「恐れ多い」は、少しかしこまった場面やビジネスシーン、自分よりも上位の相手に使うことの多い言葉ですが、具体的にどのような意味があるのでしょうか。
恐れ多いは一般的に「自分よりも身分や立場が上の人」に対して使うことが多い言葉で、「こんなことをしてしまって失礼に当たって申し訳ない+分不相応にこんなことまでしてもらってありがたい」という意味合いがあります。
この記事では、「恐れ多い」という言葉の意味・用い方・類語・例文などを詳しく解説していきます。
- 恐れ多いの意味
- 恐れ多いの使い方
- 恐れ多いの類語(類義語)と意味の違い
- 恐れ多いと敬語
- 恐れ多いを用いた例文
- 「恐れ多い」を用いた返事の返し方
- まとめ
1. 恐れ多いの意味

「恐れ多い」という言葉には、具体的にどのような意味があるのでしょうか?
1-1. 恐れ多いには「自分が相手にしていること」に対する申し訳なさの意味がある

「恐れ多い」という言葉は、基本的に「自分よりも身分・立場が上の人」や「自分が尊敬している人・自分の頭が上がらない人」に対して用いられる言葉です。
恐れ多いは、「自分が相手(立場が上の人)に対していること・しようとしていること」が、分不相応で失礼・越権に当たる時に用いられます。
恐れ多いという言葉には、「自分がしていること(自分がしようとしていること)」が失礼に当たるので申し訳ないという意味があるのです。
恐れ多いの言葉を使う時に対象となる「立場・身分が上の人」は、現代であればビジネスシーンにおける「お客様・取引先・営業先」を意味することも多くなっています。
1-2. 恐れ多いには「自分が相手からしてもらったこと」に対する申し訳なさの意味がある

「恐れ多い」という言葉は、「自分よりも身分・立場が上の人」や「自分が尊敬している人・自分の頭が上がらない人」に対して用いられます。
上の説明では、「自分がしていること(自分がしようとしていること)」に対して失礼に当たって申し訳ないという意味を紹介しましたが、「立場が上の人からしてもらったこと・かけてもらった言葉」に対して分不相応(過大評価)で申し訳ない、自分にはもったいないという意味もあります。
尊敬する人や立場が上の人から「厚意・感謝の言葉・プレゼント」などを受けた時に、「自分なんかにはもったいない・非常にありがたくて申し訳ない」といった意味合いが恐れ多いにはあるのです。
恐れ多いは、「身に過ぎたこと(過大評価)で恐縮である・自分には身に余ることで恐縮である」という意味を持っています。
2. 恐れ多いの使い方

恐れ多いには、「主体・相手・状況・目的」に応じたどのような使い方があるのでしょうか?
2-1. 恐れ多いという言葉の「自分の発言・行動」に対する使い方

恐れ多いという言葉は、自分自身をへりくだっていう謙譲語と組み合わせた用法が多くなっていますが、「自分の発言・行動」を謙遜したり遠慮したりして言う時によく使います。
例えば、ある専門分野の権威である大学教授に対してその分野で反対意見に近い意見を述べようとすれば、一般人のレベルで頭が良くて知識が豊富な人でも相当に緊張して恐縮してしまいます。
そんな時には、「恐れ多いながら、一言だけ意見を言わせて頂いてもよろしいでしょうか」といった使い方をすることになります。
元オリンピック選手だった人の前で、その選手の競技のお手本を見せる時には、一般人のレベルで運動神経が抜群の選手・体育教師でも、「釈迦に説法とはなりますが、恐れ多くも拙いながらも演技(競技)をさせて頂きます」といった使い方をしやすいでしょう。
2-2. 恐れ多いという言葉の「相手の発言・行動」に対する使い方

