで欲望を満たしたいと思った時、あなたは既に人としての心を失っているのです。
3-7. アディシュス(無感動:4i)
アディシュス(無感動:4i)は、「物事・人間の行動に感動することのできる人間らしい心」を失ってしまう悪徳です。
どんな映画やドラマを見ても、どんなに尊い自己犠牲を払った人を見ても、まったく1ミリも心が動かない「無感動な人」というのは、言い方を変えれば「他人がどうなっても構わない冷酷で無慈悲な人間」であることを意味しています。
人が人らしい温かい心を維持するためには、やはり「物事に感動することのできる心」が必要になってくるのです。
3-8. シェリダー(拒絶:3i)
シェリダー(拒絶:3i)は、人間世界や他者の良心・倫理といったものを拒絶してしまう悪徳であり、あなた自身が「人間社会のまっとうな一員」であることを放棄することにつながってしまうのです。
自分自身で人間社会のルールや倫理観を徹底的に拒絶する人には、もはや神や善人の仲間の「救済の言葉」さえも届かなくなってしまいます。
聞く耳を持たない、人の善意や社会のルールを拒絶することは恐ろしい悪徳なのです。
3-9. エーイーリー(愚鈍:2i)
エーイーリー(愚鈍:2i)は、あなたの人間としての知性や倫理に裏打ちされた「正常な判断力・行動制御」を完全に失ってしまうことを意味しています。
本当に愚鈍な人には、誰の注意も警告も耳に入らなくなります。
愚鈍の悪徳に陥ると、「自意識・知性といった人としての尊厳の根拠」が失われてしまう恐れがあるので、邪悪の樹のクリファーにおいても悪徳のレベルが高いとされているのです。
3-10. バチカル(無神論:1i)
バチカル(無神論:1i)は、ユダヤ教やキリスト教などの一神教の世界では、もっとも致命的でもっとも悪質な最低の心理状態になります。
神はすべての善悪や目的の「究極の根拠」であり、その神の存在を否定してしまう無神論は「人間が何をやっても構わない」という危険思想につながっているからです。
人は人を究極的には裁くことはできませんから、「殺人・強盗・強姦・傷害」などの重い罪を犯しても、神のいない世界では罪悪感に苦しむことすら無くなってしまうのです。
4. 邪悪の樹の世界とはどんな世界か?
10個の虚無のクリファーから構成されている「邪悪の樹の世界」とはどのような世界であり、その「悪・虚無の世界」に入り込んでしまうと私たち人間はどうなってしまうのでしょうか。
4-1. 「邪悪の樹の世界」は人間の生命力・判断力をどんどん奪い取る
「虚無・悪」に満ちた邪悪の樹の世界は、「光・善」に満ちた生命の樹の世界よりも人間が生きている世界に近い場所にあるので、常に私たちは「悪徳・悪事・虚無」に落ち込まないように気をつけていなければなりません。
人間が邪悪の樹のクリファーが象徴する「虚無・悪の世界」に入り込んでしまうと、「健全な生命エネルギー」がどんどん吸い取られて流出していくことになってしまいます。
邪悪の樹の世界に入ると、人間はどんどん心身の健康状態が悪くなり、他者を傷つけたり騙したり殺したりしたいという「邪悪な欲望」や「虚無主義・無気力」に侵されていく危険性があります。
10個のクリファーが意味している、「貪欲・色欲・残酷・無感動・愚鈍」などの好ましくない精神状態や特徴をいつの間にか身につけていき、最終的には生命エネルギーと正常な判断力をすべて吸い取られて死ぬことにもなるのです。
4-2. クリフォトは「サイコパス・エナジーパンパイア」とも関係している
邪悪の樹の世界に長く滞在していると、人はクリフォトの悪徳や悪しき精神状態と一体化していくことになります。
生命エネルギーと正常な判断力をどんどん失っていくと、人は「心身の病気・無気力・衰弱や自殺」に至りやすくなるのですが、人によっては「物質主義+残酷性の悪徳」を身につけてしまい、「人の痛み・恐怖・心の状態」にまったく共感することのできないサイコパス(精神病質者)になってしまうのです。
