香り高く、美しい花と言えばどんな花を想像するでしょうか。
バラやユリ、ウメなど、良い芳香を放つ花は多数あれど、大変古くから「香木」として尊ばれてきたジンチョウゲを挙げないわけにはいきません。
室町時代にはその栽培が確認されているジンチョウゲ。
日本三大香木とも呼ばれたその香りは、日本古来の芸道でも珍重されていた歴史を持っています。
また、そのように高貴な出自があるにも関わらず、育てやすく栽培しやすいのもジンチョウゲの魅力です。
今回は、甘くかぐわしい香りのジンチョウゲをご紹介します。
- ジンチョウゲとはどんな花?
- ジンチョウゲの花言葉
- ジンチョウゲについての解説
- ジンチョウゲを育てる時の注意点
- ジンチョウゲの種類
- ジンチョウゲに似た花
- まとめ
1. ジンチョウゲとはどんな花?
ジンチョウゲは、ジンチョウゲ科ジンチョウゲ属の常緑の木です。
チンチョウゲと呼ばれることもあります。
学術上花は持たず、アジサイのようにがくが色づいて花弁のように見える植物ですが、以下の文では花として扱います。
一般的な種は白い肉厚な白い花に外側が紅紫の美しい花をつけ、20ほどの小さな花がアジサイのように丸く手まり型に咲くのが特徴的です。
樹高は1メートルほどの低木です。
開花時期は2月下旬から4月中旬程度の春咲きの花で、短歌や俳句の世界では春の季語とされています。
大変良い香りをさせるのが最大の特徴で、そのクローブのような甘い香りは100種類以上もの香り成分が入っています。
2. ジンチョウゲの花言葉
ジンチョウゲは大変華々しい花言葉を持っています。
しかしその由来は、実はほかの植物に似ているからという理由でした。
またジンチョウゲは木ですので、ほかの花と比べて寿命も長く、大切に育てれば何年でも花を咲かせ続けます。
そこから取られた縁起のいい花言葉も持っています。
2-1. 「栄光」
この花言葉は、実は植物としてはゲッケイジュのものです。
しかし、ジンチョウゲの葉がゲッケイジュに似ていることから、花言葉を共有することになったようです。
ゲッケイジュが「栄光」という花言葉を持つようになった理由は、ローマの神話までさかのぼります。
ローマ神話の主神であるユピテルは、ゲッケイジュを自らの木と定めていました。
それをふまえ、古代ローマの将軍は、戦争で勝利した際にゲッケイジュの枝をユピテルに納めることが慣例となっていました。
そのことから、ゲッケイジュには勝利のもたらす「栄光」という花言葉が付けられたのです。
2-2. 「不死」「不滅」「永遠」
ジンチョウゲの常緑である習性から、枯れずにいつも生き生きとしているということでこのような花言葉が付けられています。
また、後述する英名の「Daphne odora」の由来となったギリシャ神話も、この一連の花言葉の元であると言われています。
3. ジンチョウゲについての解説
ジンチョウゲはそのかぐわしい香りから、華やかな英名を持っています。
ギリシャ神話の神から愛された妖精の名です。
また、原産地は中国ですが、日本で大切に栽培され広く分布するまでになりました。
それも香りのためであり、さらに言えば日本人が愛したある芸道に由来するものです。
3-1. 英語での呼び名
ジンチョウゲの英名はDaphne odora、ダフネ・オドラ、あるいはWinter daphne、ウィンター・ダフネと言います。
これはギリシャ神話に由来しています。
太陽神アポロンがダフネという森の妖精に恋をしました。
しかし、ダフネはアポロンの愛を受け入れる気はなく、求愛するアポロンから逃げ回ります。
ゼウスは、ダフネがアポロンに追い回されているのを見て哀れに思い、ダフネをジンチョウゲの花に変えてあげました。
ダフネはその後、アポロンに付きまとわれることなく、ジンチョウゲの花として美しく優雅に咲き続けることができているというエピソードです。
