柳と言えば、風に揺れる無数の葉や枝の情景を思い浮かべます。
中には「幽霊が出るところ」と、あまり良いイメージを持たない人もいるでしょう。
しかし柳は昔から風に揺れる様が風流として、親しまれている植物です。
柳の花言葉と様々な逸話について紹介します。
- 柳とはどんな花?
- 柳の花言葉
- 柳の名所
- 柳の名前の由来
- 柳の見ごろ時期
- 柳の種類(原種、園芸品種(似た花の花言葉)
- まとめ
1. 柳とはどんな花?
柳は「ヤナギ科 ヤナギ属」の植物で、落葉樹です。
原産地は中国で、奈良時代に日本に伝わってきたと言われています。
日本で柳というと「しだれ柳」を意味しすますが、ヤナギ属の品種は300種類以上もあり、中には葉が下に垂れ下がっていないものもあります。
木の高さは大きなもので20メートル近くになり、細く長い柄に多くの細い葉っぱを付けて、風が吹くと音を立てます。
葉っぱでお馴染みですが、春~初夏にかけて花を咲かせます。
形は円柱状で、黄色い小さな花の集まりですが、花びらはなく綿毛の様な穂に見えます。
花は咲き終わると落下します。
2. 柳の花言葉
日本では殆どが「しだれ柳」で、花言葉も全ての柳に共通して「しだれ柳」の意味が使われます。
2-1. 「従順」
これは、柳の葉が風に逆らわず、吹かれるがまま揺れる様子に由来しています。
2-2. 「自由」
風に吹かれて漂う様子が、自由で伸び伸びしていることに由来しています。
「従順」で「自由」というと矛盾している様に思えますが、それだけ要領が良いと考えられます。
2-3. 「悲哀」
この花言葉には、幾つもの物語があります。
旧約聖書から
西洋では「死者への哀悼」「憂うつ」を意味します。
これは、木の様子ではなく、旧約聖書に因んだ花言葉です。
旧約聖書の詩編には次の様な描写があります。
捕虜になったユダヤの女性達に、敵が「故郷シオンの歌を歌え」と強要します。
しかし女性達はバビロン川のほとりに座り、故郷を思って涙を流しました。
そして岸辺に生えている柳の木に自分の琴をかけて、歌うことを拒んだのです。
しだれ柳の学術名は「サリックス バビロニカ」で、ここから由来しているのです。
ギリシャ神話から
パエトンは、太陽神アポロンと妖精クリュメネーとの間に生まれた子供でした。
アポロンは、毎日決まった時刻に、馬に引かれた太陽の二輪車を走らせて天を駆け抜けていました。
これにより地上の全てのものが太陽の恩恵をこうむっていたので、とても重要な仕事だったのです。
パエトンはアポロンに会ったことはなく、ある日友人から「お前は本当にアポロンの息子なのか」と疑われてしまいます。
そこでパエトンは一人でアポロンに会いにオリンポスの山頂にある神々の宮殿に出掛けます。
そこは神しか入れない場所でしたが、アポロンはパエトンに会い、「本当に自分の息子だ、その証拠にお前の望みを叶えてあげるから、何でも言ってごらん」と言ってくれます。
パエトンは、そこでアポロンに「あの太陽の二輪車を操縦させて下さい」と頼みます。
アポロンはしまったと思い「それはできない」と言いましたが、パエトンが「神様はウソをつかないんでしょう?」と言われてしまい、渋々と二輪車を貸し出します。
アポロンはパエトンに二輪車の操縦の仕方を教えますが、パエトンは嬉しくてすっかり聞き流してしまいました。
早速二輪車に乗ったパエトンは、友達に見せつけようと地上近くを走ろうとしました。
ところが、いつもより軽い乗り手と下手な手綱さばきに、馬たちはいう事をきかずに勝手に走り始めてしまいます。
地上に近づくと大地は暑く火事になり、天も焦がして走り続けました。
このまま二輪車を走らせていると、世界中が焼けつくされてしまうと思った大神ゼウスは、パエトンの二輪車に雷を落して破壊しました。
パエトンはそのまま命を落としますが、アポロンが悲しんで彼を柳の木に変えました。
柳の枝はパエトンが後悔して泣いている様子を表し、木の下には涙による湿気が滞っていると言われています。
日本の怪伝説
長野県と富山県の境にある黒部地方には、「夫婦柳」という伝説があります。
山奥の谷に二本の柳の木があり、村人たちに「夫婦柳」と呼ばれていました。
或る日片方の柳を伐採することになり、総勢16人のきこりが集まって切り倒しました。
ところがその直後、一人、また一人と気分が悪くなったのです。
山小屋で休んでいると、どこからともなく一人の女が現れて、不気味な笑みを浮かべながら寝ている木こりたちの上を通り過ぎ、姿を消しました。
