杏(あんず)の花をご存知ですか?
杏、英名でアプリコットの実はそのまま食べたり、ドライフルーツやジャム、シロップ漬けなどでご存知でも、花が咲いているところはご覧になったことはないかもしれませんね。
ひょっとしたら、咲いていても杏の花として認識はしていないのではないでしょうか?
杏の花はどんな花なのか、また花言葉や実の効能、育て方や品種についてご紹介致します。
- 杏とはどんな花?
- 杏の花言葉
- 杏についての解説
- 杏を育てる時の注意点
- 杏の種類
- 杏に似た花
- まとめ
1. 杏とはどんな花?
杏の花は、春先に咲く薄いピンクや白の花です。
木に咲き、梅やちょっと桜の花にも似ている、とても可愛らしい花です。
花が終わると黄色やオレンジ色の実をつけますが、実の方が有名かもしれません。
また、実の使い方も食べるだけではなく色々ですが、実の中にある種も様々なことに利用されています。
2. 杏の花言葉
花言葉は、見た目の感じからつけられる場合と、そのものの持つ性質からつけられる場合、また、名前の由来などからのイメージからつけられる場合などがありますが杏はどうでしょうか?杏の花言葉をいくつかご紹介します。
2-1. 「乙女のはにかみ」
桜よりも早い時期に、薄いピンクの花を恥ずかしそうに咲かせることからの連想ではないでしょうか。
それほど可憐な花姿です。
2-2. 「臆病な愛」「遠慮」
これも、そっと咲くイメージから連想されたのでしょう。
花びらも薄く小さく、いかにもそっと咲いているように見えます。
2-3. 「疑い」「疑惑」
これは、中国の古事からという説があります。
「李下に冠を正さず」ということわざをご存知でしょうか?
李の木の下で冠を直すと、実を盗み取っているように見えることから“実際していなくても、疑いをもたれるような行動は慎みなさい”という意味です。
この“李”はすもものことなのですが、よく似ているため混同したのではないかと言われています。
3. 杏についての解説
杏は杏子とも書き、バラ科サクラ属に属する中程度の高さの落葉樹です。
日本には奈良時代以前に渡来し、最初は薬として、後の鎌倉時代には花や実を楽しむために栽培されていたようで、日本では昔から親しまれてきました。
また、北海道北部をのぞきほぼ全国で育ち、実を結びます。
花期は3〜4月で梅よりも遅く、桜よりも若干早く咲き、6月頃から7月まで黄色やオレンジ色の実をつけます。
花よりも実の方が親しまれていますが、実の足が早いため、生食よりはジャムやドライフルーツなど加工されることが多い果物です。
また種も利用できます。
種の中身は杏仁といい、おなじみの杏仁豆腐の原料です。
3-1. 杏の別名
杏は中国から渡来したことから、唐桃(からもも)と呼ばれることもあります。
英名はアプリコットブロッサム(Apricot blossom)です。
アプリコットとは“日当たりの良いところで早く熟す”という意味があり、ラテン語のアプリカスが語源です。
またブロッサムとはチェリーブロッサムを代表とする、木に咲く花のことです。
3-2. 原産地
ヒマラヤ西武から中国にかけてが原産地です。
日本には奈良時代より前に渡来したと言われています。
どちらかというと冷涼で乾燥した土地を好みます。
3-3. 杏の名前の由来
原産地の中国では“杏”は木のこと、“子”は実のことを表します。
この“杏子”の中国名をそのまま日本で“あんず”と呼んで定着したという説が有力です。
また果実が甘酸っぱい味だったことから“甘酢梅”が変化して“あんず”となったという説もあります。
3-4. 杏のお酒
杏はジャムなどの他、梅酒のように杏の実を使ったお酒も親しまれています。
名前は「杏露酒(しんるちゅう)」といい、オレンジ色のお酒です。
杏の露というネーミングも可愛らしいですよね。
フルーティーで甘酸っぱい味のお酒で、カクテルなどでも楽しめます。
梅酒を作る際にも何粒か加えると、香りの良い梅酒が出来ます。
またアマレットというリキュールも杏の種を使ったお酒です。
アーモンドの香りのするリキュールですが、これは杏の種がアーモンドに似ているせいです。
杏の種の核(杏仁)を使って作っています。
3-5. 杏の効能
杏の果肉にはβカロテンが多く含まれています。
干したものであればさらに含有量は多くなり、フルーツとしては1位となります。
βカロテンは体内でビタミンAに変わり、その強い抗酸化作用でアンチエイジングに効果があり、脳卒中や心筋梗塞にも効果があります。
カリウムも含むため、高血圧にも良いとされます。
またクエン酸やリンゴ酸は疲労回復を促進します。
血行を良くする効果もありますので冷え性にも良いのです。
栄養的にもすごい力がありますね。
3-6. 杏のその他の使い道
杏には他にも使い道があります。
杏の種の核である「杏仁」は、杏仁豆腐やリキュールの材料となることはすでにご紹介しましたが、漢方薬としても使われています。
漢方薬としては“きょうにん”と呼び、成分は“アミグダリン”です。
嘔吐を治め、また咳を鎮めたり痰を切るのに良いとされます。
漢方処方としても使われます。
但し使い方によっては、毒性もありますので専門家の指導の下でお使い下さい。
3-7. 杏のマメ知識
ご紹介した様に、栄養的に薬効があり薬としても使われていた杏は医学とも関係が深いという故事があります。
