ルサンチマンとは、簡単に言えば、弱者が強者に対し、憎しみや恨み、妬みを抱く感情のことを表しています。
ルサンチマンについて説明させていただきます。
- ルサンチマンとは?
- ルサンチマンの具体例
- ルサンチマンを使った言葉の使い方
- ルサンチマンの対義語
- ルサンチマンのデメリット
- ルサンチマンを克服するコツや方法
- まとめ
1. ルサンチマンとは?
人間は自分よりも力を持つものがいると、自由に発言したり行動を起こすことが許されず、抑圧された環境にいることが多いです。
そして、その抑圧された環境に晒されると、それがストレスとなり、強者への憎しみや恨みといった感情に変化します。
または強者だけが優遇されている状況に妬みを抱くこともあるでしょう。
こうした一連の心の動きをルサンチマンと呼びます。
またニーチェによれば、そうした恨みや憎しみ、妬みの感情が「価値の転換」によって、強者を復習しようとする心に変化することもルサンチマンと呼んでいます。
具体的にいえば、ニーチェはキリスト教の本質は、ユダヤ人のルサンチマンを起源にしていると主張しています。
当時、社会的弱者だったユダヤ人は、支配階級であるローマ人に対し、抑圧された生活を強いられており、憎しみや恨みといった感情を抱いていました。
また、ローマ人の生を楽しむ姿や自己肯定的な姿は、ユダヤ人の妬みの対象となっていました。
そして、こうしたユダヤ人の憎しみの感情から生まれた価値観が、強者は悪い人、弱者は善い人という、ゆがんだ価値観です。
こうして価値を転換することで、自ずと、強者に対し、復習を果たそうとしているのです。
これはキリスト教の「貧しい者こそ救われる」「弱者のみが善い人である」という思想に繋がっています。
ニーチェは、こうした心の動きもルサンチマンだと表現しています。
2. ルサンチマンの具体例
ルサンチマンの具体例を挙げてみます。
2-1. 有名人のスキャンダルが好き
人気アイドルが俳優とお泊りデートしていた、大物俳優に脱税疑惑が浮上など、有名人のスキャンダルはいつの時代も多くの人々の注目を浴びています。
世間を賑わせる話題の一つとして、各メディアがこぞってその話題を取り上げています。
あなたもこういったニュースに思わず目がいってしまうことはないでしょうか。
ニーチェの主張からいうと、こういった有名人のスキャンダルを取り上げる行為もルサンチマンからくる行動だといえます。
有名人への憧れや妬みが、こうしたスキャンダルを取り上げてメディアで叩くという行為に繋がっていると考えられます。
自分達の不遇や裕福でない立場を嘆き、有名人へのバッシングをすることで自分の境遇に対する恨みを晴らしているのです。
2-2. 上司の陰口
あなたも上司の陰口を言って、日頃の鬱憤を晴らしたことはあるのではないでしょうか。
こうした行為もルサンチマンからくる行動だと言われています。
上司という自分よりも強い立場にある者に、日頃の鬱憤を晴らすべく、陰で仲間と陰口をいうのはまさにルサンチマンだと言えるでしょう。
部下は、上司の陰口を言うことで、上司への復讐を果たしているといえます。
日頃の上司への恨みや憎しみといった感情が、上司の陰口を言うことで解消されているのです。
上司の陰口を言うことで自分を正当化し、強者である上司を悪者扱いにする姿は、ルサンチマンという行為に他なりません。
部下は上司から受ける抑圧された環境に反発し、陰口をいうことで、自分を正当化し、日頃の恨みを晴らしているといえます。
2-3. 美人社員をいじめるおばさん社員
職場に若くて美人な子をみると、いじめてばかりいる、おばさん社員はいないでしょうか。
このおばさん社員が繰り広げている、美人社員いじめもルサンチマンからくるものです。
自分にはない美しさを備えた若い子をみると、嫉妬心に駆られ、憤慨します。
そして、美人社員がこなした仕事にケチをつけたり、仲間外れにして居場所をなくすという行動を起こしたりします。
この美人社員は、決しておばさん社員に対し、恨まれるような行為をした訳ではありません。
ただ、美人であるというだけの理由で、美人なことを妬むおばさん社員に疎まれているだけです。
おばさん社員は美人社員をいじめることで、自分の恵まれない容姿を嘆き、美人に復讐心を持って自分の不遇を晴らしているといえます。
3. ルサンチマンを使った言葉の使い方
ルサンチマンを使った言葉の使い方を紹介します。
3-1. 例題1
