道端に咲く小さく可憐なブルーの花。
これは、オオイヌノフグリ。
日本人であればどこかしらで目にしたことのある野草です。
しかし、フグリとは実は睾丸のこと。
その愛らしい見た目と違い、犬の睾丸という不名誉な名前を持つ花なのです。
今回は、オオイヌノフグリのことをご紹介します。
- オオイヌノフグリとはどんな花?
- オオイヌノフグリの花言葉
- オオイヌノフグリについて解説
- オオイヌノフグリのマメ知識
- オオイヌノフグリを育てる時の注意点
- オオイヌノフグリの種類
- オオイヌノフグリに似た植物
- オオイヌノフグリは心のオアシス
1. オオイヌノフグリとはどんな花?
オオイヌノフグリとは、日本であればたいていの道端で見られるかわいらしいブルーのお花です。
1-1. 学術上のオオイヌノフグリ
オオイヌノフグリはオオバコ科クワガタ草属の越年草です。
日本の気候に大変合っており、また生命力も旺盛なため街中のみならず、山野などでも至る所に見られます。
そのため、いわゆる雑草、野草というカテゴリ分けをされています。
また蜂や蝶、ハナアブなど、虫を誘って受粉しますが、自家受粉も可能です。
受粉方法が多彩なため、繁殖力もとても強い草です。
そのため、環境さえ合えばどんどん増えて自生します。
花は1日で落ちてしまいますが、たまに2日に渡って開花する花もあります。
1-2. オオイヌノフグリの特徴
草丈は10センチから20センチほどです。
葉は1センチ〜2センチ程度の小さなもので、長丸方で葉のふちはぎざぎざとした鋸歯があります。
花のサイズは1センチ程度と小さく、花弁も4枚と地味な印象ですが、澄み渡るようなコバルトブルーの発色がなかなか美しい花です。
まれに白い花を咲かせることもあります。
早春に花を咲かせ、春の終わりに一度枯れます。
その後、冬の寒さに備えて細胞内の糖濃度を高めるという機能を備えています。
また葉と茎に映えた短い毛は、保温効果を持ち雪と霜から身を守るための防寒具となります。
2. オオイヌノフグリの花言葉
オオイヌノフグリは、その不名誉な名前と裏腹に素敵な花言葉を持っています。
それは、学名に由来するところが大きいです。
園芸用ではありませんのでオオイヌノフグリを贈る機会はないかもしれませんが、気づけば庭にかわいらしく鎮座しているのがオオイヌノフグリ。
目にした時にはその花言葉を思い出すと、少し気持ちがよくなりますよ。
2-1. 「忠実」
オオイヌノフグリの学名はベロニカと言います。
これはキリスト教における聖女ヴェロニカが由来となっていると言われます。
ヴェロニカはエルサレムの信仰深い敬虔な女性で、自らの磔用の十字を背負ったキリストのそばを共に歩き、その汗をぬぐうためにヴェールを差し出したといいます。
磔刑に処されるキリストとともに歩いたヴェロニカ。
その名を冠するオオイヌノフグリも、「忠実」という名誉ある花言葉を戴いているのです。
2-2. 「信頼」
聖女ヴェロニカは宗教画にもよく登場する題材です。
キリストの汗を拭ったベールには、奇跡が起こったとされているからです。
キリストに差し出したベールは汗をぬぐった後にヴェロニカに返されました。
すると、ヴェロニカのベールには、キリストの顔が浮かび上がったとされます。
このベールは聖顔布と呼ばれ、宗教画や彫刻ではヴェロニカが聖顔布を持った姿で表現されることが多くなりました。
キリストの絶対的な信頼を得たヴェロニカ。
その名を付けられたオオイヌノフグリも、「信頼」の花言葉を授けられました。
2-3. 「清らか」
聖女の名前を冠したオオイヌノフグリ。
これは、オオイヌノフグリがとても身近な存在だからにほかなりません。
道端に常に咲いていて、出しゃばらずに美しい花を咲かせ続けるオオイヌノフグリ。
そのコバルトブルーの清廉な花の色と相まって、清楚で「清らか」なイメージを持ったのでしょう。
3. オオイヌノフグリについて解説
オオイヌノフグリはその繁殖力から世界中に分布する草です。
そのため、世界に目を向ければ通常より美しい雑草という扱いを受けています。
3-1. 英語での呼び名
海外では、学名通りベロニカと呼ばれています。
もともとはVetto-nicaという属名だったものが、変じてベロニカになったと言われているため、実は聖女ベロニカは後付けです。
しかし、ベロニカはヨーロッパでは聖女の特別な名前。
