「もののふの 八十娘子(やそおとめ)らが 汲み紛(まが)ふ寺井の上の堅香子(かたかご)の花」大伴家持 万葉集 巻十九 4143
(水を汲み入れあう美しい少女たちの寺の井戸のほとりに咲くかたかごの花よ)
「堅香子(かたかご)」とは古語でいうカタクリのことです。
「八十娘子子(やそおとめ)」とはたくさんの少女たちのこと。
早春のやわらかな日差しの中で華やかに水を汲み合っている多くの少女たちとその近くで群生して咲いているカタクリの美しい様子が目に浮かんできます。
このようにカタクリは古くは万葉集の時代から春を告げる可憐な花として親しまれています。
- カタクリとはどんな花?
- カタクリの花言葉
- カタクリの食べる時のおいしい食べ方
- カタクリの名前の由来
- カタクリの開花時期
- カタクリの育て方や注意点
- 種類(原種、園芸品種)など
- まとめ
1. カタクリとはどんな花?
北東アジアと日本に分布するユリ科カタクリ属の耐寒性のある球根性の多年草植物です。
日本では平地から山地まで幅広く自生しています。
早春に花茎を伸ばしてその先端に下をむくようにして花を咲かせます。
落葉樹の下で群生して咲いていることも多く、各地に群生地があります。
日本に自生しているカタクリは1種類で花弁がやや細めで色はピンク色でまれに白い花を咲かすものもあります。
ブナ林などの落葉樹林の下に自生しています。
カタクリは球根からとった良質なデンプンを含んでいます。
かつてはそのデンプンを粉にして「片栗粉」として利用していました。
しかしデンプン粉のとれる量が少ないため、現在はデンプン質が豊富なジャガイモやサツマイモのデンプン粉が利用されており、片栗粉は「カタクリ」の名前だけが残っているだけです。
2. カタクリの花言葉
2-1. 初恋
うつむくように咲く姿が恥らって自分の思いをはっきりと伝えられない切ない初恋の気持ちを連想したもののようです。
2-2. 寂しさに耐える
同じくうつむくように咲く姿が耐え忍んでいるように思えたようです。
2-3. 消極的
やはりその姿が地面を向いていることから「消極的」と連想されたようです。
2-4. 情熱
その花の形が炎に似ているということから由来しています。
「情熱の炎」ですね。
2-5. 嫉妬
「情熱」の花言葉同様、炎に似ていることから「嫉妬でメラメラ燃え上がっている」と連想されたようです。
3. カタクリの食べる時のおいしい食べ方
カタクリは山菜として食べることもできます。
クセがなく口に入れるとほんのりと甘み感じます。
花も食べることができるのでまさしくハナやかな食卓になるのではないでしょうか。
カタクリはあまり日持ちしないのでなるべく早く食べるとよいでしょう。
3-1. 下ゆでのポイント
沸騰したお湯に塩を少々いれ、しんなりとしたら冷水にさらして色止めをします。
短い時間で茹で上げることで食感よく食べることができます。
クセがないので下茹でしたカタクリはお浸し、胡麻和え、酢味噌和えなどどんな調味液でも合いますよ。
3-2. カタクリをより鮮やかに食したい
カタクリをより鮮やかにするにはお酢を入れた調理方法がおすすめです。
お酢は素材の色を引き出してより鮮やかにする効果があります。
ショウガのガリやみょうがの甘酢漬けが赤くなるのはお酢の効果です。
酢の物にすることで花のピンクや葉の緑、茎の白さがより鮮やかになるので食卓に彩りが添えられるのでおすすめです。
3-3. 天ぷらにして食す
山菜といえば天ぷらと思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
天ぷらにする場合は下茹では不要です。
生のままのカタクリに天ぷら生地をうすくつけ低温の油で揚げます。
低温であげることで甘みが引き立ちより美味しくいただけます。
3-4. その他の調理法
・味噌汁・油いため(塩または醤油で味付け)・卵とじなどクセのないカタクリは様々な調理方法で楽しむことができます。
4. カタクリの名前の由来
4-1. 日本での由来
・カタクリの古語の堅香子(かたかご)。「籠をかたむけたよう」に下を向いて咲くその花の姿を例えたその名の「カタカゴ」から「カタコ」に「カタコユリ」から「カタクリ」に転じていったという説。