これは、花言葉の「永遠」にも通じる逸話となっています。
3-2. 原産地
原産地は中国南部やヒマラヤ地方です。
そのため漢名があり、瑞香と書きます。
別名としては輪丁花と書かれる場合もあります。
室町時代以前に日本に渡り、観賞用植物として盛んに栽培されるようになりました。
その理由は、美しい花の色と咲き方、そして上品な甘い香りです。
また、花を煎じたものは歯痛や口内炎の薬として民間で使用されてきましたが、果実は有毒です。
ただし、日本で栽培される株は実がならないことがほとんどです。
そのため毒に関してはあまり気にする必要はないと言えます。
3-3. ジンチョウゲのマメ知識
ジンチョウゲは、日本において「三大香木」と呼ばれています。
ジンチョウゲのほかにはキンモクセイ、クチナシが三大香木として数えられている花です。
それぞれ開花時期になぞらえて呼ばれ、夏のクチナシ、秋のキンモクセイ、そして春先に咲くジンチョウゲは春のジンチョウゲと呼ばれます。
日本で香木が盛んに栽培される理由のひとつは、「香道」という文化があったからです。
書道や剣道のように、香りの道と書いて香道。
古く平安時代の貴族たちは、香りを観賞し、その香りを当てたり組み合わせてより良い香りを作るという遊びが流行していました。
それが鎌倉時代以降、武士の世界に広まり、また禅の考え方もミックスされるなどして室町時代に香道として定着したのです。
香を焚いて香りを出すのではなく、熱した雲母の板の上に薄い香木を乗せ、その熱された香木が放つ香りを当てるという大変雅な芸道です。
礼儀作法や立ち居振る舞いなども重要視される格式高い香道では、当然香木そのものにも感謝の意を込め、大切に扱います。
ジンチョウゲを含む三大香木も、きっとその昔から丁重に扱われてきたことでしょう。
3-4. ジンチョウゲの名前の由来
香りの良い木の有名なものとして、沈香と白檀があります。
ジンチョウゲには類い稀なる芳香があり、その香りが丁子、クローブのように良く香るといわれ、沈香の字と丁子の字を掛け合わせ沈丁花という名前で呼ばれるようになりました。
なお、白檀はビャクダン科の植物ですが、沈香はジンチョウゲと同じくジンチョウゲ科の植物。
沈香は花の付け方もジンチョウゲに似ているため、その名を借りたものと思われます。
なお、三大香木としてクレジットされている場合、その香りがとても遠くまで届くという意味で千里香と呼ばれることもあります。
3-5. ジンチョウゲが誕生日花の日
ジンチョウゲが誕生花とされている日はいくつかあります。
2月10日、2月23日、12月15日などです。
また、1月16日もジンチョウゲが誕生花であるという説もあります。
なお、ジンチョウゲは実はオスメスのある植物で、日本で売られているものはほぼ雄木。
そのため、ジンチョウゲを見たら男性の花だと言っても過言ではありません。
誕生日に良い香りのするジンチョウゲを一凛贈るという行為は、なんだか少し意味深ですね。
4. ジンチョウゲを育てる時の注意点
ジンチョウゲは樹木であり、一度根付いてしまえば何年も花を咲かせます。
しかし、大きくなりすぎると枯れてしまうことがあり、それを避けるためには栽培はじめに良い環境を整えてあげることが必須です。
また、耐寒性は-5度程度なので、東北以北で山間などの寒い地域は戸外で育てることはできません。
鉢植えも好む植物ではないので、あたたかい地方でのみ育てることができると言えます。
4-1. 日当たりや環境
西日や直射日光の当たらない半日陰がベストポジションです。
しかし完全な日陰では花が咲きにくくなるため注意が必要です。
植え付けの際は購入した苗木の根を切らず、そのまま植えます。
根が切れると株そのものが弱って枯れてしまうことが多いため、植え付ける時は注意します。