その後木こり達は16人全員が命を落としてしまったのです。
これは夫婦柳のたたりであるとして、この谷を「16人谷」と名付けて、柳に悲しい花言葉を付けたと言われています。
3. 柳の名所
柳は非常に風情があることから、全国各地に観光名所があります。
主な柳の名所を紹介します。
3-1. 「見返り柳」東京都台東区
見返り柳は、土手通りの吉原大門交差点にひっそりと立つ柳の木です。
土手通りは、かつては吉原に続く道で、大勢の男性客達が行き来しました。
吉原遊郭で遊んだ男性客が、帰り際吉原大門を出る時に、この柳の下で楽しかったひとときを思い、後ろ髪を引かれる思いで遊郭を振り返ったことから「見返り柳」と呼ばれる様になりました。
現在では道路の区画整備が進み、場所も移されたり植え替えられたりしています。
通りの側にひっそりと佇んでいて、非常に小ぶりの柳となっています。
3-2. 「白川沿いの柳並木」京都東山区
京都の東山区に、白川沿いに柳が植えられていて、風情豊かな散歩道として有名な場所があります。
特に5月~7月にかけては柳の葉の緑色と、青い空のコントラストが美しいと評判です。
中でも人気のスポットは、「白川の一本橋」で、人が一人やっと通れる位の狭い幅の橋です。
こちらは一本橋の他に「行者橋・阿闍梨橋・古川町橋・たぬき橋」と様々な呼び名があります。
元々比叡山の修行僧が、千日回峰行が終ったことを報告する為に京都の町に来る時に渡る橋であったことから名づけられました。
よく映画やドラマの撮影に使われているので、知っている人もいるでしょう。
柳と一本橋の光景は特に日本らしさがあり、インスタ映えがすると多くの観光客が訪れています。
現在では一本橋周辺にはベンチも設置されていて、ゆっくりと柳と橋の風景を楽しめる様になっています。
3-3. 「遊行柳」栃木県那須町
奥州街道の宿場町として栄えた那須町には、「遊行柳」があります。
これは、室町時代に遊行上人という僧がこの地を訪れて、柳の精を成仏させたことに由来しています。
この物語は昔から能楽にも取り上げられています。
また、松尾芭蕉が訪れたことでも知られていて、名作「奥の細道」にも描写されています。
柳の側には芭蕉の碑が建てられています。
3-4. 「天女の衣掛柳」滋賀県長浜市
滋賀県では最大の柳の木で、天女伝説があります。
昔、余呉湖に一羽の白鳥が舞い降りてきました。
白鳥は地面に降りると美しい女性になりました。
女性は実は天女で、水浴びをしにやってきたのです。
天女は近くの柳の木に羽衣をかけていました。
その様子を見ていた「伊香刀美」という男が、あまりの天女の美しさに魅かれて衣を隠してしまいます。
天女は羽衣がないと天に帰れないので、彼に返してくれる様に頼みましたが、聞き入れてくれません。
仕方なく天女は伊香刀美の妻となり、地上で二男三女を産みました。
子供は大きくなってから伊香地方を開拓したという説や、子供は菅原道真だったという説もあります。
この「天女の衣掛柳」は、2017年の台風により、残念ながら根元から折れてしまいました。
現在ではもうその姿は見られません。
4. 柳の名前の由来
柳の名前は、昔はこの木を使って矢を作ったことから「矢の木」と呼ばれていて、そこから段々と「やなぎ」になっていったと言われています。
学名「サリックス」は、ケルト語で「水に近い」という意味があり、川辺や湖のほとりによく生育することに由来していると言われています。
柳は英語名で「Willow(ウィロー)」といい、しだれ柳は「Weeping Willow(泣いている柳)」でネコ柳は「Pussy Willow(ネコの柳)」と分かり易い名前になっています。
4-1. 柳が幽霊の木と呼ばれる理由
昔から幽霊画では、柳の木の下にいる幽霊が描かれています。
怪談の中でも柳の下に幽霊が現れるというシーンが多くあります。
これは、「柳には死者の霊魂が宿る」と言われている為ですが、もちろん柳の見た目が細くて長い枝や葉っぱがざわざわと風になびいていて、まるでこちらに手招きをしている様に見えるということも由来していると思われます。
4-2. 柳の下で「親隠し」をする理由
子供の頃に、「柳の下を通る時に両方の親指を隠さないと、両親が早死する」と聞いたことのある人もいるでしょう。
これは地方によって違いがあり、「霊柩車を見たら両方の親指を隠す」という迷信もあります。
