カキツバタという花をご存知でしょうか。
アヤメかカキツバタ、という言葉は、なんとなくではありますが誰しも耳にしたことがあるはず。
日本では7世紀ころから観葉植物として愛され、日本の古典文学でもたくさんの歌人たちが題材にしている花になります。
その花の姿はぱっと見、アヤメに大変似ています。
また、都内などでも見ることのできるショウブという花にも似ており、その植生を知らないと混同してしまいがちです。
花言葉はその花の形から、大変縁起の良い花言葉を持っているため、育てて身近に置いておくのにもいい花と言えますね。
今回は、耳にしたことはあっても実は素通りしている、美しい花カキツバタをご紹介します。
- カキツバタとはどんな花?
- カキツバタの花言葉
- カキツバタについて解説
- カキツバタの名前の由来
- カキツバタが誕生日花の日
- カキツバタの種類
- カキツバタに似た花
- まとめ
1. カキツバタとはどんな花?
カキツバタは、アヤメ科アヤメ属の多年草の植物です。
花の色は青や白、紫などの清廉でクールな色あいが多くみられます。
また、観葉植物として改良され、多数の品種が存在します。
湿地、あるいは池の浅瀬に群生する植生を持ち、初夏の5月~6月ごろその花を咲かせます。
独特な花の形をしており、外側に大きな花弁が垂れており、内側に立ち上がった小さめの花弁を持っています。
外側の花弁には白、あるいは薄めの黄色の線が入っています。
草丈は50センチから80センチほど、寒さ、暑さ共に強く、育てる場合の難易度は低めです。
しかし、通常の庭上ではなく水生植物用の環境を用意する必要はありますので、準備は少々手間がかかるかもしれません。
なお、最近では秋咲きのカキツバタも販売されるようになりました。
その歴史は古く、平安時代の歌人在原業平が歌の題材にしているほどです。
園芸植物としては7世紀ごろからすでに栽培されていたとされ、日本人の心に根付いた花です。
2. カキツバタの花言葉
カキツバタは日本の古典文学に良く取り上げられる植物です。
そのため、花言葉についても万葉集の一文からつけられたものなどがあります。
2-1. 「幸福が来る」
万葉集に掲載されている歌のひとつに、「住吉の 浅沢小野の かきつはた 衣に摺りつけ 着む日知らずも」という和歌があります。
意味としては、「住吉(現在の大阪市住吉区周辺)に咲いたカキツバタが、その色香で私の衣を染めて着る日はいつ来るのだろう」という歌です。
カキツバタは美しい恋人を指し、私の衣を着るということは一夜を共にして男性の衣服を肌掛けにするという意味を持ちます。
衣を染めるというのは、カキツバタの名前の由来に準じる掛詞です。
謳い人がカキツバタのように美しい恋人が来ることを心待ちにしている歌なのです。
2-2. 「幸せはあなたのもの」「贈り物」
こちらは、カキツバタの花の形からイメージされた花言葉です。
ブルーやパープルなどの涼やかな色と、その羽のように垂れた花弁はツバメを連想させます。
ツバメの幸福を運んでくる鳥という印象から、「幸せを届けてくれる」という意味の花言葉が付けられました。
水生のため、あまり贈り物にする花ではないカキツバタですが、実はその美しい花言葉はギフトにぴったりです。
3. カキツバタについて解説
カキツバタは日本で広く愛されている花で、その歴史は大変古いものがあります。
その割りに英語圏ではあまり知られていないなど、少し意外な面もあります。
3-1. 英語での呼び名
カキツバタは英語では「Rabbitear Iris」、ウサギ耳のアイリスであったり、「Shallow-flowered Iris」平たく咲くアイリスなどといったアイリスの言葉を関していることがほとんどです。
ただ、一般的に英語圏でカキツバタを栽培していることは少なく、認知度自体が低いため、訳語もあまり知られているとは言えません。
もし園芸関係者などが共通の認識上でカキツバタの話をする場合、和名そのまま「kakitsubata」と呼ぶか、学術名で呼ぶことになります。
そのため、英語圏の方にカキツバタを説明するときは、ジャパニーズアイリスとして紹介するのが無難であり、花について詳しく知りたい人へは学術名などで話をするのが正しいと言えます。
3-2. カキツバタの原産地
カキツバタは原産国を日本、朝鮮半島、中国、シベリアなどの北東アジアとしています。
3-3. カキツバタのマメ知識
カキツバタと言えば、「いずれアヤメかカキツバタ」という口上を聞いたことも多いのではないでしょうか。
