近年「リスクを取ることを怖れてはいけない」といった言葉を、よく耳にするようになりました。
以前はリスクというと、「リスクマネジメント」や「リスクヘッジ」「原子力発電のリスク」などというように「危険」の意味で使われていましたが、「リスクを取る」という場合は少し意味がちがいます。
ここでは「リスクを取る」という言葉の意味、リスクが取れる人とはどんな人か、「リスクを取る」と「無謀」の違い、またリスクを取れる人が成功する理由を見ていきます。
- リスクとは?
- リスクが取れる人の特徴
- リスクが取れない人の特徴
- リスクが取れる人と無謀な人の違い
- リスクを取れる人が成功する理由
- まとめ
1. リスクとは?
リスクは「risk」という英単語をそのままカタカナで表記したものです。
「risk」とは「危険」や「危険なもの」という意味ですが、「danger」や「hazard」が「降りかかってくる危険・危機」といった意味合いが強いのに対し、「risk」は「自分から引き受けていく危険(賭けの要素を含む)」というニュアンスがあります。
そこから「risk take」(リスクを負う・危険を冒す)という表現が生まれ、「リスクを取る」というのはその日本語訳に相当します。
つまり「リスクを取る」とは「あえて危険を引き受ける」という意味なのです。
私たちはたいていのとき「コンフォートゾーン」に身を置いています。
コンフォートゾーンとは、肉体的にも心理的にも「安全」でくつろぎ、素の自分でいられる領域のことです。
新しいことをしようと思うとき、人はそのコンフォートゾーンから外に出て、失敗する危険を引き受けながら、挑戦しなければなりません。
それがまさに「リスクを取る」ことにほかなりません。
2. リスクが取れる人の特徴
2-1. 向上したい、飛躍したいという意識が強い
あなたは今の自分や自分が置かれた環境に満足していますか?
この問いに「満足している」と胸を張って答えられる人は、それほど多くはないと思います。
しかし、何か物足りないという気持ち、自分がふさわしい評価を受けていないという不満感、このままではいけないという焦り、別の自分になりたい、何か新しいことを始めたいという願望などを抱きつつも、実際に行動に移せる人がどれだけいるでしょうか。
お金がない、時間がない、仕事に差し支える、家族に反対される…など、やりたいことを考えるたびに、そうすべきではない理由がたちまち頭の中に浮かんできます。
すなわち、あなたの希望通りに行動することは「リスク要因」、それによって収入減や失職、負担増加という「リスク」を引き起こす可能性のある行動だからです。
「リスクを取る」とは、そうした危険を引き受けてでも、自分のやりたいことを実行に移すことです。
つまり、今のままでいたくない、もっと向上したい、飛躍したい、という気持ちが、リスクに対する恐怖感を上回るほど強い人だと言えます。
2-2. はっきりした目標がある
会社を大きくしたい、利益をもっと上げたい、収入を増やしたい、この職業に就きたい、プロになりたい、あの大学に入りたい…など、具体的な目標を持ち、持つだけでなくそれに向けて計画を立て、努力する人は、リスクを取ろうとする人です。
何かをしようと思えば、遊んだり、のんびりしたり、楽しんだりすることを諦めなければなりません。
そのためにお金がかかったり、別のスクールに通ったりしなければならない場合もあります。
その上、そんなに努力をしたからといって、うまくいくという保証はどこにもないのです。
そうした労力、金銭、成功の保証もない、というリスクを取って挑戦しようとする人は、かならずはっきりした目標を持っています。
2-3. 失敗に耐えられる強さを持つ
リスクを取って何かに挑戦しようとしても、うまくいくより失敗する確率の方が高いのです。
逆に言うと、うまくいくことがわかっていることは「挑戦」ではないし、単にノルマのひとつを果たすだけでしかありません。
成功する確率を少しでも上げるために、私たちは努力したり、工夫したり、戦略を練ったりしますが、どれほど頑張ったとしても、失敗の可能性をゼロにすることはできません。