「あなたのルサンチマンな感情が、夢を叶える原動力になっていたとは知らなかった」
お金持ちの子供なら、努力しなくても英才教育を受けられ、エスカレーター式の学校に入学できるのに、貧乏な家に生まれたがゆえに、仕事と勉強という二足のわらじを履かねばならず、勉強すらもままならない日々。
そういった自分の不遇をバネにして、「金持ちの子供には負けないぞ!」という反骨精神で夢を追いかけてきたことを表す文章です。
また、この人の場合は、そういった不遇の環境があったからこそ、「どうしても夢を叶えたい」
「金持ちには負けたくない」
という強い思いが生じ、夢を掴むことができたことを示唆させています。
3-2. 例題2
「君のルサンチマンに付き合わされるのはもう懲り懲りだ。人の悪態をつくのはやめてくれ。みっともないぞ」
口を開けば悪口ばかり言う人に対し、放った一言。
悪態をついている人は、いつも不平不満ばかりもらして、悪口を言うことでその気持ちを解消していた人のようです。
ですが、このような姿は非常にみっともなく、自分の器の小ささや人として優れていないことを露呈しています。
友人はそういった逆恨みする「君」を見て、幻滅し、悪態をつくのを止めろと言っています。
実際にルサンチマンという感情は、客観視すると、単なる逆恨みであることが多く、人間性を疑われるような感情である場合が多いです。
3-3. 例題3
「私がルサンチマンを持ったのは、優秀な兄の存在が大きい。いつも両親は兄ばかりを信頼し、私はいつものけ者だった。そんな環境が兄に対する歪んだ感情を抱かせるようになったのだ」
この例文において、「優秀な兄」とは強者であり、「私」は弱者となっています。
弱者である「私」は、何をしても優秀な兄を妬み、そのうち、兄を憎むようになります。
兄は何も悪くはありません。
悪いのは優秀な兄を取り囲み、ちやほやする輩でしょう。
しかし、「私」はそういった環境にしたのは、周りではなく、優秀な兄自身であると感じ、兄を憎むことで自分のやるせない思いを解消し、恵まれない環境に復讐を果たそうとしています。
4. ルサンチマンの対義語
ルサンチマンの対義語を挙げるとするならば、「優越感」(ゆうえつかん)でしょう。
「優越感」とは、自分が周りの人よりも優れていたり、恵まれている様子を見て快感を覚える感情です。
他者に比べて、自分の方が格上であることに気持ち良さを感じています。
こうした人の心理には、自分に対する満たされた肯定感やゆるぎない自信が存在しています。
あなたも、「優越感」に浸ったことはあるでしょう。
自分だけ試験に合格したことに快感を覚えたり、重要な仕事を任されて気持ち良さを覚えたことが。
こういった感情が「優越感」と呼ばれるものです。
対して、ルサンチマンとは、分かりやすくいえば、自身のコンプレックスによる逆恨みです。
この感情を抱く背景には、自己肯定感が低い、自信がないというネガティブな感情が関わっています。
他者よりも自分は優れておらず、また恵まれない環境にいることを実感しているために湧き上がる感情がルサンチマンです。
そのため、ルサンチマンと「優越感」は相反する言葉であると捉えられます。
5. ルサンチマンのデメリット
ルサンチマンを抱くことで生じるデメリットを挙げてみます。
5-1. 人間の器の小ささを露呈
ルサンチマンという感情を抱えると、その人の器の小ささを露呈することになります。
なぜならば、ルサンチマンとは逆恨みの感情で沸き起こる心の動きだからです。
直接、何か悪いことをされたのなら恨む行為も理解できますが、ルサンチマンの場合はそうではありません。
直接、誰かに悪いことをされた訳ではないのに、それを環境のせいにして恨みます。
あくまで自分の不遇は、自分の責任ではなく、周りの人や環境の責任だと、責任転嫁して自分を正当化することに根源を成します。
つまり、ルサンチマンという感情を抱く人は、自分の悪い面を受け止めきれない器の小さい人間だということです。
自分のマイナスな面を露呈させてしまう感情なので、好きな人の前では見せない方がよいでしょう。
5-2. いつまでも向上しない
ルサンチマンという感情が沸き起こると、その人の成長を阻害することになります。
というのも、ルサンチマンとは、自分の不遇な環境を正当化する感情だからです。
例えば、ブスな女性が美人な人を見て、劣等感を抱くような場合。
もし、ここでルサンチマンという感情が働いて「あの美人、いつも男を誘惑する目つきをしている」