ユダヤ教のバカラの解釈では、良心の痛みを感じずに快楽殺人(猟奇殺人)や連続殺人を繰り返すサイコパス(ソシオパス)は、生来的にクリフォトや邪悪の樹の世界と深くつながってしまっているのです。
クリフォトの「拒絶+無神論の悪徳」と過剰に同一化すると、一緒にいるだけで他人のポジティブなエネルギーやモチベーションを吸い取ってしまう「エナジーバンパイア」という恐ろしい存在になってしまうこともあります。
エナジーバンパイアは相手の生命エネルギーを吸血鬼のように吸い取って、その人の「やる気・喜び・楽しみ・明るさ」をすべて奪い取ってしまう虚無的でネガティブなモンスターなのです。
5. 邪悪の樹のクリファーに対応する悪魔たちとセトのトンネル
邪悪の樹のモデル図式では、10個のクリファーの悪徳にそれぞれ、10体の悪魔が配置されています。
この項目では、イギリスの神秘主義的なオカルティストであるケネス・グラントが著作「Nightside of Eden(1977年)」で記した「セトのトンネル」の概略についても紹介していきます。
5-1. 邪悪の樹のクリファーに配置された10体の悪魔たち
邪悪の樹の10個のクリファーにそれぞれ配置された悪魔は、上位のクリフォトでは「サタン(二つの争う勢力:1i)・ベルゼブブ(妨害者:2i)・ルキフグス(隠匿者:3i)」になります。
中位のクリフォトに対応している悪魔は、「アシュタロト(粉砕者:4i)・アスモデウス(焼却者:5i)・ベルフェゴール(論争者:6i)」になります。
下位のクリフォトに対応している悪魔は、「バアル(離散の大カラス:7i)・アドラメレク(欺く者:8i)・リリス(淫靡:9i)」になります。
最下位のクリフォトに位置づけられた悪魔は、「ナマヘー(邪悪な女:10i)」です。
虚数単位が1から10に近づくにつれて、より人間界・生命の樹の世界に近い悪魔となり、人間が誘惑されたり襲われたりして堕落しやすい悪徳・悪魔として解釈されることになるのです。
5-2. 邪悪の樹の細部を構成するとされる22のセトのトンネル
22の「セトのトンネル」というのは、「生命の樹」の22の小径(パス)に対応するクリフォトの「闇のネットワーク」のことですが、イギリスのオカルティストのケネス・グラントは、クリフォトを必ずしも「悪の象徴」とは定義していませんでした。
ケネス・グラントは、「セトのトンネル」を悪魔や悪霊の王国としては考えず、集合無意識領域において人類が先祖返りする「精神の古層・共通観念」として再解釈しました。
グラントの仮説では、クリフォトはセフィロトの鏡像に過ぎず、一般的な世界・社会における「正のリアリティーの世界」の背後にある「虚のリアリティーの世界(必ずしも邪悪・有害ではない次元の異なる虚の現実性)」として理解されていることになります。
まとめ
クリフォトは、ユダヤ教のカバラ(神秘主義思想)で「悪の勢力・正しい均衡を乱す諸力」を意味する概念ですが、その具体的な構造のイメージやモデルは「邪悪の樹(Tree of Evil)」によって示されています。
クリフォトは弱く貧しき人間が落ち込みやすい「悪徳・悪事・悪しき思想」を象徴しているものであり、人はできるだけ「邪悪の樹の世界」から離れて「生命の樹の世界」を目指さなければならないのです。
不完全な人間は、悪徳、悪しき心、悪の行いをゼロにすることは不可能ですが、人は常に「善と悪のバランス」を取らなければいけないことをクリフォト・邪悪の樹が教えてくれているのです。
クリフォトの全体的な概略・構造・意味は、「邪悪の樹のモデル」を参考にすることで理解することができます。
邪悪の樹の典型的なモデル図式は、ウイリアム・G・グレイ(William G. Gray)の「The Tree of Evil」や魔術学院の主任とされる秋端勉の「実践魔術講座」などで知ることができます。
クリフォトと邪悪の樹について知りたい時には、ぜひこの記事を参考にしてみて下さい。
4. 邪悪の樹の世界とはどんな世界か?