これは、カキツバタがアヤメに非常に似ており、選ぶのに困ることからできたことわざです。
どちらも優れており、選択に迷うときに使う言葉として有名ですが、その出典は南北朝時代を描いた古典文学「太平記」に見ることができます。
曰く、「五月雨が降り続き、沢辺の水かさが増したため、アヤメもカキツバタも水中に隠れてしまい引き抜くのをためらっている」という歌です。
もちろん、本当に長雨のせいで困っているのではなく、源頼朝が怪鳥を退治した際の褒美として、十二人の美女から一人を選ぶように言われたときに歌った歌のことです。
アヤメのような美女、カキツバタのような美女を目の前にして、選べなくて困ってしまう…という歌なのです。
具体的に見分けようとする場合、カキツバタとアヤメは大変似た見た目をしていますが、アヤメが陸上の花であるのに対してカキツバタは湿地に育つ植物。
花だけではわかりづらいですが、その生えている場所を見れば一目瞭然です。
また少々の差ではありますが、カキツバタの方がやや葉が太く、幅広い見た目をしています。
4. カキツバタの名前の由来
カキツバタは、書き付け花という言葉をその由来としています。
書き付け花とは花の色を抽出し、布に書き付ける、つまり布を染めるということです。
ここから古来衣服を染めるためにカキツバタの花の汁が利用されたことを意味し、書き付け花が転じてカキツバタになったと言われています。
漢字では、そのツバメが飛ぶような姿から燕子花とも、杜若とも書きます。
なお、日本の古典文学伊勢物語では有平業平が下記のように歌っています。
から衣
きつつなれにし
つましあれば
はるばる来ぬる
たびをしぞ思ふ
この歌の小節の頭をとるとカキツバタになり、すでにこの時代からカキツバタが遊び言葉に利用されるまでに浸透していたことが見て取れます。
5. カキツバタが誕生日花の日
カキツバタが誕生花となっているのは4月29日。
おりしも、カキツバタの花がほころび始めたころ合いです。
日本の暦で言えば緑の日として、ゴールデンウィークが始まる日付。
青々とした緑ときらめく初夏の日差しに祝福された爽やかな日です。
6. カキツバタの種類
カキツバタは古来より日本で観賞用として発達した花のため、様々な園芸品種が存在します。
北東アジア原産ということで育成がしやすいこと、またその美しさから様々な歌に詠まれていたなじみの深さから、古くから親しまれていたことがうかがえます。
なお、やはり日本で育まれた花だけに、品種名にも和のイメージが漂っています。
多数にわたるため、そのほんの一部をご紹介します。
6-1. 裕美
花ではなく葉に特徴のあるカキツバタです。
緑の葉に白い斑の入ったカキツバタで、大きな青紫色の花と相まってコントラストも美しい品種です。
開花時期が長めで、春から秋まで楽しむことができます。
6-2. 舞孔雀
濃い上品な紫色が特徴で、真ん中の短い花弁が白っぽく、外側の花弁も大きく白い縞が入り、またふちにも白が表出します。
高貴で美しい人気のある品種です。
6-3. 朝の袖
花弁が分厚く、大輪の花を咲かせます。
葉や茎も太く立派で、見ごたえのある品種です。
6-4. 羅生門
大変大きな花を咲かせる「巨大輪」としてカテゴライズされているのが羅生門という品種です。
全体的に大型で、花弁も大きいためしっかりと垂れた花が美しい品種です。
6-5. 折り鶴
まるで折り紙で折った鶴のように見事に重なりあう花弁を持った品種です。
しかし、ぽってりとした重量感も兼ね備えています。
色は白字に紫のぼかしのはいった、舞孔雀に近い色味をしています。
6-6. 四季咲きカキツバタ
晩生種で、秋ごろまで咲くカキツバタ。
霜が降りるくらいまで花をつけることもあり、大変長く鑑賞できる花です。
色は薄青に、花弁中央に黄色い縞が入ります。
6-7. ドクトル大森
白地に薄青が浮いている、白ベースのカキツバタです。
花弁に厚みがあり、大変大きな巨大輪咲きをします。
花の茎も太く大きく、がっしりした印象のカキツバタです。
6-8. 原種カキツバタ
濃い青紫色の原種。
品種改良された品種に比べ、花は中輪サイズで少々硬いイメージになります。
また、葉は直立せずに垂れていることも特徴です。
6-9. 紅丸
はっきりとした紅紫色をしており、緑の葉の中でくっきりと浮き立つような鮮明さを持つ花を咲かせます。
花が起毛したようにビロード状になっています。
6-10. もろこし舟
大輪咲きのカキツバタです。
花弁の外側が大きく、しっかりと垂れた見ごたえのある花を咲かせます。
葉が幅広で垂れている品種で、花の茎はしっかりと直立しています。