・カタコユリ(小さな百合)の省略。
・カタクリの葉の形が栗の子葉(しよう)に似ていることから「片栗(カタクリ)」になったという説。
・カタクリが発芽してから毎年1枚ずつ「鹿の子模様」をした葉を出し続ける様子から「片葉」から「片葉鹿の子(カタハカノコ)」が転じて「カタクリ」になったという説。
4-2. 西洋での由来
カタクリの属名「Erythronium(エリトロニウム)」はその花色からギリシャ語の「erythros(赤)」からつけられたそうです。
ちなみにアメリカで自生する「yellow dogtooth violet(
イェロードッグトゥースヴァイオレット)」は別名「Trout lily(トラウトリリー:マスの百合)」と呼ばれているそうです。
茶色や灰色の斑模様で灰色がかった緑の葉が魚の「マス」に似ていることに由来しているそうですよ。
5. カタクリの開花時期
春を告げるカタクリはほかの草木に先駆けて花を咲かせますが開花時期はとても短いです。
3月ごろに葉を出し、4月頃に花を咲かせます。
5月末から6月には葉などの地上部は枯れてしまい地下で休眠します。
6. カタクリの育て方や注意点
耐寒性はありますがやや難易度の高い高山植物です。
球根性の植物は花が終わったあと葉で光合成を行って栄養を球根に蓄えて来年の開花時期に備えています。
生育期間がとても短いカタクリの葉や茎をできるだけ長く地上部で光合成を行わせられるかがポイントです。
6-1. 場所
直射日光を嫌うので半日陰~日陰の場所で育てます。
庭植えの場合、自然環境と同じように落葉樹の下に植え、土と腐葉土をよく混ぜあわせてふかふかな状態にするとよいでしょう。
鉢植えの場合、秋から春までは日なたに育てます。
花が終わって葉が黄色くなり始めたら明るい日陰へ移動します。
夏は涼しい日陰に置きます。
暑さには弱いので温度が上昇しないように気をつけます。
6-2. 植えつけ
球根は深めに植えたほうが育ちます。
あまり浅く植えると育たないので注意しましょう。
庭植えの場合、地表から10cmくらいの深さに植えます。
球根は自分で地下へ地下へと潜っていくため、植え替えの必要はありません。
鉢植えは暑さが和らいだ頃に植え替えます。
深さが必要なため大きめの鉢を使うといいでしょう。
小さい鉢では根が伸びる余地がなくなり、翌年以降花が咲かないことがあります。
球根は先端を上にして立てるようにして植えつけます。
6-3. 水やり
カタクリはやや湿っている土を好みます。
土の表面が乾いたらたっぷりと水を与えます。
庭植えの場合は雨がふらないで地面がカピカピに乾燥していてぐったりしていたら水をあげますが、基本水やりの必要はありません。
鉢植えの場合、土の表面が乾いたら十分に水をあげます。
葉のある間は特に乾燥させないように気をつけます。
ただ過湿になると球根が腐ってしまうので注意しましょう。
花は傷みやすいので花がついている間は根元にそっと水を与えます。
6-4. 肥料
冬から春の開花時期に根が生長するので11月~12月ごろから肥料を与えます。
薄めの液肥を1ヶ月に2回位、固形肥料なら1ヶ月~2ヶ月に1回位与えます。
花が終わるころまで与えます。
6-5. ふやし方
分球:球根が順調に育っていた株の場合は子株がついているのでそれを分けてふやします。
ただ、日本原産のカタクリは球根でふえる力が弱いためほとんどといっていいほど分球することができません。
タネまき:開花するまで6年から8年近くかかり、発芽率もよくはありませんが効率よくふやせる方法です。
初夏に果実部が黄色く熟してきます。
先が割れたらタネを採集してすぐにまきます。
親株と同じ環境で育てると翌年には細い糸状の葉を出します。
花が咲くようになるのは球根が太ってきて2枚目の葉が出るころから。
最初のころは細いため雑草と間違えないように注意が必要です。
6-6. 害虫・病気
せっかく大事に育ててきたカタクリが病気にかかって枯れてしまったり、食害されてしまったときの悲しみは計り知れません。
大切なカタクリを美しく咲かせるためには細心の注意が必要です。
ナメクジ・カタツムリ:昨日まであった新芽や花芽が朝見たらなくなっている!というときは夜行性であるナメクジやカタツムリに食べられてしまった可能性が高いです。