などと逆恨みし、美人は「悪」、ブスで男を誘惑できない自分を「善」と捉えてしまいます。
そうすると、どのようなことが起こるかというと、ただひたすら美人をいじめて自分の不満を解消するだけです。
そこには何の発展も見込めません。
ですが、美人な人を見て「私も美人になりたい!」と憧れを抱くのなら、自分磨きやオシャレなどをして、綺麗な自分に生まれ変わることができます。
ルサンチマンを抱くと、ダメな自分を正当化してしまうので、いつまでたっても向上できません。
自分の成長を妨げる感情といえるでしょう。
5-3. 能動的に行動を起こせない
ルサンチマンを抱くと、能動的に行動を起こせなくなるというデメリットが出てきます。
自分の短所や恵まれない環境を正当化してしまうルサンチマンは、自分の弱点を非常によく理解しています。
ただ、そこにその弱点を利点と捉える歪んだ発想に問題はありますが、自分の弱点をしっかりと理解しているからこそ沸き起こる感情であると言えます。
つまり、ルサンチマンを抱く時点で、その人は自分を否定的に見ていることになります。
また、自分に自信のない人間は、能動的に行動を起こすのが苦手な傾向があるため、ルサンチマンを抱く人は常に自分に自信が持てず、能動的に動けない人であると言えるでしょう。
何事も卑屈に捉えてしまうところがあります。
6. ルサンチマンを克服するコツや方法
ルサンチマンを克服するコツや方法を紹介します。
6-1. 相手にも欠点や不幸があることを知る
ルサンチマンを克服する上で大切なのは、相手にも欠点や不幸が必ずあることを知ることです。
どんなに幸せそうに見える人でも、必ず一つは欠点や不幸を持っているものです。
例えば、お金持ちでイケメンな友人がいたとしても、それだけで相手を羨み、妬むのはあまりにも短絡的です。
もしかしたら、彼女に振られたことがあるかもしれませんし、幼少期に親を亡くしているなどの不幸があるかもしれません。
「羨ましいな」
「自分よりも良い生活を送っていそうだな」
などと思っても、それはあくまであなたの考えに過ぎません。
どのような優れた人物であっても、欠点や不幸はつきものなので、自分だけが不幸だと考えるのはやめましょう。
そうすれば、自然と相手にルサンチマンを抱かなくなるはずです。
6-2. 相手の良いところを見る
自分が金持ちであることを自慢したり、恵まれた境遇であることを鼻にかけている人は、見ているだけで嫌気が差します。
陰で悪口を言ってしまいたくなるのも分かりますが、そうすると、自分の負けを認めているようで惨めな気持ちになってしまいます。
ルサンチマンを抱かずに過ごすには、こういった嫌みな人の良いところを探してあげるのも良い方法です。
嫌みな人であっても、一つくらいは良いところがあるはず。
そこを見つけてあげれば、少しは相手に好感を抱けるかもしれません。
あなたが相手に抱く、怒りの感情をクールダウンすることができるので、嫌な人がいたら、良いところを探すようにしてみましょう。
6-3. 自分がどうなりたいのかを考える
傲慢で嫌みな人がいて、さらにその人が恵まれた境遇の持ち主であれば、恨む感情が沸き起こるのも納得できます。
「どうしてあんな奴が恵まれているのに、自分は不幸なんだ」
と、自分の人生を嘆き、相手を恨むことでしょう。
しかし、こうして恨んだところで、自分の人生が変わる訳ではありません。
相手は悠々自適に過ごしているのに、自分は相手に愚痴を言っているだけの惨めな人生だなんて、まっぴらごめんです。
それなら、相手のことは考えずに、自分がどうなりたいかだけに意識を集中させましょう。
相手の環境が羨ましいと思うのなら、自分もそれを手に入れられるように努力した方が何倍も良い人生を歩めます。
ルサンチマンを抱いても、自分の人生は変わりません。
それなら、自分がどうなりたいのかということだけに神経を集中させましょう。
まとめ
ルサンチマンは、知らずしらずのうちに抱いてしまっている人が多いのではないでしょうか。
しかし、恨みや怒りの感情はあなたに良い影響をもたらしません。
自分の人生が良い人生だと言えるように、周りと比べずに、そのままの自分を認め、自信をもつことが大事です。
ルサンチマンとは、簡単に言えば、弱者が強者に対し、憎しみや恨み、妬みを抱く感情のことを表しています。
ルサンチマンについて説明させていただきます。
1. ルサンチマンとは?