美しいオオイヌノフグリに似た名前がついていたことから、花言葉などはすべて聖女ヴェロニカにちなんだものになっています。
また、オオイヌノフグリの花は青と白のグラデーションになっており、その陰影を見ているとキリストの顔が見えるため、聖顔布を持つ聖女ヴェロニカの名前をつけたという説もあります。
3-2. 原産地
原産国はヨーロッパです。
しかし、その旺盛な繁殖力から現在ではアジア、南北アメリカ、小瀬愛にあ、アフリカなど、広範囲で繁殖しています。
すでに帰化植物として、その土地にしっかり根付いている植物です。
日本では1887年に東京で確認されたという歴史があります。
園芸用など、特別な理由で持ち込まれたわけではないので、ヨーロッパ、あるいはその他オオイヌノフグリが自生している国からの自然輸入と考えられます。
その後は全く手をかけることなく全国に広がり、日本でも帰化植物として認定され現在に至ります。
感覚として、オオイヌノフグリがある日常は当たり前すぎて、1887年以前は日本になかったと思うと不思議な気すらしますね。
3-3. オオイヌノフグリの名前の由来
かわいらしい花、海外の美しい名前からすると、ちょっと残念と言わざるを得ない和名。
その名前は、本来同じオオバコ科クワガタソウ属のイヌノフグリという草が由来しています。
イヌノフグリは細かい毛が密集した種子を付けます。
丸く、二つ並んだ種子に毛が生えている様子から小さな睾丸、犬の睾丸というなんとも不名誉な呼ばれ方をされるようになったのです。
実は、オオイヌノフグリは毛が少ないため、種子はイヌノフグリの印象と異なります。
しかし、イヌノフグリの大型版ということで、その名前が引き継がれてしまったのです。
3-4. オオイヌノフグリが誕生日花の日
オオイヌノフグリが誕生花と指定されているのは2月11日です。
4. オオイヌノフグリのマメ知識
生命力が強く地味なため雑草として扱われますが、身近な美しい花を咲かせるオオイヌノフグリはヨーロッパでも親しまれています。
そのため、海外でも素晴らしい花言葉をたくさん持っています。
また、通称ではありますが和名も美しいものをいくつも持っています。
4-1. 西洋の花言葉
たくさんの国に自生している花、オオイヌノフグリ。
そのため、国ごとに花言葉をいくつも持っています。
国別にご紹介します。
イギリス「忠実・信義・誠・貞淑」「女性の忠節」
フランス「忠実」「女性の忠誠」「私を信じてください」
オランダ「忠実」
ドイツ「忠実」
基本的には日本の花言葉に通じるワードが多いですね。
そもそも、ヨーロッパでは睾丸という猥雑なイメージは全くありません。
純粋に、聖女の名を冠した可憐な花として見られているため、そのような花言葉が多くなっているのです。
4-2. 日本におけるオオイヌノフグリの別名
オオイヌノフグリという和名は庶民に親しまれた名前ですが、オオイヌノフグリはそれ以外にも通称名を持っています。
「瑠璃唐草(ルリカラクサ)」「天人唐草(テンニンカラクサ)」「星の瞳(ホシノヒトミ)」などの名称があったとされています。
そもそもオオイヌノフグリとは種子の形状からの名前。
花だけを見ればとても可憐で美しく、この別名たちの方がしっくりくると言わざるを得ません。
お庭にオオイヌノフグリを発見したら、「今年もまた瑠璃唐草が咲いたな」と思うようにすると素敵ですね。
5. オオイヌノフグリを育てる時の注意点
オオイヌノフグリは園芸用品として流通していません。
繁殖力も強く道に出ればすぐ見られることから、雑草として扱われているからです。
また、花も小さく地味なため、園芸改良種のベースとしても利用されません。
葉も小さく、茎も短いのでグラウンドカバーの用途でも適さないでしょう。
5-1. オオイヌノフグリを自宅で楽しむなら
しかし、春に小さな花をたくさん咲かせるオオイヌノフグリは心和むもの。
忙しく、あまりお庭に手を入れられない時期があるようであれば、どこかからオオイヌノフグリを採ってきて植えておけば自然と緑あふれるお庭になります。
その場合、増え過ぎに注意すること、また隣のお宅にまで進出しないことは気を付けてください。
オオイヌノフグリの見た目を楽しむのは、刈り取りだけが手間と考えてもいいかもしれません。
6. オオイヌノフグリの種類
オオイヌノフグリの属するオオバコ科クワガタソウ属の植物は、繁殖力が強く勝手に増えます。
そのため、様々な気候や環境に対応し、微妙に異なる種類の植物が発生しました。