恐れ多いという言葉は、自分自身の言動をへりくだっていう使い方だけではなく、「相手の発言・行動」を持ち上げたり尊敬したりして言う時にもよく使います。
この場合の相手というのは、「自分よりも身分・立場・技術(実力)などが上の人」のことであり、「尊敬している人・目上の人・一目置いている人」などが該当します。
自分よりも立場が上の人や尊敬している人から、自分の実績・能力・態度などを褒めてもらった時などに、「身に余る恐れ多いお言葉でございます」や「恐れ多いお褒めの言葉を頂いてひたすら恐縮しております」といった使い方をすることになります。
尊敬している人やその分野の第一人者から、「これからの健闘に期待していますよ・あなたの将来の可能性に期待しております」などの言葉をかけられた時にも、「恐れ多いことでございます」と返すことができます。
2-3. 恐れ多いの「ビジネスシーン」における使い方

恐れ多いという言葉は、「尊敬している人・立場(実力)が上の人」に使う言葉ですが、ビジネスシーンで用いることも多くなっています。
ビジネスシーンにおいて「恐れ多い」という言葉を使う対象は、「お客様(顧客)・取引先(特に相手が有利な取引先)・上司」などになってきます。
例えば、お客様から「あなたの接客態度は素晴らしいですね・あなたの技術力がとても高いので安心してお任せできます」と褒められた時に、「恐れ多いお言葉です」と返すような使い方があります。
会社・役所の上司から「君の今後に期待している・今日の仕事の出来は素晴らしかった」と激励・賞賛の言葉をかけてもらった時にも、「恐れ多いお言葉です」と応えることができます。
ビジネスシーンで「恐れ多い」という言葉を使う時には、「上司・お客様など立場が上の相手」に限られ、同僚・部下(目下の人・立場が下の人)に対して使うことはありません。
3. 恐れ多いの類語(類義語)と意味の違い

恐れ多いと似た意味を持つ「類語(類義語)」を紹介して、「恐れ多いと比較した場合の意味の違い」について説明していきます。
3-1. ありがたい

恐れ多いの類語に「ありがたい(有り難い)」があります。
ありがたいの意味は、「滅多になくて嬉しいこと・非常に珍しくて感謝すべきこと」になります。
「ありがたいお言葉でございます」「ありがたく頂戴いたします」や「ありがたいことでございます」といった使い方をすることができ、恐れ多いと似た意味・用法を持っています。
恐れ多いと比較した場合の意味合い(ニュアンス)や用法の違いとして、「ありがたい」は「相手に感謝する気持ちが強い」ということがあり、「身分の高い王様(貴族)に対する謙遜の意味合い」はありません。
例えば、「国王自らご覧あそばすとは恐れ多いことでございます」の使い方はあっても、「国王自らご覧あそばすとはありがたい」という使い方は通常しません。
3-2. もったいない

恐れ多いの類語に「もったいない(勿体無い)」があります。
もったないの意味は、「身に過ぎていて恐縮してしまう・ありがたく思う」や「必要なものを無駄にして惜しい」というものであり、恐れ多いとは「ありがたく思う」という意味が共通しています。
「もったいないお言葉でございます」「もったいない機会をありがとうございます」、「モノを粗末にするのはもったいない」などの使い方があります。
もったいないは恐れ多いよりも、日常的な文脈で使いやすい言葉です。
恐れ多いと比較した場合の意味合い(ニュアンス)や用法の違いとして、恐れ多いには「必要なモノを無駄遣いしてもったいない」といった意味はないことがあります。
もったいないはありがたいと同様に、「国王自らご覧あそばすとはもったいない」といった使い方をすることはできません。
3-3. かたじけない

恐れ多いの類語に「かたじけない」があります。
かたじけないの意味は、「人から受けた好意や恩義がとてもありがたいこと・人からの好意や親切にとても感謝していること」です。
「恐縮するほどにありがたい」という意味もあります。
「かたじけないお言葉でございます」「ご好意をかたじけなくお受けさせて頂きます」、「かたじけない限りです」といった使い方ができます。
「かたじけない」も「恐れ多い」と同じく、「自分にはもったいないくらいにありがたいこと」や「分不相応な好意や厚遇に感謝しきれないこと」を意味しています。
しかし、やや古風な表現・語法であり、現代の若い人たちが普段の生活の中で「かたじけない」という言葉を使うことはほとんどなくなっています。
かたじけないも、「国王自らご覧あそばすとはかたじけない」といった使い方をすることはできません。
3-4. 身に余る