古代中国の医者で薫奉(とうほう)という人が、患者を治しても貧乏人からは治療費を取らずに、治癒の記念に杏の木を植えさせ、それがいつの間にか杏の林となったというお話です。
ここから杏の林-杏林(きょうりん)は医者という意味になったそうです。
有名大学の名前にもありますね。
3-8. 杏の誕生日花の日
2月23日・4月12日・10月2日の誕生日花と言われます。
4. 杏を育てる時の注意点
梅やスモモに近い木になりますので、どちらかと言えば花よりも実が目的で育てられることが多いと思いますが、花も桜のように楽しむことが出来ます。
またほとんど日本の全域で見られる木であり、栽培はそんなに難しいことはありませんが、放っておくと大きく育ってしまいますので、その点には注意が必要です。
ここではご家庭で楽しむ際の具体的な注意点などをご紹介します。
4-1. 日当たり・水はけなど
どちらかと言えば冷涼で乾燥した場所を好みます。
日当たりが良い水はけの良い場所に植えるのが良いでしょう。
土は軽く酸性に調整して下さい。
庭に直植えにする場合は、ある程度は大きくなりますので、場所の確保が必要です。
また大きく育てなければ、鉢植えでも育てることが可能です。
4-2. 植え付け時期
園芸店などで苗を手に入れることが出来ます。
苗は葉が落ちている時期(落葉期)の12〜3月に行います。
接ぎ木の部分に土が被らないように植え付けましょう。
植え付け後は倒れるのを防ぐために支柱を立てて支えます。
直後には根付くまで、水はたっぷりあげて下さい。
4-3. 水やりと肥料
どちらかと言えば乾燥を好むので、根付いたら水やりは頻繁にする必要はありません。
直植えではよほど日照りが続かない限りは、ほぼ不要です。
鉢植えの場合は土が乾ききったらたっぷりとあげて下さい。
肥料は花の後に施すと実つきが違ってきます。
実の後にも翌年のために施すと良いでしょう。
4-4. 剪定など
剪定は葉が落ちてから行います。
伸びすぎた枝や途中から出てきた枝を、間引いて風通しを良くするイメージで剪定します。
また、ご家庭での栽培では大きくなりすぎないように、高さも適当な大きさに留めておくように剪定した方が良いと思います。
4-5. 実を取るために
可能であれば、梅や桃などと一種に植えると受粉に良いのですが、単体でも自然にしておけば大体は実がなります。
但し、確実に実をつけさせたいのであれば、花が咲いて花粉を確認したら雌しべに筆で受粉させるのが良いでしょう。
その後実がついてきたら、適当な間を開けてまんべんない割合で小さい実を取ってしまって下さい。
あまり実を多く残しておくと栄養が分散してしまいます。
また、苗木から育てた場合には実をつけるまで3〜4年はかかります。
気長に育てましょう。
4-6. 病気や害虫
黒星病は果実の表面に黒い斑点が出来る病気です。
雨の多い記事になりやすいので、早めに殺菌剤で予防すると良いでしょう。
またアブラムシは春先につきますが殺虫剤で退治します。
また木の幹に木くずのようなものが出てきていたら、コスカシバの幼虫が幹の中にいる可能性があります。
殺虫剤を使用したり皮を削り取って駆除しましょう。
その他の虫も付くことがあります。
最近は温暖化の影響もあるようで、無農薬で育てるのはなかなか難しいようです。
5. 杏の種類
花も美しく、果実が実る割にはご家庭でも簡単に育てることができる杏は、園芸品種として様々な品種が改良・交配によって生み出され流通しています。
実の種類によって生食に適していたり、加工に適していたりしますのでご希望に合わせて選んで下さい。
5-1. 信月
糖度は10%くらいと中程度ですが、味が良いため生食用として栽培されることが多いようです。
大きめのオレンジ色の実で見た目が良く、果肉も同色です。
実の熟期は7月頃の晩成種です。
5-2. 信州大実
糖度は10%くらいと中程度で苦みが無く香りが良いため、生食用として栽培されることが多いようです。
果実の色は濃いオレンジ色で美しく、果肉の色も良いためシロップ漬けにも加工されます。
熟期は7月中旬です。
5-3. 新潟大実(昭和)
比較的結実が容易なため、家庭用として栽培されることが多いようです。
糖度は中程度ですが酸味が強いため生食には向きません。
ジャムなどで楽しむのが良いでしょう。
熟期は6月中〜下旬です。
5-4. ゴールドコット
アメリカ原産です。
糖度が15%と高く食感も良いため生食向きの品種です。
果実の色は黄色ですが果肉は心持ち濃い色で大きさは小ぶりです。
7月中旬が熟期です。
5-5. ハーコット
カナダ原産です。
糖度が15%以上と高く、味も良いので生食用として栽培されます。
果実はオレンジ色で美しく実は大きめです。
7月上〜中旬が熟期です。
5-6. 幸福丸
糖度は15%程度と高く味が良いため生食用として栽培されます。
果実はオレンジ色で中程度の大きさ。
欧州系の杏からの改良種で6月が熟期です。
5-7. 平和
日本原産で酸味が強く主に加工用として栽培されている品種です。
中程度の大きさで、大正時代に発見されました。
この名前は、第一次世界大戦が終わったことを記念し付けられました。
5-8. 山形3号
日本原産で甘みはあるのですが、酸味も強いためにジャムやドライフルーツ用に栽培されています。
丸く中くらいの果実です。
6. 杏に似た花
「桜梅桃李」という四字熟語をご存知ですか?