7. カキツバタに似た花
カキツバタはアヤメに大変似た花ですが、実はショウブというもっと似た花もあります。
ショウブは植生が湿地とカキツバタと同じなため、余計にわかりづらいですね。
また、上記三種はすべてアヤメ科アヤメ属の植物で、学術上も大変近い仲間です。
咲く時期も同じくらいのため、間違いやすい種類です。
7-1. アヤメ
アヤメは湿地ではなく、山野の草地に自生する乾燥地で育つ花です。
また、草丈は30センチから60センチとカキツバタより低めです。
花のサイズも少々小さめです。
そもそもはアヤメという言葉は、サトイモ科のショウブを指しています。
過去には、現在のアヤメを指して「ハナアヤメ」と呼ばれていた時代もありました。
なお、アヤメという言葉でカキツバタや、後述するハナショウブを総括して呼ぶ場合もあります。
花言葉は「燃える思い」「情熱」です。
また、欧米での花言葉は「よい便り」「メッセージ」となります。
アヤメはカキツバタと違い、欧米でも知名度のある花です。
ジャーマンアイリスとも呼ばれ、日本に植生するアイリス属の象徴ともなっている花です。
アイリスにはギリシア神話でのエピソードがあり、神々の王ゼウスに求愛され断れなかったイリスという侍女が、ゼウスの妻ヘラに頼み虹を渡る女神に姿を変えてもらうというのがその逸話です。
虹は神々の使者とされており、メッセンジャーとしての役割があるとされていました。
そのため、アヤメにはこんな花言葉が付けられたとされています。
7-2. ショウブ
アヤメと同じくカキツバタと似た花を咲かせるショウブ。
しかし、気を付けなければいけないのはここでいうショウブとはハナショウブという植物のことを指すということです。
実は、ショウブという植物はほかにあり、それはサトイモ科の植物のため全く違う花を咲かせます。
ハナショウブは、サトイモ科のショウブと似た葉を持っています。
ショウブに似ているのに花を咲かせる、というのが名前の由来です。
カキツバタと見た目で違うのは草丈と花の大きさです。
草丈は80センチから100センチと大きく、また花も大輪に咲きます。
また、花の咲く時期も7月までと長めに咲いています。
もともとカキツバタは観賞用植物として歴史が古いですが、江戸時代後期にはハナショウブの方が盛んに栽培されていたとのこと。
そのため品種改良などで品種が多いのはハナショウブの方で、開花時期が長くなるのもその品種の多さゆえです。
また、花の色も黄色やピンクなどの改良品種があります。
カキツバタはアヤメとハナショウブのちょうど中間くらいの大きさの植物ということができますね。
花言葉は「うれしい知らせ」「優しい心」「優雅」です。
まとめ
カキツバタは実は、アヤメほど知名度があるわけでも、ハナショウブほど広く流通しているわけでもありません。
しかし日本の過去を紐解けば、たくさんの歌人から親しまれ愛でられているカキツバタは、そこはかとなく日本人の本能をくすぐるような、慎ましやかな美しさをたたえています。
カキツバタは実は愛知県の花として指定されており、愛知県刈谷市最北部の小堤西池では、2万330平方メートルものカキツバタ自生地があります。
その見事な景観から、昭和13年には国の天然記念物に指定されています。
ほかには京都や鳥取など、日本の古い都がある場所に今も多く咲き誇るカキツバタ。
平安時代からの歴史を誇るわけですから、古都の周辺に分布するのもうなずけますね。
古代日本人が愛してやまなかったカキツバタ。
カキツバタを見て、雅の世界に思いを馳せるのも素敵なことですね。
5. カキツバタが誕生日花の日
カキツバタが誕生花となっているのは4月29日。
おりしも、カキツバタの花がほころび始めたころ合いです。
日本の暦で言えば緑の日として、ゴールデンウィークが始まる日付。
青々とした緑ときらめく初夏の日差しに祝福された爽やかな日です。
6. カキツバタの種類
カキツバタは古来より日本で観賞用として発達した花のため、様々な園芸品種が存在します。
北東アジア原産ということで育成がしやすいこと、またその美しさから様々な歌に詠まれていたなじみの深さから、古くから親しまれていたことがうかがえます。
なお、やはり日本で育まれた花だけに、品種名にも和のイメージが漂っています。
多数にわたるため、そのほんの一部をご紹介します。
6-1. 裕美
花ではなく葉に特徴のあるカキツバタです。
緑の葉に白い斑の入ったカキツバタで、大きな青紫色の花と相まってコントラストも美しい品種です。
開花時期が長めで、春から秋まで楽しむことができます。
6-2. 舞孔雀
