「自傷癖」とは、自分で自分の身体を傷つけてしまう精神病理的な行動・習慣のことです。
自傷癖がある人は過去に深刻なトラウマを受けていたり自己否定感が強かったりすることが多いのですが、自傷癖がある人にはどのような特徴があるのでしょうか?
「自傷癖の心理・原因・種類」と「自傷癖を克服する方法」について解説していきます。
- 自傷癖とは?
- 自傷癖の心理
- 自傷癖がある人の特徴
- 自傷癖の原因
- 自傷癖の種類
- 自傷癖を克服する方法(長期的な改善)
- 自傷癖を克服する方法(短期的な改善)
- まとめ
1. 自傷癖とは?
「自傷癖(じしょうへき)」とは、意図的に自分で自分の体を傷つけたり、副作用・毒性のある薬物(毒物)を摂取したりする自己破壊的な行動・習慣のことです。
自傷癖は精神的ストレスが閾値を超えて、「自己否定的な衝動」が高まった時に起こりやすくなります。
更に、自傷癖は精神疾患・精神障害との相関関係が強いことも知られていて、「境界性パーソナリティー障害・双極性障害(躁うつ病)・PTSD・統合失調症・解離性障害」などでも有意に起こりやすいのです。
1-1. 自傷癖の行動・習慣の多様性と精神的に追い詰められてる状態
自傷癖の代表的なものとして、自分でカッターなどで手首を切る「リストカット症候群」が知られていますが、それ以外にも腕を切る「アームカット」、睡眠薬を大量服薬する「OD(オーバードーズ)」、自分で髪の毛を大量に抜く「抜毛癖」、自分の頭を床・壁に叩きつける、自分の指や唇の皮を剥く、異常な過食・拒食と嘔吐などの色々な自傷癖があります。
自傷癖がある人は精神的に追い詰められていて、深い孤独感や無力感に悩み、自分の存在意義が分からなくなっていることが多いのです。
2. 自傷癖の心理
自傷癖を持っている人の心理状態はどのようなものなのでしょうか?自傷癖の代表的な心理について、分かりやすく解説していきます。
2-1. 強い自己否定感・心理的苦痛からの逃避
自傷癖の代表的な心理として、「強い自己否定感・心理的苦痛からの逃避」を上げることができます。
自傷行為を習慣的に行っている人は、ほぼ例外なく「強い自己否定感・自己評価の低さ」があり、自分のことを「他の人と比べて価値のない人間(人生を前向きに頑張ることができない人間)」というように否定的に捉えていることが多いのです。
自己否定感が強いために、他人に対して劣等コンプレックスを感じたり、仕事・社会生活に対して不安を感じたりしやすいのです。
自傷癖に多い心理として、「強い心理的苦痛を感じた時に、自分の体を傷つけることで苦痛を紛らわせる」ということもあります。
他者とのやり取りで嫌なことがあったり、仕事で大きな失敗をして叱られたりした時に、その自己嫌悪の苦痛から逃れるために、リストカットやOD(過量服薬)をしやすくなるのです。
2-2. 誰かに助けてもらいたいというクライシスコール(SOSコール)
「誰かに助けてもらいたいというクライシスコール(SOSコール)」というのが、自傷癖の重要な心理の一つです。
自傷癖を繰り返し行っている人、リストカットやアームカットを頻繁に行ってインターネット上に写真をアップしたり、包帯をぐるぐるに巻いて周囲の家族や恋人・友人に敢えて見せようとしてる人は、「傷ついている自分を誰かに救ってもらいたい」という心理を持っています。
自傷癖というのは一見すると、自分一人で自分を傷つけて苦しんでいる「自己完結的な行動」に見えるのですが、実際には自傷行為をすることによって「精神的に追い詰められている自分に気づいて助けて欲しい」というクライシスコール(SOSコール)の意味合いもあるのです。
2-3. 強い絶望感・自分を消したいという希死念慮
自傷癖の注意すべき深刻な心理として、「強い絶望感・自分を消したいという希死念慮」というものを指摘することができます。
かつては「自傷癖の行動」や「死にたい・消えたいという自己宣言」は、実際の自殺企図・自殺既遂には結びつかないと言われてきましたが、現在の統計的研究では自傷癖のある人や自殺したいと口にしている人は、そうでない人よりも「約50〜100倍以上の自殺リスク」があることが分かっています。
「本当に死にたい人は、死にたいと言わない(自傷癖の行為なんかしない)」というのは、完全に間違った認識なのです。