似たようでいて別の花を咲かせることのたとえなのですが、この花々は全部杏に似ています。
それもそのはずで、5つともバラ科サクラ属の仲間で、春によく似た花を咲かせ、実がなるところも同じです。
6-1. 桜
桜は日本を代表する花ですから、パッと見てわかる方がほとんどではないでしょうか?
花の元の部分がちょっと長めで、枝の先にまとまって咲くために、桜だけは花のつき方で分かりやすいと思います。
花言葉は「純潔」「美人」「優美」などがあります。
6-2. 梅
これも日本では、桜の次によく見る花でしょう。
枝に直接花が並んでつきます。
花は可愛らしく可憐です。
花びらは丸いのが特徴です。
花言葉は「高潔」「上品」「忠実」などですが何となく日本人の美徳を表しているような気がしますね。
6-3. 桃
梅と似て枝に直接花がついているように見えますが、左右にセットで花がつきます。
また花びらの先も丸くないので、梅との違いは見分けられます。
「私はあなたのとりこ」「天下無敵」などの花言葉があります。
梅の次に咲きはじめ桃の節句に飾ります。
6-4. 李(すもも)
花のつきかたなどは桃に似ていますが、花弁が白いので見分けは付きやすいかもしれません。
また一つの花柄に複数の花がつきます。
花言葉は「誠意」「誠実」「幸福な日々」などです。
まとめ
杏の花について色々とご紹介してきましたが、いかがでしたか?
古くから日本にある花で、桜梅桃李の仲間です。
花はもちろん、ご家庭でも実を楽しむことが出来、育てやすい花木でもあります。
また、果実は生食のほか、ジャムやドライフルーツにしたり、果実酒にして楽しむことが出来ます。
実をつけられるようになるまでは、時間がかかりますがそれを楽しみに育てるのも醍醐味ではないでしょうか?
庭に直植えの他に鉢植えでも大丈夫ですので、ぜひ挑戦してみて下さい。
5年後には杏酒を楽しめるようになるかもしれません。
杏(あんず)の花をご存知ですか?
杏、英名でアプリコットの実はそのまま食べたり、ドライフルーツやジャム、シロップ漬けなどでご存知でも、花が咲いているところはご覧になったことはないかもしれませんね。
ひょっとしたら、咲いていても杏の花として認識はしていないのではないでしょうか?
杏の花はどんな花なのか、また花言葉や実の効能、育て方や品種についてご紹介致します。
1. 杏とはどんな花?
杏の花は、春先に咲く薄いピンクや白の花です。
木に咲き、梅やちょっと桜の花にも似ている、とても可愛らしい花です。
花が終わると黄色やオレンジ色の実をつけますが、実の方が有名かもしれません。
また、実の使い方も食べるだけではなく色々ですが、実の中にある種も様々なことに利用されています。
2. 杏の花言葉
花言葉は、見た目の感じからつけられる場合と、そのものの持つ性質からつけられる場合、また、名前の由来などからのイメージからつけられる場合などがありますが杏はどうでしょうか?杏の花言葉をいくつかご紹介します。
2-1. 「乙女のはにかみ」
桜よりも早い時期に、薄いピンクの花を恥ずかしそうに咲かせることからの連想ではないでしょうか。
それほど可憐な花姿です。
2-2. 「臆病な愛」「遠慮」
これも、そっと咲くイメージから連想されたのでしょう。
花びらも薄く小さく、いかにもそっと咲いているように見えます。
2-3. 「疑い」「疑惑」
これは、中国の古事からという説があります。
「李下に冠を正さず」ということわざをご存知でしょうか?
李の木の下で冠を直すと、実を盗み取っているように見えることから“実際していなくても、疑いをもたれるような行動は慎みなさい”という意味です。
この“李”はすもものことなのですが、よく似ているため混同したのではないかと言われています。
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