人間は自分よりも力を持つものがいると、自由に発言したり行動を起こすことが許されず、抑圧された環境にいることが多いです。
そして、その抑圧された環境に晒されると、それがストレスとなり、強者への憎しみや恨みといった感情に変化します。
または強者だけが優遇されている状況に妬みを抱くこともあるでしょう。
こうした一連の心の動きをルサンチマンと呼びます。
またニーチェによれば、そうした恨みや憎しみ、妬みの感情が「価値の転換」によって、強者を復習しようとする心に変化することもルサンチマンと呼んでいます。
具体的にいえば、ニーチェはキリスト教の本質は、ユダヤ人のルサンチマンを起源にしていると主張しています。
当時、社会的弱者だったユダヤ人は、支配階級であるローマ人に対し、抑圧された生活を強いられており、憎しみや恨みといった感情を抱いていました。
また、ローマ人の生を楽しむ姿や自己肯定的な姿は、ユダヤ人の妬みの対象となっていました。
そして、こうしたユダヤ人の憎しみの感情から生まれた価値観が、強者は悪い人、弱者は善い人という、ゆがんだ価値観です。
こうして価値を転換することで、自ずと、強者に対し、復習を果たそうとしているのです。
これはキリスト教の「貧しい者こそ救われる」「弱者のみが善い人である」という思想に繋がっています。
ニーチェは、こうした心の動きもルサンチマンだと表現しています。
2. ルサンチマンの具体例
ルサンチマンの具体例を挙げてみます。
2-1. 有名人のスキャンダルが好き
人気アイドルが俳優とお泊りデートしていた、大物俳優に脱税疑惑が浮上など、有名人のスキャンダルはいつの時代も多くの人々の注目を浴びています。
世間を賑わせる話題の一つとして、各メディアがこぞってその話題を取り上げています。
あなたもこういったニュースに思わず目がいってしまうことはないでしょうか。
ニーチェの主張からいうと、こういった有名人のスキャンダルを取り上げる行為もルサンチマンからくる行動だといえます。
有名人への憧れや妬みが、こうしたスキャンダルを取り上げてメディアで叩くという行為に繋がっていると考えられます。
自分達の不遇や裕福でない立場を嘆き、有名人へのバッシングをすることで自分の境遇に対する恨みを晴らしているのです。
2-2. 上司の陰口
あなたも上司の陰口を言って、日頃の鬱憤を晴らしたことはあるのではないでしょうか。
こうした行為もルサンチマンからくる行動だと言われています。
上司という自分よりも強い立場にある者に、日頃の鬱憤を晴らすべく、陰で仲間と陰口をいうのはまさにルサンチマンだと言えるでしょう。
部下は、上司の陰口を言うことで、上司への復讐を果たしているといえます。
日頃の上司への恨みや憎しみといった感情が、上司の陰口を言うことで解消されているのです。
上司の陰口を言うことで自分を正当化し、強者である上司を悪者扱いにする姿は、ルサンチマンという行為に他なりません。
部下は上司から受ける抑圧された環境に反発し、陰口をいうことで、自分を正当化し、日頃の恨みを晴らしているといえます。
2-3. 美人社員をいじめるおばさん社員
職場に若くて美人な子をみると、いじめてばかりいる、おばさん社員はいないでしょうか。
このおばさん社員が繰り広げている、美人社員いじめもルサンチマンからくるものです。
自分にはない美しさを備えた若い子をみると、嫉妬心に駆られ、憤慨します。
そして、美人社員がこなした仕事にケチをつけたり、仲間外れにして居場所をなくすという行動を起こしたりします。
この美人社員は、決しておばさん社員に対し、恨まれるような行為をした訳ではありません。
ただ、美人であるというだけの理由で、美人なことを妬むおばさん社員に疎まれているだけです。
おばさん社員は美人社員をいじめることで、自分の恵まれない容姿を嘆き、美人に復讐心を持って自分の不遇を晴らしているといえます。
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