「朱雀(すざく)」とは、古代中国の伝説上の神獣(神鳥)で「四神・四聖獣」の一つとして知られています。
鳳凰・不死鳥(フェニックス)と同一視されることもある「朱雀」について解説していきます。
- 朱雀が守護する方角
- 朱雀の司る色とは?
- 朱雀の司る季節とは?
- 中国天文学における朱雀の七宿
- 朱雀が司る中央の「星宿」はうみへび座α星
- 朱雀が司る「井宿」
- 朱雀が司る「鬼宿」
- 朱雀が司る「柳宿」
- 朱雀が司る「星宿」
- 朱雀が司る「張宿」
- 朱雀が司る「翼宿」
- 朱雀が司る「軫宿」
- まとめ
1. 朱雀が守護する方角
古代中国の四聖獣である「青龍・白虎・朱雀・玄武」はそれぞれ「東・西・南・北」の方角を守護しています。
朱雀は、翼を広げた鳳凰の姿で描かれる四神の一つで、「南方」を守護する神獣とされています。
古代中国の書物「淮南子(えなんじ)」では、方角には「四聖獣」と共に、季節神として五帝を補佐する五佐のうち「四佐」が割り当てられることもあるとされています。
四佐とは、「句芒(こうぼう)・蓐収(じょくしゅう)・祝融(しゅくゆう)・玄冥(げんめい)」でそれぞれ「東・西・南・北」を守護しています。
2. 朱雀の司る色とは?
朱雀の「朱」とは「赤」のことであり、朱雀の司る色は「朱色(赤色)」になります。
五行説では、「朱色(赤色)」は南方の色とされています。
陰陽五行説(五行思想)というのは、古代中国の自然哲学の思想や考え方であり、万物は「木・火・土・金・水」の5種類の元素から成り立っているという考え方です。
五行説は西洋の四大元素説(四元素説)と比較されることもあり、東洋の基本的な世界観や因果関係を規定していました。
四聖獣のうち、青龍は「緑(青)」、白虎は「白」、玄武は「黒」を象徴しています。
3. 朱雀の司る季節とは?
朱雀は陰陽五行説では、「火」の元素を象徴する四聖獣であり、火は「夏」の季節と相関しています。
陰陽五行説の「木・火・土・金・水」の5種類の基本要素(エレメント)は、自然現象の四季の変化を観察しながら抽象化された基本要素であるとされており、四聖獣の持つ性質・特徴・役割も五行説の観点から説明されています。
朱雀の司る季節は、燃え盛るような暑い「夏」であり、朱雀は光り輝く熱い炎である「火の元素」によって構成されているのです。
四季に対応する五行の色と四季を合わせた言葉に、「朱夏」があります。
4. 中国天文学における朱雀の七宿
古代の中国天文学では、天球を天の赤道帯に沿って「東方・北方・西方・南方」の四大区画に分けて、それぞれに四神(四聖獣)を対応させています。
これが中国天文学の方角観を形成して、「東方青龍・西方白虎・南方朱雀・北方玄武」という言葉が生まれることになったのです。
四聖獣には二十八宿を七宿ごとにまとめて割り当てるという発想があり、朱雀には「井宿・鬼宿・柳宿・星宿・張宿・翼宿・軫宿」が割り当てられることになっています。
古代中国の戦国時代は五行説に基づいて、「土=中央=黄・木=東=青・金=西=白・火=南=赤・水=北=黒」という五行のエレメント(元素)と「方位(五方)・色(五色)」が結びつけて考えられるようになっていきました。
5. 朱雀が司る中央の「星宿」はうみへび座α星
南方朱雀には28宿のうち7宿が割り振られています。
朱雀の中央の「星宿」は、西洋星座のうみへび座の心臓部に当たる星になります。
特に、うみへび座の最輝星「うみへび座α星」が朱雀を象徴する星になっています。
この星は古代中国の天文学者からも良く知られていたとても明るいオレンジ色の星であり、「孤独な者」を意味する二等星なのです。
オレンジ色のうみへび座α星は、ライチョウなど羽色がオレンジ色の鳥と結び付けられてきた経緯があり、「朱雀」という四聖獣の見かけや羽色のイメージとも一定の相関関係を推測することができるでしょう。
6. 朱雀が司る「井宿」
「二十八宿(にじゅうはっしゅく)」は、天球における天の赤道あるいは月の見かけ上の通り道を「28のエリア(星宿)」に不均等分割したものです。