自傷癖の心理として、自分の人生にはもう生きる意味などないといった「強い絶望感」があり、その絶望感が強まっていくと「この世から消えてしまいたい・自分なんかいないほうがいい」という希死念慮に発展してしまうのです。
希死念慮が具体的な言葉として表現され始めた場合は、周囲の人達の心理的な支えと自殺の警戒が必要になります。
3. 自傷癖がある人の特徴
自傷癖がある人には、どのような特徴があるのでしょうか?「自傷癖がある人の特徴」について、分かりやすく解説していきます。
3-1. 過去に虐待・いじめの被害に遭って自己肯定感を失っている
自傷癖がある人の典型的な特徴として、「過去に虐待・いじめの被害に遭って自己肯定感を失っている」ということが上げられます。
自傷癖がある人は、過去に自分の存在価値を否定されるような「親からの虐待」や「クラスメイトからのいじめ」の被害に遭った経験を持っていることが多いのです。
児童虐待やいじめの被害に遭ってしまうと、「親から攻撃される自分には存在価値がない+学校のみんなから馬鹿にされて否定される自分には居場所がない」という心理状態になりやすいのです。
自分に対する自己肯定感・自己愛を失って追い詰められた精神状態から何とか逃れようとして、自傷行為を始めることが多くなっています。
3-2. 過去に対象喪失の悲しみ・絶望を経験して人間不信になっている
「過去に対象喪失の悲しみ・絶望を経験して人間不信になっている」ということが、自傷癖がある人の大きな特徴なのです。
自傷癖を持っている人は、過去に信頼していた異性や親友から裏切られた経験をしていることがあります。
精神分析学では、自分にとって重要な意味を持つ大切な相手を失うことを「対象喪失」という概念で表現しますが、自傷癖がある人は過去に「対象喪失による悲しみ・絶望」を味わっていることが多いのです。
どんなに他人を信じていても、いつかは裏切られてしまう(離れていってしまう)という悲観的な考え方が、「人間不信」の原因になっています。
人間不信が深刻化して孤独感が強まると、反射的に自傷行為をしてしまう衝動が高まりやすいのです。
3-3. 見捨てられ不安が強くて特定の他者にしがみつきやすい
自傷癖がある人の人間関係の特徴として、「見捨てられ不安が強くて特定の他者にしがみつきやすい」ということがあります。
自傷癖を持っている人は、基本的に「寂しがり屋+構ってほしい人」であり、自分自身の存在価値や必要性を誰かに認められたがっているのです。
自傷癖のある人は過去の対象喪失や排除などのトラウマもあり、自分にとって大切な人から自分が不要な存在として切り捨てられることを過度に恐れています。
「見捨てられ不安」の強さは時に病的なものになることがあり、自分を好きでいてくれる人や自分を支えてくれる人が誰もいない時に、不安感が限界を超えて自傷行為に走りやすくなるのです。
見捨てられ不安の強さは、恋愛関係・対人関係における「他者への狂気的なしがみつき」になって現れることもあります。
3-4. 現実社会における生きる目的や価値を見失って混乱している
「現実社会における生きる目的や価値を見失って混乱している」というのが、自傷癖がある人の典型的な特徴です。
自傷癖を持っている人は、「自分がなぜつらいことに耐えてまで生きていかなければいけないのかが分からない+自分の人生には何も生きるべき意味がない」という虚無感や自己否定感に悩まされていることが多いのです。
現実社会の面倒なことやつらいことに耐えてまで頑張ろうとする「生きる目的・価値(意味)」が分からなくなっているというのが、自傷癖がある人の特徴になっています。
そういった虚無感(空虚感)や無意味感から逃れて、生きているリアリティーを感じるために自傷行為をしてしまうケースも多いのです。
3-5. 人間関係や社会生活で強いストレスを受けると自傷行為をしやすい
自傷癖がある人の実際に自傷する場合の特徴として、「人間関係や社会生活で強いストレスを受けると自傷行為をしやすい」ということが言えます。
自傷癖がある人が実際に自傷行為をしてしまう時には、かなりの確率で「人間関係・社会生活における強いストレス(嫌なこと・苦痛なことが続いているストレス)」が関係しています。