これは、死んだ人にはしばらく魂が残っていて、親指から出入りすると言われていたからです。
最初は親を守るというよりも、悪い魂が自分の身体の中に入ってこない様に身を守る為にされていました。
親指を隠すことから「親隠し」となり、親を守る為になっていったのです。
柳の木は昔から魂が宿るとされていたので、霊柩車と同じく悪い魂から身を守る為に親隠しをする様になったと思われます。
5. 柳の見ごろ時期
柳の開花時期は3月~5月で、桜と同じ時期に見ごろを迎えます。
新緑の季節が最も美しいとされていて、目立たないのですが良く見ると黄色い花を咲かせていることもあります。
6. 柳の種類(原種、園芸品種(似た花の花言葉)
ヤナギ属は非常に種類が多く、世界中に300種以上分布しています。
柳と言えば「しだれ柳」がメインですが、中には普通の木と同じように見える種類もあるのです。
以下は代表的な品種です。
6-1. 雲竜柳(ウンリュウヤナギ)
中国原産で、別名「ドラゴン柳」とも言われます。
この柳の特徴は、葉っぱよりもうねうねと曲がっている枝です。
その姿がまるで龍に見えることから名づけられ、観賞用として人気があります。
花言葉は「素早い対応」で、育て方次第で様々な形になり、展覧会様に使われて便利なことから名づけられていると思われます。
6-2. ネコヤナギ
日本でも比較的有名な柳の一つです。
枝が下を向かずにしっかりと生える柳で、気の高さは3メートル程と小ぶりになります。
水辺を好んで自生しますが、見た目が可愛らしいので庭木にされることも多くなります。
春には、白い綿毛で覆われたつぼみを付けるのですがこれがまるで猫のしっぽの様に見えることから「ネコヤナギ」と名付けられました。
また、仔犬のしっぽという意味の「エノコロヤナギ」とも呼ばれています。
花言葉は「努力が報われる」で、厳しい冬を越して春になると、何とも可愛らしいつぼみを付けることから付けられています。
6-3. マルバヤナギ
新芽が赤いことから「アカメヤナギ」とも呼ばれていて、葉っぱが楕円形をしていてとても特徴的です。
水の周辺を好んで自生していて、大きなものは20メートルほどの大木なります。
柳の中でも開花期が遅く、葉が育つのは春ですが、花が咲くのは初夏の頃です。
花言葉は「強い忍耐」、花が咲くまで時間がかかることから付けられていると思われます。
6-4. コリヤナギ
朝鮮半島産の柳で、かごの様な入れ物である「行李(こうり)」を作る原材料として、畑で栽培されていました。
行李は、柳の幹から作られていて、軽くて通気性が良く、中のものがカビないことで、衣装入れから道具入れ、お弁当箱と様々な用途に使われていました。
木の高さは3メートル程で、幹が多くて昔は重用されていました。
花言葉は「しなやかな心」で、これはコリヤナギが非常に柔らかくて加工し易かったことに由来しています。
6-5. セイヨウハコヤナギ
別名「ポプラ」とも呼ばれていて、街路樹として見かけたことのある人もいるでしょう。
ヨーロッパやアジアに自生していて、日本へは明治時代に伝わってきました。
寒さに強く育てやすいことから、街中の様々なところに植樹されています。
綿毛のついた種子がなり、地面に落ちると一面真っ白になることから、英語名では「Cotton Wood(綿の木)」と呼ばれています。
花言葉は「勇気・悲嘆・時間」で、ギリシャ神話に因んでいます。
ポプラの木は毒消しの効果があり、ヘラクレスが発見したことで「勇気」と言われる様になりました。
また、柳の花言葉の章で述べた「パエトン」の悲しい物語の続きですが、パエトンが亡くなった時に、姉妹たちが悲しんでポプラの木に変わったことから「悲嘆」と言われています。
また、葉が表と裏で色が違い、昼と夜の様である為に「時間」という花言葉もついています。
柳は、天気や時刻、そして見る時のその人の気持により、風流に見えたり少し怖い様に見えたりと、様々な表情を見せる植物です。
花言葉を思い浮かべながら、サラサラと風になびく様子を観察してみては如何でしょうか。
まとめ
柳は緑の細い葉っぱの印象が強いのですが、実は花も咲くし花言葉もあるのです。
柳と言えば、風に揺れる無数の葉や枝の情景を思い浮かべます。
中には「幽霊が出るところ」と、あまり良いイメージを持たない人もいるでしょう。
しかし柳は昔から風に揺れる様が風流として、親しまれている植物です。
柳の花言葉と様々な逸話について紹介します。
1. 柳とはどんな花?
