「弟」を「切」る「草」と書いて弟切草。
おどろおどろしいこの名前は遠い昔に兄が弟を斬り殺したという伝説を持つことからつけられたそうです。
しかし弟切草はその恐ろしい名前とは裏腹に「小連翹(ショウレンギョウ)」として古くから薬草として利用され、人々の傷を癒してきました。
弟切草はしばしばゲームにも登場します。
ホラーゲームのタイトルになり、本や映画にもなりました。
またあるゲームでは体力を回復するアイテムとしても登場します。
古くから「民間の万能薬」として知られている弟切草をご紹介します。
- 弟切草とはどんな花?
- 弟切草の花言葉
- 弟切草の効能
- 弟切草の名前の由来
- 弟切草の開花時期や見頃
- 弟切草を育てるポイント
- 種類(原種、園芸品種)など
- まとめ
1. 弟切草とはどんな花?
弟切草はオトギリソウ科オトギリソウ属の多年性の植物で学名は「Hypericum erectum(ヒペリカム・エレクタム」といいます。
原産地は日本、朝鮮半島、中国です。
古くから日本で利用されているハーブです。
別名を血止め草(チドメグサ)、鷹の傷薬(タカノキズグスリ)、青薬(アオグスリ)といいます。
生薬にしたものは「小連翹(ショウレンギョウ)」といわれ民間療法薬として古くから利用されてきました。
日本に自生している山野草で日当りのよい草地に生じ、夏になると約2cmの黄色い可憐な花を咲かせます。
葉の表面に黒い点(油点)があります。
この黒い点部分は「ヒペリシン」という光作用性物質で、弟切草を薬として傷口に塗ったり口にいれた後に日光に当たると皮膚炎や浮腫をおこすので摂取した後は気をつけたほうがいいそうです。
2. 弟切草の花言葉
弟切草の花言葉は不吉でよい意味の花言葉はありません。
弟切草の薬としての効能と可憐な花にはどれもネガティブなものなかり。
人に贈るときにはそのメッセージは含んでいないと伝えておいた方がよさそうですね。
2-1. 「迷信」
ヨーロッパに自生するオトギリソウの仲間のセイヨウオトギリ(St. John's wortt:セントジョンズワート)が魔よけに使われたことに由来します。
2-2. 「敵意」
ヨーロッパの伝説が元になっています。
サロメがヘロデ王の誕生日に舞を舞い、その褒美にヨハネの首を求めました。
切り落とされたヨハネの首からふりかかった血で、葉に赤い斑点ができました。
サロメがむけるヨハネへの敵意が花言葉になりました。
2-3. 「秘密」
弟が「秘密」を漏らしたために兄が弟を斬り殺したという伝説に由来します。
2-4. 「恨み」
こちらもまた、兄が弟を斬り殺したという伝説に由来します。
「秘密」を漏らした弟への「恨み」からつけられたといわれています。
2-5. 「盲信」
セイヨウオトギリが魔よけとして使われるていることからいわれているようです。
3. 弟切草の効能
弟切草は漢方薬や民間療法の中で古来より利用されてきた日本原産のハーブです。
弟切草にはヒぺリシンという特有の成分が含まれています。
ヒぺリシンには脳内の神経伝達物質であるセロトニンの分解を防ぐという働きがあるので、脳内のセロトニン濃度を高めることがでるそうです。
セロトニンには精神安定という作用があるので、うつ症状や不安症、不眠症、更年期障害、緊張しやすく疲れやすいなどの症状を改善に導きます。
その他、セレンが多く含まれているので、ウイルス性肝炎や肝硬変の予防にも効果があります。
また、抗菌作用や止血作用、収斂作用などがあるので、外傷などに対して外用として用います。
3-1. 外用薬
痛み止め、傷薬・傷口薬として使用する場合
- 茎や葉をすりつぶしてその絞り汁を患部に塗ります。
- 弟切草は根から葉まで草を全部利用します。
採取した弟切草を2週間ほど陰干しします。
乾燥したら焼酎(ホワイトリカーがおすすめです)に3~4ヶ月漬け込みます。