一度の失敗を諦めず、失敗を受け止め、それをばねにもう一度挑戦する。
リスクを取れる人は、それだけの強さとレジリエンス(折れない心)を持っている人です。
2-4. 周囲の批判やあざけりを無視できる強さを持つ
「覚えておいてください。
本当の自分になって勇気をもとうとすれば、批判され、傷つきます。
世の中の流れに逆らい、自分の意見を主張すると、相手は脅威を感じ、最大の弱点を攻撃してくるのです――それは外見、愛される価値から、子供の育て方にまで及びます」(ブレネー・ブラウン『「ネガティブな感情(こころ)」の魔法』)
挑戦する人が引き受けなければならないリスクの中には、周囲の人からの批判やあざけりも含まれます。
「そら見たことか」「思い上がりもほどほどにしろよ」など、リスクを取ろうとしない人は、自分がリスクを取らないことを肯定するために、言いたい放題のことを言ってきます。
それを正面切って受け止めず、無視し、軽やかにかわせる心の強さを持っている人だけが、リスクを取り続けることができます。
3. リスクが取れない人の特徴
3-1. 失敗したくないという気持ちが強い(損失回避バイアス)
人間の心理は独特なゆがみを持っており、合理的な選択をする代わりに非合理な選択をすることがあります。
それを社会心理学では「認知のゆがみ」と呼びます。
そんな認知のゆがみのひとつに「損失回避バイアス」というものがあります。
コイントスをして、表が出たら1万円もらえる。
でも裏が出ると5,000円払わなければならない。
こんな賭けがあるとしたら、あなたはそれに乗りますか?
統計では人間は得をする喜びよりも、損を怖れる気持ちの方が2倍から4倍も強いことがわかっています。
多くの人は、確率が50%であれば、1万円得をするよりも、5,000円損をすることの方を避けるのです。
うまくいくかどうかわからないとき、人はうまくいった成果よりも、失敗したときの損失の方を大きく考えます。
リスクを取ることを避けるのは、人間の普通の感覚なのです。
3-2. 同調圧力に負けてしまう
同調圧力とは、少数意見に対して、多数意見に従うように暗黙のうちに強制していく圧力のことです。
リスクを取ろうとする行動は、新しいことや誰もやったことのない方法です。
そんな行動をしようとすると、多くの場合、周囲は「そんなことをするものではない」という圧力をかけてきます。
「会社に迷惑をかけるものではない」「子供(親)のことを考えろ」「失敗したらどうするんだ」「空気の読めないヤツ」などという言葉や態度によって、多くの人は断念することを余儀なくされてしまうのです。
3-3. 規則や伝統、決まった手順を絶対的なものだと思う
何かを改革したり、新しいことを始めようと思えば、従来のやり方を否定して、新しいやり方をしなければなりません。
たとえば男の仕事だ、女の仕事だ、という伝統をひっくり返したり、決まりや規則を破ったりしなければならないこともあります。
リスクを取ることの中には、そうしたことも含まれているのですが、規則や伝統、決まった手順を絶対視する人は、そもそもリスクを取ることさえ思いつきません。
3-4. 過去の成功体験を否定されたように感じるから
人は良い結果を出したやり方があると、次も同じやり方でやろうとします。
「過去に優等生だった人は、仕事では意外と伸びない」ということを聞いたことはないでしょうか。
ここで言われる「元優等生」とは、過去に学校という組織でうまくいったやり方を、そのまま仕事でも適用しようとして、うまくいかなくてもやり方を改めようとしない人のことです。
「仕事ではそんなやり方は通用しない」と言われても、「自分はこれでうまくやってきた」という意識が邪魔をして、新しいやり方を取り入れることができないのです。
新しいカテゴリーに入ったら、いったん自分をリセットして、ゼロからまた組み立てなおす、というリスクを取らなければならないことがあります。
ところが成功体験が大きければ大きいほど、そのリスクを怖れて、過去のやり方に固執するという傾向があります。