親しい人間関係(友人関係)で悪口を言われたり仲間はずれにされたりした時には、自傷行為を行ってしまうリスクは格段に跳ね上がります。
仕事や職業生活における大きな失敗(深刻な挫折)に伴うストレスによっても、自分で自分の存在を否定するかのような自傷行為に掻き立てられやすくなるのです。
自傷癖は、精神的ストレスに対する「非適応的なストレス反応」として解釈できる部分が多くあります。
4. 自傷癖の原因
自傷癖の心理的問題が起こってしまう原因は何なのでしょうか?この項目では、自傷癖の原因について分かりやすく説明していきます。
4-1. 親からの肉体的・精神的な虐待やネグレクト(育児放棄)
自傷癖の原因として、「親からの肉体的・精神的な虐待やネグレクト(育児放棄)」を上げることができます。
親からの虐待被害(被ネグレクト体験)の感情記憶は、自傷癖の原因になりやすいのです。
親による虐待というのは、本来であれば子供である自分のことをもっとも愛してくれて守ってくれるはずの親が、自分を虐待して否定するという行為になります。
親から肉体的・精神的な虐待やネグレクト(育児放棄)を受けることで、子供は「自分なんかこの世界に必要のない人間なんだ+自分は誰からも愛されない嫌われ者なのだ」という自己否定・自己嫌悪の認識を深めていってしまうのです。
激しい自己嫌悪の結果として、自分で自分を傷つける自傷行為をしたいという衝動が高まっていきます。
4-2. 学校生活における激しいいじめ・徹底的な仲間外れ
「学校生活における激しいいじめ・徹底的な仲間外れ」というのが、自傷癖の原因の一つになっています。
「学校でいじめられた経験」や「友達から徹底的に仲間外れにされた思い出」というのが、自傷癖の原因になってしまうことが多いのです。
小中学生くらいの年代では、学校が自分の生きている世界のすべてになりやすく、その学校で激しくいじめられてしまうと、「自分の生きていく場所がない+自分は誰からも受け容れられない」という悲観的な考え方になりやすいのです。
学校で友達から仲間外れにされて孤立させられる体験というのも、「見捨てられ不安」を強める一因になってしまいます。
いじめや仲間外れによる「自己疎外感・自己否定感・見捨てられ不安」が、自分で自分を否定する自傷行為の原因になります。
4-3. 深刻な対象喪失の苦痛と見捨てられ不安を感じた失恋・離婚
自傷癖の代表的な原因の一つに、「深刻な対象喪失の苦痛と見捨てられ不安を感じた失恋・離婚」を上げることができます。
自傷癖の原因として多いものに、「信じていた人から裏切られた経験+深刻な対象喪失の苦痛と孤独感」があります。
人は「自分を愛してくれる人は誰もいない(=みんなが自分を裏切って去っていってしまう)」と思い込んでしまった時に、自分がこの世界にたった一人で取り残されたような恐怖感や孤立感を感じて、自傷行為に駆り立てられやすいのです。
そういった取り残される恐怖感・孤立感につながる代表的な対象喪失の体験として、自分のほうが一方的に振られて絶縁された「失恋・離婚」を考えることができます。
4-4. 境界性パーソナリティー障害の人格構造
自傷癖の典型的な原因の一つとして、「境界性パーソナリティー障害の人格構造」があります。
境界性パーソナリティー障害(BPD)では、自分と他者の境界線が分からなくなって感情・気分が非常に不安定になります。
その不安定な心理状態で、対象喪失(取り残され)を予期する対人関係のトラブルが起こった時に、「見捨てられ不安・生きる意味がないとする虚無感」が刺激されて、自傷行為をせざるを得ない衝動性・自己否定感が高ぶってしまうのです。
4-5. 現実社会における仕事・恋愛・人間関係の強いストレス
「現実社会における仕事・恋愛・人間関係の強いストレス」というのが、自傷癖に多く見られる原因になっています。
自傷癖を実際にしてしまう直接の原因は、「現実社会において自分の存在・能力・価値を否定される体験のストレス」になってきます。
仕事で失敗して自分の能力を否定されたり、恋愛で失恋して大切な人から切り捨てられたり、対人関係で激しく罵倒されたりした時などに、その耐え難いストレスを発散する手段として自傷行為が選ばれやすいのです。
5. 自傷癖の種類
自傷癖を構成する自傷行為の種類には、どのようなものがあるのでしょうか?自傷癖の種類について紹介していきます。