透明だった焼酎が赤褐色の液体に変われば焼酎に効能成分が溶け込んでいます。
出来上がった液を携帯用容器につめれば自作の傷薬の出来上がりです。
日焼けやムシ刺され、あせもなどにも効くそうですよ。
薄めて飲み薬としても使えます。
3-2. 小連翹(ショウレンギョウ)
江戸時代の百科事典「和漢三才図会」にも収載されていた日本で古くから使われている民間薬です。
中国でもおもに民間療法として用いられています。
小連翹は弟切草の別名で、弟切草の全草を乾燥したものです。
生理痛・神経痛
生理痛・神経痛の鎮痛剤として用いる場合には、煎じながら煮詰めたものを服用します。
うがい
扁桃腺炎などの鎮痛薬として、煎じ液でうがいをします。
浴剤
浴剤としてもリューマチ、神経痛、痛風などの鎮痛に効き目があるとされます。
4. 弟切草の名前の由来
「弟切草」という恐ろしい名前は何故つけられたのでしょうか。
次のような凄惨なストーリーが関係しているといわれています。
「時は平安時代、晴頼という名の優れた鷹匠がいました。
晴頼は鷹が傷ついたときの治療薬としてある薬草を使っていました。
その薬草を使うと鷹の傷はみるみるうちに回復していきます。
仲間の鷹匠がその草の名前を尋ねても秘密にして決して口外することはありませんでした。
しかし、ある日人のよい彼の弟がうっかり他の鷹匠に秘密をバラしてしまいます。
これに怒った晴頼は、弟を斬り殺してしまいました」
また、弟切草の葉っぱの黒い点(油点)は、そのときに庭に栽培していた薬草に弟の血潮が飛び散り残ったものといわれています。
葉はみただけでは黒い点ですが、生葉をすりつぶしてみると赤紫~赤褐色の汁が出てきます。
これが血のよう見えたからともいわれています。
また別名の小連翹(しょうれんぎょう)という名前は果実の中の種子が並んでいる様子が翹(ぎょう:女性の髪飾りの一種)に似ている連翹(れんぎょう)という植物があり、それより小さいので小連翹(しょうれんぎょう)と呼ばれているそうです。
属名の Hypericum はギリシャ語の「hypo(下に)+ erice(草むら)」とも「hyper(上に) + eikon(像)」に由来するといわれています。
英語名は「St. John’s wort(聖ヨハネの草)」といいます。
聖ヨハネを祭る日の前日に弟切草をはじめとする様々な薬草を集める風習があり、特に弟切草の黄色い花はその力が強いとされていることから「St. John’s wort(聖ジョンの草)」と呼ばれるようになったそうです。
5. 弟切草の開花時期や見頃
開花時期は7月から8月です。
茎先に最初の花がにつき、その下に次々と側枝を出して花がつく「集散花序(シュウサンカジョ)」と呼ばれる花のつき方をします。
花びらは5つの花弁をつける1日花です。
雄しべはたくさんあり、つけ根のほうでくっついて3つの束になっています。
葉には黒い点(油点)や黒い線があって、花びらや萼(ガク)にもあります。
6. 弟切草を育てるポイント
弟切草は日本に古来から生えている植物なので環境が合えばどんどん繁殖します。
育てるのは比較的容易な植物です。
多年草(宿根草)なので毎年、花が咲いてくれますよ。
6-1. 場所
日当たりがすきなので真夏以外は風通しのよい日当たりで管理します。
日光が不足すると生育不良を起こするので注意します。
乾燥に比較的強いとされていますが、真夏の直射日光に当てると乾燥してしまって葉焼けも起こしてしまいます。
鉢植えの場合、真夏には半日陰になる場所へ移します。
庭植えの場合、大きな植物の陰になるようにするか、すだれなどで陰を作ってあげるとよいでしょう。
冬には地上部が枯れてしまいますが根はまだ生きています。
土が凍ってしまうほど寒いと枯れてしまうので注意します。