4. リスクが取れる人と無謀な人の違い
4-1. 小さく始めるか、大きく始めるか
イノベーションを起こしたいからといって、何もないところからいきなり起業する人は「無謀な人」です。
まずは企業に所属し、仕事のやり方を覚え、ネットワークを作り、資金面での基盤を確保する、というように、1歩ずつ、小さなリスクを取っていく、そしてそれを積み重ねていくのが「リスクが取れる人」です。
4-2. やり続けるか、瞬間最大風速か
たいていのことは成果が出るまで時間がかかります。
確かに大きく飛躍を遂げる「ブレイクスルー」はありますが、そこへ至るまで、また至ったあとも、地道な積み重ねが必要です。
「リスクが取れる人」は、時間をかけて小さなリスクを取りながら、少しずつ進んで行きますが、「無謀な人」はいきなりブレイクスルーを狙って、とんでもなく大きな企画を立て巨額の融資を募ろうとしたり、有名人とコンタクトを取ろうとしたりします。
4-3. 失敗から学ぶか、無視するか
リスクを取ろうとすれば、失敗は避けて通れません。
「リスクが取れる人」は何が悪かったか、その失敗を分析し、今度はどうすれば良いか、と計画を練り直します。
「無謀な人」は「失敗の1つや2つ、気にするな」と無視し、次のチャレンジに夢中になります。
5. リスクを取れる人が成功する理由
5-1. 変化に合わせて成長できるから
「むしろいまの時代は、黙っていること、つまり、リスクを恐れて動かないことのほうがよほどリスクです。
自分の仕事のやり方がいつまで通用するかわかりません。
それどころか部署や会社、仕事自体が丸ごとなくなってしまう可能性もあるのです。
自分から手を挙げて、どんどん動く働き方をしていないと、成長の機会が失われ、働く場所さえなくなってしまいます」(ピョートル・フェリークス・グジバチ『0秒リーダーシップ』)
「変化」というリスクを取ることで、自分自身が成長していくことが促されるのです。
5-2. リスクを取ることによって、今の自分にできること・できないことがわかるから
リスクを引き受け、実際にやってみるまで、自分に何ができるか、何ができないかはわかりません。
ぼんやりと夢見ているだけでは、自分の力を正しく評価することもできないのです。
正しく評価することによって、次の一歩が見えてきます。
それを重ねることで、成功に手が届くのです。
反面、リスクを取ろうとしない人は、人の失敗を見て、批判したり笑ったりするだけで終わってしまいます。
5-3. 周囲からの信用・信頼を得ることができるから
リスクを取ることは、たとえそれが小さなことであっても、最初は周囲の反発を招くかもしれません。
でも、その行為を重ねることによって、周囲からの信用を得ることができます。
たとえばYouTubeで動画の投稿を定期的に続けるとします。
最初は「何をやってるんだ」「暇だな」「今さらYouTubeなんて…」などという反発をもたらすだけかもしれません。
しかし、視聴者に何らかの付加価値(楽しめる、役に立つなど)を提供できるものを粘り強く続けていけば、徐々に信用を得ることができるでしょう。
それがやがて、この人のコンテンツなら見てみたい、という視聴者の信頼に変わっていきます。
5-4. さまざまな人と、深く交流することができるから
自分一人の力で成功できる人はいません。
成功するためには、多くの人の力が必要です。
人と出会い、協力者を得るためには、「人と出会う」「その人のために何かをしてあげる」というリスクを取りながら、自分の周りにネットワークを張り巡らしていくしかありません。
まとめ
ここでは「リスクを取る」という言葉の意味、リスクが取れる人とはどんな人か、「リスクを取る」と「無謀」の違い、またリスクを取れる人が成功する理由を見てきました。
「リスク」という言葉は「危険」を意味なのですが、「リスクを取る」とはその危険をあえて引き受けることによって、自分を成長させ、成功をつかむということなのですね。
無謀なことではなく、小さなリスクを毎日積み重ねることが大切。
まずは自分が取れる簡単なリスクを考えてみることから始めてみましょう!