5-1. リストカット・アームカット
自傷癖の代表的な種類として、「リストカット・アームカット」があります。
カッターや小刀などの刃物を使って手首を切りつける「リストカット」は、もっとも多い自傷癖の一種です。
手首ではなく上腕部分を切りつける自傷行為は「アームカット」と呼ばれます。
リストカットもアームカットも傷の深さは様々ですが、自傷癖のレベルに留まっている限りは、致命傷になるほど深く切りつけることは少なく、大半の人は「ためらい傷・浅傷の切りつけ」のレベルになります。
5-2. OD(オーバードーズ:過量服薬)
自傷癖の種類の一つとして、「OD(オーバードーズ:過量服薬)」があります。
比較的多い自傷行為として、睡眠薬・抗不安薬などを大量に服用して自殺企図をする「OD(オーバードーズ:過量服薬)」があります。
現在のベンゾジアゼピン系の睡眠薬なら死亡リスクはまずないですが、胃洗浄などのつらい治療を受ける事にはなります。
ただアルコールと大量の睡眠薬を併用する自傷癖では、健康被害のリスクが高まってしまいます。
5-3. 抜毛癖・指や唇の皮を剥く
自傷癖に多い種類として、「抜毛癖・指や唇の皮を剥く」があります。
精神的ストレスが高まると自分の髪の毛を引きむしるように大量に抜き取ってしまう「抜毛癖」、自分の指・唇の皮を血が滲んで溢れてくるまで剥き取っていく行為も、自傷癖の一種になります。
軽度の精神的ストレスの発散手段として行われる事が多いのです。
5-4. 自分の頭を床に打ち付ける・怪我するまで壁を殴る
暴力性が際立つ自傷癖の種類として、「自分の頭を床に打ち付ける・怪我するまで壁を殴る」があります。
自閉症スペクトラムや自己否定感情の問題がある人に多い自傷癖として、自分の頭を強く床に打ち付ける行為があります。
コンクリートの壁などを強く殴ることで出血したり骨折したりするような自傷癖の種類もあります。
5-5. 相手を選ばない不特定多数との性的逸脱(女性の場合)
女性に見られる自傷癖の種類として、「相手を選ばない不特定多数との性的逸脱」を上げることができます。
女性が自分で自分を粗末に扱う自傷行為として、好きでも何でもない不特定多数の異性と簡単に肉体関係を持ってしまう性的逸脱があります。
性的虐待や性犯罪の被害に遭って、自分の身体や心が穢れてしまったと自虐的に思い込んでいる女性に起こりやすい自傷癖として知られています。
6. 自傷癖を克服する方法(長期的な改善)
「自傷癖を克服するための長期的な改善方法」には、どのような方法ややり方があるのでしょうか?長期的視点から見た自傷癖を克服するための方法について紹介していきます。
6-1. カウンセラーや精神科医などの専門家に相談して効果的な対処法を一緒に考える
自傷癖を克服するための長期的な改善方法として、「カウンセラーや精神科医などの専門家に相談して効果的な対処法を一緒に考える」ということがあります。
長く続いている深刻な自傷癖の背景には、「うつ病・境界性パーソナリティー障害・双極性障害(躁うつ病)・解離性障害」などの精神疾患・パーソナリティー障害が存在していることがあるので、長期的かつ根本的な改善を目指すなら一度はカウンセラーや精神科医などの専門家に相談してみるべきでしょう。
精神疾患やパーソナリティー障害の問題がなかったとしても、専門家ならではの納得のいく説明や助言を得られたり、共感的理解を心がけているカウンセラーであれば「自傷行為をしてしまう気持ち・悩み」についての話を徹底的に聴いてもらえるメリットもあります。
自傷癖に対する効果的な対処法を一緒に考えてくれるような専門家が見つかれば、精神的な不安感・緊張感もだいぶ和らいできます。
6-2. 自分の物事の考え方を根本から改善して、自傷行為を他の行動に置き換える認知行動療法に取り組む
「自分の物事の考え方を根本から改善して、自傷行為を他の行動に置き換える認知行動療法に取り組む」ということが、自傷癖を克服するための長期的な改善方法になってくるでしょう。
自傷癖を根本的に克服したいのであれば、心理療法の一種である「認知行動療法(CBT)」に真剣に取り組んでみることがおすすめです。