これが、鉢植えに向かない理由でもあります。
水はけと水もちの良い弱酸性の土壌を好むため、用土はそのように調整する必要があります。
4-2. 水やりや肥料
根はあまり深く伸びるわけではありません。
そのため、水分の吸収が悪く、極端に乾燥した環境では弱ってしまう傾向があります。
新芽の育つ春咲き、また乾燥しやすい夏には、木の根元が乾いた時に十分に水を与えます。
秋と冬には特に水やりする必要はあいません。
肥料は花後に与えます。
時期の目安としては4月中旬〜下旬くらいです。
また、9月くらいにも緩効性の肥料を与えるようにします。
寒肥は有機質の肥料を1月〜2月くらいに施します。
4-3. 気を付けたい病害虫
かかりやすい病気としては、白紋羽病とウイルス病が挙げられます。
白紋羽病は気が付いた時には葉が黄色くなり、小さく縮れてしまい枯れてしまう病気です。
根に菌が付いて起こる病気ですが、葉が黄色いかなと思ったころにはすでに株全体が侵され、回復不能になっていることもままあります。
連作を嫌う性格のため、一度ジンチョウゲを育てていた庭でまたジンチョウゲを育てる時には十分に場所を離すなどすると予防することができます。
また、剪定も株を弱らせ病気にかかる原因となるので、ほどほどにします。
害虫に関しては、致命傷を与えるような特別な虫はつきません。
春〜夏ごろにかけ、アブラムシとハマキムシが発生することがあります。
どちらも新芽を委縮させたり、葉を食害したりとするため見つけ次第捕殺するようにしてください。
なお、アブラムシはウイルス病を媒介することがあるため、特に念入りな駆除を行ってください。
4-4. その他必要な作業
葉はナチュラルに半球状となり、基本的に剪定の必要はありません。
むしろ剪定により株が弱ってしまうことが多く、あまり手を入れない方がいい樹木と言えます。
自然任せの樹形になってしまうことが嫌なら、花後、新芽を切る程度に剪定を行いましょう。
なお、実をつけることはめったにありませんが、たまに結実してしまうことがあるようです。
その場合、有毒ですのでペットの誤食などには十分注意するようにしてください。
5. ジンチョウゲの種類
ジンチョウゲは観賞用植物としての歴史が古い割に、種類は多くありません。
ベースとなるのは4種類ほどで、その園芸品種が少々あります。
5-1. シロバナジンチョウゲ
ジンチョウゲが白ベースでふちに紅紫の色を持った花を咲かせるのに対し、シロバナジンチョウゲは真っ白な花を咲かせます。
5-2. フクリンジンチョウゲ
フクリンジンチョウゲは葉に特色のあるジンチョウゲです。
緑の葉の周りを、ぐるりと縁取るように黄色が発色しています。
そのため、覆輪のあるジンチョウゲということでその名が付きました。
5-3. ウスイロジンチョウゲ
花の色が淡い桃色をしているジンチョウゲです。
別名をモモイロジンチョウゲとも呼びます。
その淡い色合いと春先に咲く縁起の良さは、園芸品種として高い人気を誇っています。
5-4. 前島
フクリンジンチョウゲのように葉のふちに黄色い覆輪が入りますが、その覆輪がより幅広で、くっきりとした園芸用品種です。
花も美しく香りもいいですが、常緑であるため葉を最大限に楽しむ品種と言えます。
6. ジンチョウゲに似た花
ジンチョウゲ科の植物は生命力が旺盛で、山に自生している種も多く存在します。
見た目はかなり近いのですが、その色や植生などはジンチョウゲと少々異なることが大半です。
6-1. ナツボウズ
ジンチョウゲ科ジンチョウゲ属の有毒植物です。
別名オニシバリとも呼ばれており、またキイロジンチョウゲとも呼ばれます。
ナツボウズは落葉樹ですが、夏に葉が落ちるという一風変わった習性で夏に坊主になるという名前を持ちます。
また、その樹皮が大変堅く、強健な鬼をも縛ることができるということでオニシバリとも呼ばれるようになりました。