6-1. イヌノフグリ
オオイヌノフグリの名前の由来となった草です。
花はごく淡いピンク色をしています。
茎は寝るタイプと立つタイプに分かれます。
全体としてとても小さく、オオイヌノフグリの小型種と言える草です。
東アジア原産で、日本古来の在来種です。
かつては外来種のオオイヌノフグリよりもたくさん見られていましたが、オオイヌノフグリに育成地を奪われて数が減少しています。
また、山野の人工的な開発などに伴い自然環境が破壊され、数が減っているという実態もあるようです。
花言葉はオオイヌノフグリと同様、「信頼」「誠実」などです。
6-2. タチイヌノフグリ
オオイヌノフグリ同様、旺盛な繁殖力で自生範囲を広げるため、雑草として扱われています。
ヨーロッパ原産ですが日本をはじめ各国で帰化植物として自生しているのも同じです。
オオイヌノフグリと似た見た目、似た花を付けますが、茎が直立し、高さが出ます。
また、花の形はオオイヌノフグリによく似ていますがサイズが小さく、さらに開花時期が短いため花を見る瞬間は少ない植物です。
花言葉は「隠れた才能を持つ」です。
人目には付きにくいですが、コバルトブルーの美しい花が咲くことからつけられています。
6-3. フラサバソウ
ヨーロッパ原産の外来種です。
明治初期に長崎県で発見され、現在は全国的に自生する帰化植物となりました。
タチイヌノフグリに似た姿と、薄紫のオオイヌノフグリに似た花を付けます。
特徴は葉に生えた毛です。
茎にもたくさんの細かい毛が生えており、これによって越冬すると考えられています。
花言葉は「一見強面」。
びっしりと生えた細かい毛から連想される花言葉です。
6-4. コゴメイヌノフグリ
他のオオイヌノフグリと似た見た目をしていますが、大変小さな白い花を咲かせます。
ここから、小米(コゴメ)イヌノフグリという名前が付けられました。
東京大学院附属植物園の小石川植物園の名物ともなっているコゴメイヌノフグリ。
小さな花ではありますが、群生することにより春に素晴らしい景観を作ります。
花言葉は「慎ましやか」。
小さく清楚な花を咲かせるコゴメイヌノフグリにピッタリの花言葉です。
7. オオイヌノフグリに似た植物
オオイヌノフグリは野草で、似た見た目の花はたくさんあります。
そこで今回は、オオイヌノフグリと科目を同じくする植物をご紹介します。
オオイヌノフグリと違い、観賞用として楽しまれてる花々です。
7-1. キンギョソウ
オオバコ科キンギョソウ属。
同じオオバコ科ですが、まるで金魚のようにひらひらとした花が連なった美しい花です。
そのため、園芸用としても人気があります。
花言葉は「おしゃべり」「でしゃばり」「おせっかい」など。
ひらひらとした花弁が口のようで、パクパク良く動くイメージからこのような花言葉が付けられました。
また、英名ではスナップドラゴンと言います。
これは噛みつきドラゴンという意味で、やはり口のように見える花の形が由来しています。
7-2. ジギタリス
オオバコ科ジギタリス属。
花の形が錘状で、まるで指サックのよう。
そのため、ラテン語の「指」を意味する言葉からジギタリスという名前が付けられました。
別名はフォックス・グロー。
狐の手袋という意味です。
花言葉は「不誠実」。
これは、ギリシャ神話の大神ゼウスの妻、ヘラのサイコロ遊びからついた花言葉です。
ヘラはサイコロ遊びに夢中になるあまり、サイコロを天上から地上へ落としてしまいます。
サイコロ遊びを好ましく思っていなかったゼウスは、ヘラのサイコロをジギタリスの花に変えてしまったということです。
8. オオイヌノフグリは心のオアシス
どんな状況下でも増え、春先に咲き乱れるオオイヌノフグリ。
都会の街路樹の下などのわずかなスペース、または土すら見えていない道路の裂け目からでも伸びてくる生命力は見習いたいとすら思います。
しかし、学名や海外での呼ばれ方はそれは美しいもの。
これからは道端でオオイヌノフグリを見つけた時、聖女ヴェロニカの名前を思い出してあげてくださいね。
道端に咲く小さく可憐なブルーの花。
これは、オオイヌノフグリ。
日本人であればどこかしらで目にしたことのある野草です。
しかし、フグリとは実は睾丸のこと。
その愛らしい見た目と違い、犬の睾丸という不名誉な名前を持つ花なのです。
今回は、オオイヌノフグリのことをご紹介します。
1. オオイヌノフグリとはどんな花?