認知行動療法では、自分自身の「自己否定的(自己嫌悪的)+他者否定的+将来悲観的な認知」を肯定的な内容に修正していくことで、自分で「自分の存在価値」を認めて前向きな行動が取れるようにしていくことができます。
自傷行為を「他の代替的な行動」に置き換えていく行動療法も実施することができ、自傷行為に頼らずにストレスを解消できるようになる可能性があります。
6-3. 現実社会の中で自分の居場所となる人間関係や生きがいになる活動(仕事)を探す
自傷癖を克服するための長期的な改善方法として、「現実社会の中で自分の居場所となる人間関係や生きがいになる活動(仕事)を探す」ということが上げられます。
自傷癖を長期的かつ根本的に解決する最善の方法は、「現実社会と人間関係に対する適応能力」を高めることになります。
自傷癖を続けてしまう大きな原因はやはり、現実世界の中に自分の居場所がないこと、自分が本心からやりたいと思える活動がないことなのです。
現実社会の中で、自分の居場所となるような「親しい人間関係(信頼できる相手との関係)」を作り上げていくこと、自分の生きがいになるような熱中できる活動・仕事を見つけて取り組んでいくことが、自傷癖の長期的な改善方法になってきます。
7. 自傷癖を克服する方法(短期的な改善)
「自傷癖を克服するための短期的な改善方法」には、どのような方法ややり方があるのでしょうか?短期的視点から見た自傷癖を克服するための方法について紹介していきます。
7-1. 自傷癖をしてしまう自分を過度に否定せずに受け容れる
自傷癖を克服するための短期的な改善方法としては、「自傷癖をしてしまう自分を過度に否定せずに受け容れる」ということがあります。
自傷癖を短期的に改善する方法としては、「自傷癖をする自分はダメな人間」という思い込みを捨てて、「自傷癖をしてしまっても自分の存在価値に変わりはない」という自己肯定の認識を持つことがあります。
自傷行為をしてしまう時があっても、それによってあなたの基本的な存在価値が損なわれるわけではないことを理解して下さい。
7-2. 自傷行為をしてしまった時の出来事や心理状態を日記に書いて自己分析する
「自傷行為をしてしまった時の出来事や心理状態を日記に書いて自己分析する」というのが、自傷癖を克服するための短期的な改善方法になってきます。
自傷癖克服の短期的な改善法としては、「自分が自傷癖に駆り立てられた時の出来事・心理状態」を客観的に把握することがあります。
そのためには、自傷行為をしてしまった時にどんな出来事があったのか、その時にどんな考え方をしたのかについて日記に書き残しておきましょう。
その後で、日記を読み返しながら自己分析をして、次に同じ自傷癖を繰り返さない対処法を考えることが有効なのです。
7-3. 精神的につらい時には信頼できる恋人・親友・専門家などに連絡(相談)してみる
「精神的につらい時には信頼できる恋人・親友・専門家などに連絡(相談)してみる」というのが、自傷癖を克服するための短期的な改善方法になります。
自傷癖克服の短期的対処法は、我慢できないほどに精神的につらい時(苦しい時)に、誰かにすぐに相談できるような体制・関係を作っておくということです。
つらくて苦しい時に、誰かに気持ちや考え方を聞いてもらうだけでも、かなり精神的に落ち着いて気持ちが安らかになってきます。
気軽に相談できる親しい恋人や親友
がいればベストですが、そういった個人的付き合いのある相手がいなくてもカウンセラーなどの専門家に頼るという方法もあります。
まとめ
「自傷癖の心理・特徴」について徹底的に解説してきましたが、いかがだったでしょうか?
自傷癖の心理には、「強い自己否定感・心理的苦痛からの逃避」「誰かに助けてもらいたいというクライシスコール」などがあります。
自傷癖がある人の特徴としては、「過去に虐待・いじめの被害に遭って自己肯定感を失っている」などがあります。
「自傷癖の原因・種類」や「自傷癖を克服するための長期的・短期的な改善方法」も解説しているので、自傷癖について詳しく知りたい時にはぜひこの記事を参考にして下さい。
「自傷癖」とは、自分で自分の身体を傷つけてしまう精神病理的な行動・習慣のことです。
自傷癖がある人は過去に深刻なトラウマを受けていたり自己否定感が強かったりすることが多いのですが、自傷癖がある人にはどのような特徴があるのでしょうか?