柳は「ヤナギ科 ヤナギ属」の植物で、落葉樹です。
原産地は中国で、奈良時代に日本に伝わってきたと言われています。
日本で柳というと「しだれ柳」を意味しすますが、ヤナギ属の品種は300種類以上もあり、中には葉が下に垂れ下がっていないものもあります。
木の高さは大きなもので20メートル近くになり、細く長い柄に多くの細い葉っぱを付けて、風が吹くと音を立てます。
葉っぱでお馴染みですが、春~初夏にかけて花を咲かせます。
形は円柱状で、黄色い小さな花の集まりですが、花びらはなく綿毛の様な穂に見えます。
花は咲き終わると落下します。
2. 柳の花言葉
日本では殆どが「しだれ柳」で、花言葉も全ての柳に共通して「しだれ柳」の意味が使われます。
2-1. 「従順」
これは、柳の葉が風に逆らわず、吹かれるがまま揺れる様子に由来しています。
2-2. 「自由」
風に吹かれて漂う様子が、自由で伸び伸びしていることに由来しています。
「従順」で「自由」というと矛盾している様に思えますが、それだけ要領が良いと考えられます。
2-3. 「悲哀」
この花言葉には、幾つもの物語があります。
旧約聖書から
西洋では「死者への哀悼」「憂うつ」を意味します。
これは、木の様子ではなく、旧約聖書に因んだ花言葉です。
旧約聖書の詩編には次の様な描写があります。
捕虜になったユダヤの女性達に、敵が「故郷シオンの歌を歌え」と強要します。
しかし女性達はバビロン川のほとりに座り、故郷を思って涙を流しました。
そして岸辺に生えている柳の木に自分の琴をかけて、歌うことを拒んだのです。
しだれ柳の学術名は「サリックス バビロニカ」で、ここから由来しているのです。
ギリシャ神話から
パエトンは、太陽神アポロンと妖精クリュメネーとの間に生まれた子供でした。
アポロンは、毎日決まった時刻に、馬に引かれた太陽の二輪車を走らせて天を駆け抜けていました。
これにより地上の全てのものが太陽の恩恵をこうむっていたので、とても重要な仕事だったのです。
パエトンはアポロンに会ったことはなく、ある日友人から「お前は本当にアポロンの息子なのか」と疑われてしまいます。
そこでパエトンは一人でアポロンに会いにオリンポスの山頂にある神々の宮殿に出掛けます。
そこは神しか入れない場所でしたが、アポロンはパエトンに会い、「本当に自分の息子だ、その証拠にお前の望みを叶えてあげるから、何でも言ってごらん」と言ってくれます。
パエトンは、そこでアポロンに「あの太陽の二輪車を操縦させて下さい」と頼みます。
アポロンはしまったと思い「それはできない」と言いましたが、パエトンが「神様はウソをつかないんでしょう?」と言われてしまい、渋々と二輪車を貸し出します。
アポロンはパエトンに二輪車の操縦の仕方を教えますが、パエトンは嬉しくてすっかり聞き流してしまいました。
早速二輪車に乗ったパエトンは、友達に見せつけようと地上近くを走ろうとしました。
ところが、いつもより軽い乗り手と下手な手綱さばきに、馬たちはいう事をきかずに勝手に走り始めてしまいます。
地上に近づくと大地は暑く火事になり、天も焦がして走り続けました。
このまま二輪車を走らせていると、世界中が焼けつくされてしまうと思った大神ゼウスは、パエトンの二輪車に雷を落して破壊しました。
パエトンはそのまま命を落としますが、アポロンが悲しんで彼を柳の木に変えました。
柳の枝はパエトンが後悔して泣いている様子を表し、木の下には涙による湿気が滞っていると言われています。
日本の怪伝説
長野県と富山県の境にある黒部地方には、「夫婦柳」という伝説があります。
山奥の谷に二本の柳の木があり、村人たちに「夫婦柳」と呼ばれていました。
或る日片方の柳を伐採することになり、総勢16人のきこりが集まって切り倒しました。
ところがその直後、一人、また一人と気分が悪くなったのです。
山小屋で休んでいると、どこからともなく一人の女が現れて、不気味な笑みを浮かべながら寝ている木こりたちの上を通り過ぎ、姿を消しました。
その後木こり達は16人全員が命を落としてしまったのです。
これは夫婦柳のたたりであるとして、この谷を「16人谷」と名付けて、柳に悲しい花言葉を付けたと言われています。
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