オオイヌノフグリとは、日本であればたいていの道端で見られるかわいらしいブルーのお花です。
1-1. 学術上のオオイヌノフグリ
オオイヌノフグリはオオバコ科クワガタ草属の越年草です。
日本の気候に大変合っており、また生命力も旺盛なため街中のみならず、山野などでも至る所に見られます。
そのため、いわゆる雑草、野草というカテゴリ分けをされています。
また蜂や蝶、ハナアブなど、虫を誘って受粉しますが、自家受粉も可能です。
受粉方法が多彩なため、繁殖力もとても強い草です。
そのため、環境さえ合えばどんどん増えて自生します。
花は1日で落ちてしまいますが、たまに2日に渡って開花する花もあります。
1-2. オオイヌノフグリの特徴
草丈は10センチから20センチほどです。
葉は1センチ〜2センチ程度の小さなもので、長丸方で葉のふちはぎざぎざとした鋸歯があります。
花のサイズは1センチ程度と小さく、花弁も4枚と地味な印象ですが、澄み渡るようなコバルトブルーの発色がなかなか美しい花です。
まれに白い花を咲かせることもあります。
早春に花を咲かせ、春の終わりに一度枯れます。
その後、冬の寒さに備えて細胞内の糖濃度を高めるという機能を備えています。
また葉と茎に映えた短い毛は、保温効果を持ち雪と霜から身を守るための防寒具となります。
2. オオイヌノフグリの花言葉
オオイヌノフグリは、その不名誉な名前と裏腹に素敵な花言葉を持っています。
それは、学名に由来するところが大きいです。
園芸用ではありませんのでオオイヌノフグリを贈る機会はないかもしれませんが、気づけば庭にかわいらしく鎮座しているのがオオイヌノフグリ。
目にした時にはその花言葉を思い出すと、少し気持ちがよくなりますよ。
2-1. 「忠実」
オオイヌノフグリの学名はベロニカと言います。
これはキリスト教における聖女ヴェロニカが由来となっていると言われます。
ヴェロニカはエルサレムの信仰深い敬虔な女性で、自らの磔用の十字を背負ったキリストのそばを共に歩き、その汗をぬぐうためにヴェールを差し出したといいます。
磔刑に処されるキリストとともに歩いたヴェロニカ。
その名を冠するオオイヌノフグリも、「忠実」という名誉ある花言葉を戴いているのです。
2-2. 「信頼」
聖女ヴェロニカは宗教画にもよく登場する題材です。
キリストの汗を拭ったベールには、奇跡が起こったとされているからです。
キリストに差し出したベールは汗をぬぐった後にヴェロニカに返されました。
すると、ヴェロニカのベールには、キリストの顔が浮かび上がったとされます。
このベールは聖顔布と呼ばれ、宗教画や彫刻ではヴェロニカが聖顔布を持った姿で表現されることが多くなりました。
キリストの絶対的な信頼を得たヴェロニカ。
その名を付けられたオオイヌノフグリも、「信頼」の花言葉を授けられました。
2-3. 「清らか」
聖女の名前を冠したオオイヌノフグリ。
これは、オオイヌノフグリがとても身近な存在だからにほかなりません。
道端に常に咲いていて、出しゃばらずに美しい花を咲かせ続けるオオイヌノフグリ。
そのコバルトブルーの清廉な花の色と相まって、清楚で「清らか」なイメージを持ったのでしょう。
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