冬に気温が-5℃以下になる場合は土の中も凍ってしまう可能性があるので、庭植えの場合は弟切草の上に腐葉土をかけて凍結防止してあげるとよいでしょう。
6-2. 水やりと肥料
水やり
土が乾いてから水やりをします。
土が濡れている状態が続いていると根腐れをおこしてしまいます。
土の表面が乾いたらたっぷり水を与えます。
真夏の乾燥しやすい時期は水切れをおこしやすいので注意します。
水切れをおこすと乾燥して枯れてしまう原因になります。
あまりにも乾燥して水やりが追いつかない場合、鉢植えなら日陰か半日陰に移し、庭植えなら遮光してあげます。
庭植えの場合、雨が降らない日が何日も続くような乾燥していない時以外は水やりをする必要はありません。
肥料
春になったら根元に緩効性肥料を置きます。
もしくは3月から9月の間に液肥を2週間に1回程度与えてもいいでしょう。
6-3. 植えつけ・植え替え・タネまき
植えつけ
鉢植えの場合、赤玉土(小粒)7:川砂3か、赤玉土7:鹿沼土3の割合で混ぜた土を使います。
鹿沼土は酸性の土なので酸性の土を好む弟切草がよく育ちます。
または「山野草の土」を使ってもよいでしょう。
植え替え
鉢植えの場合、根がはってきたら植え替えをします。
花が咲く前の3月から4月が適期です。
芽吹いてからは植え替えない方が無難です。
手順は植えつけと同じです。
タネまき
秋になると赤い実の中にはたくさんの細かいタネができます。
すぐにまくか、乾燥させて2月から3月まで保管しておきます。
タネはばらまきにます。
土が乾燥しないように水やりをして管理し、本葉が2~3枚になるまで生長したら、鉢か地面に植え替えます。
タネをとりわけておかなくても環境がいい場合は「こばれダネ」が落ちてどんどんふえてくれますよ。
7. 種類(原種、園芸品種)など
7-1. オトギリソウ(弟切草)(Hypericum erectum)別名:血止め草(チドメグサ)、鷹の傷薬(タカノキズグスリ)、青薬(アオグスリ)
日本、中国、朝鮮半島に分布。
宿根草です。
草丈は20cmから60cm。
開花期は7月から8月で黄色い花を咲かせます。
葉や花、萼(ガク)に
黒い点をもちます。
生薬として利用されています。
7-2. サワオトギリ(沢弟切)(Hypericum pseudopetiolatum)
北海道、本州、四国、九州に分布しています。
草丈は15cmから40cm。
開花期は7月から8月です。
山地の水辺や湿地に生える多年草です。
7-3. コケオトギリ(苔弟切)(Hypericum laxum)
日本全土に分布する弟切草です。
草丈は3cmから30cm。
開花期は7月から9月です。
野原や休耕田などの湿ったところに生える小型の弟切草です。
花も小さく直径5mmから8㎜ほどの小輪です。
7-4. コゴメバオトギリ(小米葉弟切)(Hypericum perforatum var. angustifolium)
ヨーロッパ原産の弟切草です。
開花期は5月から7月です。
1934年に三重県で発見された帰化植物です。
名のとおり葉が小さい弟切草です。
7-5. セイヨウオトギリ(西洋弟切)(Hypericum perforatum)
ヨーロッパに自生していましたがアメリカに播し多くの草地で野生化しています。
聖ヨハネの日(6月24日)の頃までに花が咲き、伝統的にその日に収穫されたため英名のSt. John's wort(ヨハネの草)という名前がつきました。
地上部全体が刈られ乾燥させられハーブティーとして利用されています。
まとめ
毎年楚々とした黄色い花を咲かせ、花が終わると赤い可愛らしい実をつける弟切草。
ほとんど放っておいてもかまわないくらい育て方もとても簡単です。
丈夫で病害虫の心配もありませんが、真夏の直射日光による乾燥と地上部が枯れた冬にも根に水を与えないと枯れてしまうので注意してください。