「自傷癖の心理・原因・種類」と「自傷癖を克服する方法」について解説していきます。
1. 自傷癖とは?
「自傷癖(じしょうへき)」とは、意図的に自分で自分の体を傷つけたり、副作用・毒性のある薬物(毒物)を摂取したりする自己破壊的な行動・習慣のことです。
自傷癖は精神的ストレスが閾値を超えて、「自己否定的な衝動」が高まった時に起こりやすくなります。
更に、自傷癖は精神疾患・精神障害との相関関係が強いことも知られていて、「境界性パーソナリティー障害・双極性障害(躁うつ病)・PTSD・統合失調症・解離性障害」などでも有意に起こりやすいのです。
1-1. 自傷癖の行動・習慣の多様性と精神的に追い詰められてる状態
自傷癖の代表的なものとして、自分でカッターなどで手首を切る「リストカット症候群」が知られていますが、それ以外にも腕を切る「アームカット」、睡眠薬を大量服薬する「OD(オーバードーズ)」、自分で髪の毛を大量に抜く「抜毛癖」、自分の頭を床・壁に叩きつける、自分の指や唇の皮を剥く、異常な過食・拒食と嘔吐などの色々な自傷癖があります。
自傷癖がある人は精神的に追い詰められていて、深い孤独感や無力感に悩み、自分の存在意義が分からなくなっていることが多いのです。
2. 自傷癖の心理
自傷癖を持っている人の心理状態はどのようなものなのでしょうか?自傷癖の代表的な心理について、分かりやすく解説していきます。
2-1. 強い自己否定感・心理的苦痛からの逃避
自傷癖の代表的な心理として、「強い自己否定感・心理的苦痛からの逃避」を上げることができます。
自傷行為を習慣的に行っている人は、ほぼ例外なく「強い自己否定感・自己評価の低さ」があり、自分のことを「他の人と比べて価値のない人間(人生を前向きに頑張ることができない人間)」というように否定的に捉えていることが多いのです。
自己否定感が強いために、他人に対して劣等コンプレックスを感じたり、仕事・社会生活に対して不安を感じたりしやすいのです。
自傷癖に多い心理として、「強い心理的苦痛を感じた時に、自分の体を傷つけることで苦痛を紛らわせる」ということもあります。
他者とのやり取りで嫌なことがあったり、仕事で大きな失敗をして叱られたりした時に、その自己嫌悪の苦痛から逃れるために、リストカットやOD(過量服薬)をしやすくなるのです。
2-2. 誰かに助けてもらいたいというクライシスコール(SOSコール)
「誰かに助けてもらいたいというクライシスコール(SOSコール)」というのが、自傷癖の重要な心理の一つです。
自傷癖を繰り返し行っている人、リストカットやアームカットを頻繁に行ってインターネット上に写真をアップしたり、包帯をぐるぐるに巻いて周囲の家族や恋人・友人に敢えて見せようとしてる人は、「傷ついている自分を誰かに救ってもらいたい」という心理を持っています。
自傷癖というのは一見すると、自分一人で自分を傷つけて苦しんでいる「自己完結的な行動」に見えるのですが、実際には自傷行為をすることによって「精神的に追い詰められている自分に気づいて助けて欲しい」というクライシスコール(SOSコール)の意味合いもあるのです。
2-3. 強い絶望感・自分を消したいという希死念慮
自傷癖の注意すべき深刻な心理として、「強い絶望感・自分を消したいという希死念慮」というものを指摘することができます。
かつては「自傷癖の行動」や「死にたい・消えたいという自己宣言」は、実際の自殺企図・自殺既遂には結びつかないと言われてきましたが、現在の統計的研究では自傷癖のある人や自殺したいと口にしている人は、そうでない人よりも「約50〜100倍以上の自殺リスク」があることが分かっています。
「本当に死にたい人は、死にたいと言わない(自傷癖の行為なんかしない)」というのは、完全に間違った認識なのです。
自傷癖の心理として、自分の人生にはもう生きる意味などないといった「強い絶望感」があり、その絶望感が強まっていくと「この世から消えてしまいたい・自分なんかいないほうがいい」という希死念慮に発展してしまうのです。
希死念慮が具体的な言葉として表現され始めた場合は、周囲の人達の心理的な支えと自殺の警戒が必要になります。
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