10個の虚無のクリファーから構成されている「邪悪の樹の世界」とはどのような世界であり、その「悪・虚無の世界」に入り込んでしまうと私たち人間はどうなってしまうのでしょうか。
4-1. 「邪悪の樹の世界」は人間の生命力・判断力をどんどん奪い取る
「虚無・悪」に満ちた邪悪の樹の世界は、「光・善」に満ちた生命の樹の世界よりも人間が生きている世界に近い場所にあるので、常に私たちは「悪徳・悪事・虚無」に落ち込まないように気をつけていなければなりません。
人間が邪悪の樹のクリファーが象徴する「虚無・悪の世界」に入り込んでしまうと、「健全な生命エネルギー」がどんどん吸い取られて流出していくことになってしまいます。
邪悪の樹の世界に入ると、人間はどんどん心身の健康状態が悪くなり、他者を傷つけたり騙したり殺したりしたいという「邪悪な欲望」や「虚無主義・無気力」に侵されていく危険性があります。
10個のクリファーが意味している、「貪欲・色欲・残酷・無感動・愚鈍」などの好ましくない精神状態や特徴をいつの間にか身につけていき、最終的には生命エネルギーと正常な判断力をすべて吸い取られて死ぬことにもなるのです。
4-2. クリフォトは「サイコパス・エナジーパンパイア」とも関係している
邪悪の樹の世界に長く滞在していると、人はクリフォトの悪徳や悪しき精神状態と一体化していくことになります。
生命エネルギーと正常な判断力をどんどん失っていくと、人は「心身の病気・無気力・衰弱や自殺」に至りやすくなるのですが、人によっては「物質主義+残酷性の悪徳」を身につけてしまい、「人の痛み・恐怖・心の状態」にまったく共感することのできないサイコパス(精神病質者)になってしまうのです。
ユダヤ教のバカラの解釈では、良心の痛みを感じずに快楽殺人(猟奇殺人)や連続殺人を繰り返すサイコパス(ソシオパス)は、生来的にクリフォトや邪悪の樹の世界と深くつながってしまっているのです。
クリフォトの「拒絶+無神論の悪徳」と過剰に同一化すると、一緒にいるだけで他人のポジティブなエネルギーやモチベーションを吸い取ってしまう「エナジーバンパイア」という恐ろしい存在になってしまうこともあります。
エナジーバンパイアは相手の生命エネルギーを吸血鬼のように吸い取って、その人の「やる気・喜び・楽しみ・明るさ」をすべて奪い取ってしまう虚無的でネガティブなモンスターなのです。
5. 邪悪の樹のクリファーに対応する悪魔たちとセトのトンネル
邪悪の樹のモデル図式では、10個のクリファーの悪徳にそれぞれ、10体の悪魔が配置されています。
この項目では、イギリスの神秘主義的なオカルティストであるケネス・グラントが著作「Nightside of Eden(1977年)」で記した「セトのトンネル」の概略についても紹介していきます。
5-1. 邪悪の樹のクリファーに配置された10体の悪魔たち
邪悪の樹の10個のクリファーにそれぞれ配置された悪魔は、上位のクリフォトでは「サタン(二つの争う勢力:1i)・ベルゼブブ(妨害者:2i)・ルキフグス(隠匿者:3i)」になります。
中位のクリフォトに対応している悪魔は、「アシュタロト(粉砕者:4i)・アスモデウス(焼却者:5i)・ベルフェゴール(論争者:6i)」になります。
下位のクリフォトに対応している悪魔は、「バアル(離散の大カラス:7i)・アドラメレク(欺く者:8i)・リリス(淫靡:9i)」になります。
最下位のクリフォトに位置づけられた悪魔は、「ナマヘー(邪悪な女:10i)」です。
虚数単位が1から10に近づくにつれて、より人間界・生命の樹の世界に近い悪魔となり、人間が誘惑されたり襲われたりして堕落しやすい悪徳・悪魔として解釈されることになるのです。
5-2. 邪悪の樹の細部を構成するとされる22のセトのトンネル
22の「セトのトンネル」というのは、「生命の樹」の22の小径(パス)に対応するクリフォトの「闇のネットワーク」のことですが、イギリスのオカルティストのケネス・グラントは、クリフォトを必ずしも「悪の象徴」とは定義していませんでした。
ケネス・グラントは、「セトのトンネル」を悪魔や悪霊の王国としては考えず、集合無意識領域において人類が先祖返りする「精神の古層・共通観念」として再解釈しました。
グラントの仮説では、クリフォトはセフィロトの鏡像に過ぎず、一般的な世界・社会における「正のリアリティーの世界」の背後にある「虚のリアリティーの世界(必ずしも邪悪・有害ではない次元の異なる虚の現実性)」として理解されていることになります。
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