薬草としても万能なこの可憐な植物を育てて自家用の「万能薬」を作ってみてはいかがでしょうか。
3. 弟切草の効能
弟切草は漢方薬や民間療法の中で古来より利用されてきた日本原産のハーブです。
弟切草にはヒぺリシンという特有の成分が含まれています。
ヒぺリシンには脳内の神経伝達物質であるセロトニンの分解を防ぐという働きがあるので、脳内のセロトニン濃度を高めることがでるそうです。
セロトニンには精神安定という作用があるので、うつ症状や不安症、不眠症、更年期障害、緊張しやすく疲れやすいなどの症状を改善に導きます。
その他、セレンが多く含まれているので、ウイルス性肝炎や肝硬変の予防にも効果があります。
また、抗菌作用や止血作用、収斂作用などがあるので、外傷などに対して外用として用います。
3-1. 外用薬
痛み止め、傷薬・傷口薬として使用する場合
- 茎や葉をすりつぶしてその絞り汁を患部に塗ります。
- 弟切草は根から葉まで草を全部利用します。
採取した弟切草を2週間ほど陰干しします。
乾燥したら焼酎(ホワイトリカーがおすすめです)に3~4ヶ月漬け込みます。
透明だった焼酎が赤褐色の液体に変われば焼酎に効能成分が溶け込んでいます。
出来上がった液を携帯用容器につめれば自作の傷薬の出来上がりです。
日焼けやムシ刺され、あせもなどにも効くそうですよ。
薄めて飲み薬としても使えます。
3-2. 小連翹(ショウレンギョウ)
江戸時代の百科事典「和漢三才図会」にも収載されていた日本で古くから使われている民間薬です。
中国でもおもに民間療法として用いられています。
小連翹は弟切草の別名で、弟切草の全草を乾燥したものです。
生理痛・神経痛
生理痛・神経痛の鎮痛剤として用いる場合には、煎じながら煮詰めたものを服用します。
うがい
扁桃腺炎などの鎮痛薬として、煎じ液でうがいをします。
浴剤
浴剤としてもリューマチ、神経痛、痛風などの鎮痛に効き目があるとされます。
4. 弟切草の名前の由来
「弟切草」という恐ろしい名前は何故つけられたのでしょうか。
次のような凄惨なストーリーが関係しているといわれています。
「時は平安時代、晴頼という名の優れた鷹匠がいました。
晴頼は鷹が傷ついたときの治療薬としてある薬草を使っていました。
その薬草を使うと鷹の傷はみるみるうちに回復していきます。
仲間の鷹匠がその草の名前を尋ねても秘密にして決して口外することはありませんでした。
しかし、ある日人のよい彼の弟がうっかり他の鷹匠に秘密をバラしてしまいます。
これに怒った晴頼は、弟を斬り殺してしまいました」
また、弟切草の葉っぱの黒い点(油点)は、そのときに庭に栽培していた薬草に弟の血潮が飛び散り残ったものといわれています。
葉はみただけでは黒い点ですが、生葉をすりつぶしてみると赤紫~赤褐色の汁が出てきます。
これが血のよう見えたからともいわれています。
また別名の小連翹(しょうれんぎょう)という名前は果実の中の種子が並んでいる様子が翹(ぎょう:女性の髪飾りの一種)に似ている連翹(れんぎょう)という植物があり、それより小さいので小連翹(しょうれんぎょう)と呼ばれているそうです。
属名の Hypericum はギリシャ語の「hypo(下に)+ erice(草むら)」とも「hyper(上に) + eikon(像)」に由来するといわれています。
英語名は「St. John’s wort(聖ヨハネの草)」といいます。
聖ヨハネを祭る日の前日に弟切草をはじめとする様々な薬草を集める風習があり、特に弟切草の黄色い花はその力が強いとされていることから「St. John’s wort(聖ジョンの草)」と呼ばれるようになったそうです。
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