朱雀が司る「井宿(せいしゅく・ちちりぼし)」は、南方朱雀七宿の第1宿であり、距星は「ふたご座μ星」となります。
井宿には「井(ふたご座)・鉞(ふたご座)・水府(オリオン座)・天罇(ふたご座)・五諸侯(ふたご座)・北河(ふたご座)・積水(ぎょしゃ座)・積薪(ふたご座)・水位(こいぬ座・かに座)・南河(こいぬ座)・四涜(いっかくじゅう座)・闕邱(いっかくじゅう座)・軍市(おおいぬ座)・野鶏(おおいぬ座)・天狼(おおいぬ座)・丈人(はと座)・子(はと座)・孫(はと座)・老人(りゅうこつ座)・弧天(おおいぬ座)」という20個の星官=星座があります。
井宿には「種まき・井戸掘・旅行が吉」との意味があります。
7. 朱雀が司る「鬼宿」
朱雀が司る28宿の一つである「鬼宿(きしゅく)」は、和名を「魂緒の星(たまおのほし)・魂讚星(たまほめぼし)」とも言われ、「万事が大吉」の良い意味があります。
南方朱雀七宿の第2宿として定義されています。
鬼宿の距星は「かに座θ星」となります。
主体の星官には、「かに座θ、η、γ、δ」の4つの星が相当します。
鬼宿には「鬼(車上にいるたくさんの幽霊:かに座)・積尸気(死体:かに座)・カン(警戒の狼煙:かに座)・外厨(宮殿の外の台所:うみへび座)・天気(犠牲獣の年を調べる役人や獣医:ほ座)・天狗(天上にいる犬:らしんばん座)・天社(土地神を祭る廟:ほ座)」という7つの星官=星座があります。
8. 朱雀が司る「柳宿」
朱雀が司る28宿の一つである「柳宿(りゅうしゅく・ぬりこぼし)」は、南方朱雀七宿の第3宿として定義されています。
柳宿の距星は「うみへび座δ星」です。
柳宿の主体となる星官=星座には、「うみへび座δ、σ、η、ρ、ε、ζ、ω、θ」の8つの星」があります。
柳宿には「柳(形が柳に似ている:うみへび座)・酒旗(客を招き集めるために酒屋が立てていたとされる旗:しし座)」という2つの星官=星座があります。
柳宿には、「何事も用うべからず日」というあまり好ましくない意味合いがあります。
9. 朱雀が司る「星宿」
朱雀が司る28宿の一つである「星宿(せいしゅく・ほとほりぼし)」は、南方朱雀七宿の第4宿として定義されています。
星宿の距星は「うみへび座α星」です。
星宿の主体となる星官=星座には、「うみへび座のα、τ1、τ2、ιの4つの星」があります。
星宿には「星(七星や衣服のことを象徴する:うみへび座)・天相(天上の丞相:ろくぶんぎ座)・軒轅(軒轅・ながえというのは黄帝の異称です:しし座)・内平(法の官吏:こじし座)」という4つの星官=星座があります。
星宿には、「婚儀・開店(商売)その他の事柄はすべて凶となる」というかなり悪い意味合いがあります。
10. 朱雀が司る「張宿」
朱雀が司る28宿の一つである「張宿(ちょうしゅく・ちりこぼし)は、南方朱雀七宿の第5宿として定義されています。
張宿の距星は、「うみへび座υ1星」です。
張宿の主体となる星官=星座には、「うみへび座υ1星、λ星、μ星、GC 3839、χ星、φ1星」があります。
張宿には「張(朱雀の素嚢あるいは鳥獣を捕える網を意味する:うみへび座)」という1つの星官=星座しか確認されていません。
清の「儀象考成」には、かつて張宿には「張」以外に「天廟」もあったとされますが、その星官の場所は不明のままです。
張宿は、「入学や物事の始めなどすべて吉となる」というかなり良い意味合いになっています。
11. 朱雀が司る「翼宿」
朱雀が司る28宿の一つである「翼宿(よくしゅく)」は、南方朱雀七宿の第6宿として定義されています。
翼宿の距星は「コップ座α星」で、和名は「襷星(たすきぼし)」と呼ばれています。
翼宿の主体となる星官=星座には、「コップ座のα、γ、ζ、λ、ν、η、δ、ι、κ、ε、θ、βなどの星+うみへび座のν、χ1などの星=合計で22の星」があります。
翼宿には「翼(朱雀の翼・劇団や楽団を表している:コップ座・うみへび座)」という1つの星官=星座しか確認されていません。