3. リスクが取れない人の特徴
3-1. 失敗したくないという気持ちが強い(損失回避バイアス)
人間の心理は独特なゆがみを持っており、合理的な選択をする代わりに非合理な選択をすることがあります。
それを社会心理学では「認知のゆがみ」と呼びます。
そんな認知のゆがみのひとつに「損失回避バイアス」というものがあります。
コイントスをして、表が出たら1万円もらえる。
でも裏が出ると5,000円払わなければならない。
こんな賭けがあるとしたら、あなたはそれに乗りますか?
統計では人間は得をする喜びよりも、損を怖れる気持ちの方が2倍から4倍も強いことがわかっています。
多くの人は、確率が50%であれば、1万円得をするよりも、5,000円損をすることの方を避けるのです。
うまくいくかどうかわからないとき、人はうまくいった成果よりも、失敗したときの損失の方を大きく考えます。
リスクを取ることを避けるのは、人間の普通の感覚なのです。
3-2. 同調圧力に負けてしまう
同調圧力とは、少数意見に対して、多数意見に従うように暗黙のうちに強制していく圧力のことです。
リスクを取ろうとする行動は、新しいことや誰もやったことのない方法です。
そんな行動をしようとすると、多くの場合、周囲は「そんなことをするものではない」という圧力をかけてきます。
「会社に迷惑をかけるものではない」「子供(親)のことを考えろ」「失敗したらどうするんだ」「空気の読めないヤツ」などという言葉や態度によって、多くの人は断念することを余儀なくされてしまうのです。
3-3. 規則や伝統、決まった手順を絶対的なものだと思う
何かを改革したり、新しいことを始めようと思えば、従来のやり方を否定して、新しいやり方をしなければなりません。
たとえば男の仕事だ、女の仕事だ、という伝統をひっくり返したり、決まりや規則を破ったりしなければならないこともあります。
リスクを取ることの中には、そうしたことも含まれているのですが、規則や伝統、決まった手順を絶対視する人は、そもそもリスクを取ることさえ思いつきません。
3-4. 過去の成功体験を否定されたように感じるから
人は良い結果を出したやり方があると、次も同じやり方でやろうとします。
「過去に優等生だった人は、仕事では意外と伸びない」ということを聞いたことはないでしょうか。
ここで言われる「元優等生」とは、過去に学校という組織でうまくいったやり方を、そのまま仕事でも適用しようとして、うまくいかなくてもやり方を改めようとしない人のことです。
「仕事ではそんなやり方は通用しない」と言われても、「自分はこれでうまくやってきた」という意識が邪魔をして、新しいやり方を取り入れることができないのです。
新しいカテゴリーに入ったら、いったん自分をリセットして、ゼロからまた組み立てなおす、というリスクを取らなければならないことがあります。
ところが成功体験が大きければ大きいほど、そのリスクを怖れて、過去のやり方に固執するという傾向があります。
4. リスクが取れる人と無謀な人の違い
4-1. 小さく始めるか、大きく始めるか
イノベーションを起こしたいからといって、何もないところからいきなり起業する人は「無謀な人」です。
まずは企業に所属し、仕事のやり方を覚え、ネットワークを作り、資金面での基盤を確保する、というように、1歩ずつ、小さなリスクを取っていく、そしてそれを積み重ねていくのが「リスクが取れる人」です。
4-2. やり続けるか、瞬間最大風速か
たいていのことは成果が出るまで時間がかかります。
確かに大きく飛躍を遂げる「ブレイクスルー」はありますが、そこへ至るまで、また至ったあとも、地道な積み重ねが必要です。
「リスクが取れる人」は、時間をかけて小さなリスクを取りながら、少しずつ進んで行きますが、「無謀な人」はいきなりブレイクスルーを狙って、とんでもなく大きな企画を立て巨額の融資を募ろうとしたり、有名人とコンタクトを取ろうとしたりします。
4-3. 失敗から学ぶか、無視するか
リスクを取ろうとすれば、失敗は避けて通れません。
「リスクが取れる人」は何が悪かったか、その失敗を分析し、今度はどうすれば良いか、と計画を練り直します。
「無謀な人」は「失敗の1つや2つ、気にするな」と無視し、次のチャレンジに夢中になります。
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