濃い上品な紫色が特徴で、真ん中の短い花弁が白っぽく、外側の花弁も大きく白い縞が入り、またふちにも白が表出します。
高貴で美しい人気のある品種です。
6-3. 朝の袖
花弁が分厚く、大輪の花を咲かせます。
葉や茎も太く立派で、見ごたえのある品種です。
6-4. 羅生門
大変大きな花を咲かせる「巨大輪」としてカテゴライズされているのが羅生門という品種です。
全体的に大型で、花弁も大きいためしっかりと垂れた花が美しい品種です。
6-5. 折り鶴
まるで折り紙で折った鶴のように見事に重なりあう花弁を持った品種です。
しかし、ぽってりとした重量感も兼ね備えています。
色は白字に紫のぼかしのはいった、舞孔雀に近い色味をしています。
6-6. 四季咲きカキツバタ
晩生種で、秋ごろまで咲くカキツバタ。
霜が降りるくらいまで花をつけることもあり、大変長く鑑賞できる花です。
色は薄青に、花弁中央に黄色い縞が入ります。
6-7. ドクトル大森
白地に薄青が浮いている、白ベースのカキツバタです。
花弁に厚みがあり、大変大きな巨大輪咲きをします。
花の茎も太く大きく、がっしりした印象のカキツバタです。
6-8. 原種カキツバタ
濃い青紫色の原種。
品種改良された品種に比べ、花は中輪サイズで少々硬いイメージになります。
また、葉は直立せずに垂れていることも特徴です。
6-9. 紅丸
はっきりとした紅紫色をしており、緑の葉の中でくっきりと浮き立つような鮮明さを持つ花を咲かせます。
花が起毛したようにビロード状になっています。
6-10. もろこし舟
大輪咲きのカキツバタです。
花弁の外側が大きく、しっかりと垂れた見ごたえのある花を咲かせます。
葉が幅広で垂れている品種で、花の茎はしっかりと直立しています。
7. カキツバタに似た花
カキツバタはアヤメに大変似た花ですが、実はショウブというもっと似た花もあります。
ショウブは植生が湿地とカキツバタと同じなため、余計にわかりづらいですね。
また、上記三種はすべてアヤメ科アヤメ属の植物で、学術上も大変近い仲間です。
咲く時期も同じくらいのため、間違いやすい種類です。
7-1. アヤメ
アヤメは湿地ではなく、山野の草地に自生する乾燥地で育つ花です。
また、草丈は30センチから60センチとカキツバタより低めです。
花のサイズも少々小さめです。
そもそもはアヤメという言葉は、サトイモ科のショウブを指しています。
過去には、現在のアヤメを指して「ハナアヤメ」と呼ばれていた時代もありました。
なお、アヤメという言葉でカキツバタや、後述するハナショウブを総括して呼ぶ場合もあります。
花言葉は「燃える思い」「情熱」です。
また、欧米での花言葉は「よい便り」「メッセージ」となります。
アヤメはカキツバタと違い、欧米でも知名度のある花です。
ジャーマンアイリスとも呼ばれ、日本に植生するアイリス属の象徴ともなっている花です。
アイリスにはギリシア神話でのエピソードがあり、神々の王ゼウスに求愛され断れなかったイリスという侍女が、ゼウスの妻ヘラに頼み虹を渡る女神に姿を変えてもらうというのがその逸話です。
虹は神々の使者とされており、メッセンジャーとしての役割があるとされていました。
そのため、アヤメにはこんな花言葉が付けられたとされています。
7-2. ショウブ
アヤメと同じくカキツバタと似た花を咲かせるショウブ。
しかし、気を付けなければいけないのはここでいうショウブとはハナショウブという植物のことを指すということです。
実は、ショウブという植物はほかにあり、それはサトイモ科の植物のため全く違う花を咲かせます。
ハナショウブは、サトイモ科のショウブと似た葉を持っています。
ショウブに似ているのに花を咲かせる、というのが名前の由来です。
カキツバタと見た目で違うのは草丈と花の大きさです。
草丈は80センチから100センチと大きく、また花も大輪に咲きます。
また、花の咲く時期も7月までと長めに咲いています。
もともとカキツバタは観賞用植物として歴史が古いですが、江戸時代後期にはハナショウブの方が盛んに栽培されていたとのこと。
そのため品種改良などで品種が多いのはハナショウブの方で、開花時期が長くなるのもその品種の多さゆえです。
また、花の色も黄色やピンクなどの改良品種があります。
カキツバタはアヤメとハナショウブのちょうど中間くらいの大きさの植物ということができますね。
花言葉は「うれしい知らせ」「優しい心」「優雅」です。
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