花言葉は「変わり者」。
皆が生き生きと芽生え育つ盛夏に葉を落とすことからつけられた花言葉です。
6-2. コショウノキ
ジンチョウゲ科ジンチョウゲ属、花は白くジンチョウゲにとても良く似ていますが、果実がコショウのように辛いことからその名が付けられました。
山野でよく見かける野草です。
花言葉は「熱中」。
なお、コショウノキと称する場合、青文字というクスノキ科ハマビワ属の植物のことを指している場合もあります。
まとめ
ジンチョウゲは贈り物にも最適です。
そのアジサイのような見事な花つきと、白や桃色の美しい色合い、そして何よりかぐわしい香りは、贈られた側も喜ばずには居られないでしょう。
更に、花言葉としても「不死」「不滅」などの意味は不老不死や長寿につながります。
小さな品種を盆栽のように仕立て、ご年配の方へ贈ると大変縁起のいいギフトになります。
開花時期としては初春から春ですが、その美しい緑は一年通して青々と茂っています。
正に朽ちることのない生命力にあやかり、誕生日はもとより、敬老の日などの贈り物にも良いですね。
香り高く、美しい花と言えばどんな花を想像するでしょうか。
バラやユリ、ウメなど、良い芳香を放つ花は多数あれど、大変古くから「香木」として尊ばれてきたジンチョウゲを挙げないわけにはいきません。
室町時代にはその栽培が確認されているジンチョウゲ。
日本三大香木とも呼ばれたその香りは、日本古来の芸道でも珍重されていた歴史を持っています。
また、そのように高貴な出自があるにも関わらず、育てやすく栽培しやすいのもジンチョウゲの魅力です。
今回は、甘くかぐわしい香りのジンチョウゲをご紹介します。
1. ジンチョウゲとはどんな花?
ジンチョウゲは、ジンチョウゲ科ジンチョウゲ属の常緑の木です。
チンチョウゲと呼ばれることもあります。
学術上花は持たず、アジサイのようにがくが色づいて花弁のように見える植物ですが、以下の文では花として扱います。
一般的な種は白い肉厚な白い花に外側が紅紫の美しい花をつけ、20ほどの小さな花がアジサイのように丸く手まり型に咲くのが特徴的です。
樹高は1メートルほどの低木です。
開花時期は2月下旬から4月中旬程度の春咲きの花で、短歌や俳句の世界では春の季語とされています。
大変良い香りをさせるのが最大の特徴で、そのクローブのような甘い香りは100種類以上もの香り成分が入っています。
2. ジンチョウゲの花言葉
ジンチョウゲは大変華々しい花言葉を持っています。
しかしその由来は、実はほかの植物に似ているからという理由でした。
またジンチョウゲは木ですので、ほかの花と比べて寿命も長く、大切に育てれば何年でも花を咲かせ続けます。
そこから取られた縁起のいい花言葉も持っています。
2-1. 「栄光」
この花言葉は、実は植物としてはゲッケイジュのものです。
しかし、ジンチョウゲの葉がゲッケイジュに似ていることから、花言葉を共有することになったようです。
ゲッケイジュが「栄光」という花言葉を持つようになった理由は、ローマの神話までさかのぼります。
ローマ神話の主神であるユピテルは、ゲッケイジュを自らの木と定めていました。
それをふまえ、古代ローマの将軍は、戦争で勝利した際にゲッケイジュの枝をユピテルに納めることが慣例となっていました。
そのことから、ゲッケイジュには勝利のもたらす「栄光」という花言葉が付けられたのです。
2-2. 「不死」「不滅」「永遠」
ジンチョウゲの常緑である習性から、枯れずにいつも生き生きとしているということでこのような花言葉が付けられています。
また、後述する英名の「Daphne odora」の由来となったギリシャ神話も、この一連の花言葉の元であると言われています。
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