ナメクジ・カタツムリは誘引剤で駆除します。
さび病:さび病は、「さび病菌」というカビに感染することで発生する病気です。
2月から3月に発生します。
赤錆のような赤茶色の粉状のものが葉につき葉が変形してしまいます。
そうすると花がつかなくなってしまいます。
感染した葉はすぐに消毒したハサミやカッターなどで切り落とします。
病気が他の葉にもかからないように注意が必要です。
また、さび病が発生し易い植物にも注意しましょう。
7. 種類(原種、園芸品種)など
一般に販売されている日本カタクリは自生しているものがほとんどです。
比較的育て易いのは西洋種なので西洋種からチャレンジしてもよいかもしれませんね。
7-1. 日本カタクリ(Erythronium japonicum Decne. )
日本で自生しているカタクリです。
薄紫の花を咲かせます。
まれに白い花が咲くこともあります。
日本各地に自生地があり、秋田に日本最大級の自生地があります。
7-2. エリスロニウム‘パゴダ’(Erythronium ‘Pagoda’)
西洋カタクリの園芸種です。
花期は3月から5月。
愛らしい黄色の花をしていることから黄花カタクリ、ヨウシュカタクリとして流通していることもあります。
草丈は15cmから30cmほど。
1株から花がいくつも咲きます。
7-3. エリスロニウム・デンスカニス(Erythronium dens-canis)
原産地はヨーロッパです。
日本のカタクリに似ていますが花の赤みはもっと強めです。
日本カタクリにあるような花弁の基部にある斑模様ははっきり見えません。
カタクリよりはふえやすいため多くの園芸種があります。
まとめ
凍てつく寒さの冬からやわらかな日差しがさしてくる初春のごくごく短い間に咲き誇るカタクリはそのはかない美しさと恥らうようにうつむいて咲く姿はまさしく「乙女」そのものですね。
「もののふの 八十娘子(やそおとめ)らが 汲み紛(まが)ふ寺井の上の堅香子(かたかご)の花」大伴家持 万葉集 巻十九 4143
(水を汲み入れあう美しい少女たちの寺の井戸のほとりに咲くかたかごの花よ)
「堅香子(かたかご)」とは古語でいうカタクリのことです。
「八十娘子子(やそおとめ)」とはたくさんの少女たちのこと。
早春のやわらかな日差しの中で華やかに水を汲み合っている多くの少女たちとその近くで群生して咲いているカタクリの美しい様子が目に浮かんできます。
このようにカタクリは古くは万葉集の時代から春を告げる可憐な花として親しまれています。
1. カタクリとはどんな花?
北東アジアと日本に分布するユリ科カタクリ属の耐寒性のある球根性の多年草植物です。
日本では平地から山地まで幅広く自生しています。
早春に花茎を伸ばしてその先端に下をむくようにして花を咲かせます。
落葉樹の下で群生して咲いていることも多く、各地に群生地があります。
日本に自生しているカタクリは1種類で花弁がやや細めで色はピンク色でまれに白い花を咲かすものもあります。
ブナ林などの落葉樹林の下に自生しています。
カタクリは球根からとった良質なデンプンを含んでいます。
かつてはそのデンプンを粉にして「片栗粉」として利用していました。
しかしデンプン粉のとれる量が少ないため、現在はデンプン質が豊富なジャガイモやサツマイモのデンプン粉が利用されており、片栗粉は「カタクリ」の名前だけが残っているだけです。
2. カタクリの花言葉
2-1. 初恋
うつむくように咲く姿が恥らって自分の思いをはっきりと伝えられない切ない初恋の気持ちを連想したもののようです。
2-2. 寂しさに耐える
同じくうつむくように咲く姿が耐え忍んでいるように思えたようです。
2-3. 消極的
やはりその姿が地面を向いていることから「消極的」と連想されたようです。
2-4. 情熱
その花の形が炎に似ているということから由来しています。
「情熱の炎」ですね。
2-5. 嫉妬
「情熱」の花言葉同様、炎に似ていることから「嫉妬でメラメラ燃え上がっている」と連想されたようです。
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