清の「儀象考成」では、かつて「翼」以外にも「東甌」があったとされますが、その星座の場所は不明のままです。
翼宿には、「事始めは吉であるが、仏事・葬祭は凶になる」というケースバイケースで変わる意味合いがあります。
12. 朱雀が司る「軫宿」
朱雀が司る28宿の一つである「軫宿(しんしゅく・みつかけぼし)」は、南方朱雀七宿の第7宿として定義されています。
軫宿の距星は「からす座γ星」です。
軫宿の主体となる星官=星座には、「からす座のγ、ε、δ、βの4つの星」があります。
軫宿には「軫(朱雀の尾や天車:からす座)・右轄(軸端の孔に入れる右側の釘で、黄帝が封じた異姓の諸侯を意味しています:からす座)・左轄(軸端の孔に入れる左側の釘で、黄帝が封じた同姓の諸侯を意味しています:からす座)・長沙(湖南省の地名:からす座)・青邱(青い丘:コップ座・うみへび座)」という5つの星官=星座があります。
軫宿には、「田畑・家屋の買入れをすると吉」という意味合いがあります。
まとめ
朱雀は「青龍・白虎・玄武」と並ぶ古代中国の「四神・四聖獣」の一つで、羽を広げた鳳凰・不死鳥(フェニックス)の姿として描かれることが多くなっています。
古代中国で戦国時代の陰陽家であるスウ衍(すうえん)が創始した「陰陽五行説」において、朱雀は「火」の属性を持ち「夏の季節」を司っていて、「南方」を守護しています。
朱雀は二十八宿のうち「井宿・鬼宿・柳宿・星宿・張宿・翼宿・軫宿」を司っており、中央の「星宿」は西洋星座のうみへび座で、その中でも特に最輝星の「うみへび座α星」に相当します。
四聖獣の「朱雀」を調べたい時には、この記事を参考にしてみて下さい。
11. 朱雀が司る「翼宿」
朱雀が司る28宿の一つである「翼宿(よくしゅく)」は、南方朱雀七宿の第6宿として定義されています。
翼宿の距星は「コップ座α星」で、和名は「襷星(たすきぼし)」と呼ばれています。
翼宿の主体となる星官=星座には、「コップ座のα、γ、ζ、λ、ν、η、δ、ι、κ、ε、θ、βなどの星+うみへび座のν、χ1などの星=合計で22の星」があります。
翼宿には「翼(朱雀の翼・劇団や楽団を表している:コップ座・うみへび座)」という1つの星官=星座しか確認されていません。
清の「儀象考成」では、かつて「翼」以外にも「東甌」があったとされますが、その星座の場所は不明のままです。
翼宿には、「事始めは吉であるが、仏事・葬祭は凶になる」というケースバイケースで変わる意味合いがあります。
12. 朱雀が司る「軫宿」
朱雀が司る28宿の一つである「軫宿(しんしゅく・みつかけぼし)」は、南方朱雀七宿の第7宿として定義されています。
軫宿の距星は「からす座γ星」です。
軫宿の主体となる星官=星座には、「からす座のγ、ε、δ、βの4つの星」があります。
軫宿には「軫(朱雀の尾や天車:からす座)・右轄(軸端の孔に入れる右側の釘で、黄帝が封じた異姓の諸侯を意味しています:からす座)・左轄(軸端の孔に入れる左側の釘で、黄帝が封じた同姓の諸侯を意味しています:からす座)・長沙(湖南省の地名:からす座)・青邱(青い丘:コップ座・うみへび座)」という5つの星官=星座があります。
軫宿には、「田畑・家屋の買入れをすると吉」という意味合いがあります。
まとめ
朱雀は「青龍・白虎・玄武」と並ぶ古代中国の「四神・四聖獣」の一つで、羽を広げた鳳凰・不死鳥(フェニックス)の姿として描かれることが多くなっています。
古代中国で戦国時代の陰陽家であるスウ衍(すうえん)が創始した「陰陽五行説」において、朱雀は「火」の属性を持ち「夏の季節」を司っていて、「南方」を守護しています。
朱雀は二十八宿のうち「井宿・鬼宿・柳宿・星宿・張宿・翼宿・軫宿」を司っており、中央の「星宿」は西洋星座のうみへび座で、その中でも特に最輝星の「うみへび座α星」に相当します。
四聖獣の「朱雀」を調べたい時には、この記事を参考にしてみて下さい。
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