恐れ多いの類語に「身に余る」があります。
身に余るの意味は、「分不相応な良い待遇であること・自分の実力以上に過大評価されていること」です。
自分が相手からしてもらったこと、相手からかけてもらった褒め言葉や好意・厚遇が、「自分の身分・自分の実績や能力」以上のものであると感じた時に、「身に余る」という言葉を用います。
身に余るは「恐れ多い」と同じく、「自分の身分や実力に照らしてもったいなくてありがたいこと(分不相応に良い待遇を受けていること+実力以上に過大評価されていること)」に対して用います。
「身に余るご厚意をありがとうございます」「身に余るお褒めの言葉に感激しております」や「身に余る待遇に恐縮至極です」といった使い方ができます。
身に余るには「身分不相応」というニュアンスもあるので、恐れ多いと同じく、「国王自らご覧あそばすとは身に余る光栄です」といった使い方をすることができます。
3-5. おこがましい

恐れ多いと類似のニュアンスを持つ言葉に「おこがましい」があります。
「おこがましい」という言葉は「恐れ多い」と同じく、自分自身の振る舞いについて語る時には、自分の立場を低くして謙遜する意味合いがあります。
「おこがましい」の意味は、「身の程(上下関係)をわきまえない・越権行為で生意気な言動をする・分不相応で出過ぎた真似をする」という意味になります。
例えば、会社の部下が上司に対して「今日の会議でのスピーチは素晴らしい出来栄えでしたね」と評価して賞賛するような行為は、「おこがましい行為(部下のくせに上司を論評する生意気な越権行為)」として解釈できます。
これは他者の言動に対する評価ですが、おこがましいを自分の言動に対して用いる時には、「おこがましいことではございますが、部長に意見を言わせて頂きます」や「夫の私が言うのもおこがましい話ですが、妻は本当に良く出来た女房なんです」などの使い方があります。
謙遜した自己言及で「おこがましい」を使う時には、自分のことを「大した人間ではないけれど」と謙遜して低く見せているニュアンスが出てくるのです。
「恐れ多い」と「おこがましい」の違いについて
「恐れ多い」という言葉の意味は、「自分には分不相応でもったいなくてありがたい」や「自分の立場・実力では失礼に当たると感じて申し訳ないこと」であり、それらは全て「謙遜(へりくだり)の意味合い」でつながっています。
しかし、「おこがましい」は「身の程や上下関係をわきまえない・越権で生意気なこと」であり、言葉そのものには謙遜の意味が入っていないのです。
「恐れ多い」には「もったいないことでありがたい」という感謝の意味合いもありますが、「おこがましい」には「自分なんかにこんなに良くしてもらってありがたい」といった感謝の意味はありません。
3-6. 「恐れ多い」の英語表現

恐れ多いという言葉は、「身分・立場の違い(上下関係の意識)」を前提にしていて、かなり日本文化・日本の歴史と親和性のあるものになっています。
敬語(謙譲語)のない英語の文化圏では、「恐れ多い」を直接的に表現する英単語はないのですが、強いてあげるとすれば“grateful(感謝している・ありがたく思う)”が該当するでしょう。
例文:I'm grateful to you for your kind help and economic burden.
あなたの手厚いご援助と経済的なご負担を、ありがたく思っております。
4. 恐れ多いと敬語

「恐れ多い」という言葉そのものは直接の敬語ではありませんが、自分よりも立場が上の対象者を敬う気持ちが込められた言葉です。
ここでは、「恐れ多い」と謙譲語としての表現について解説していきます。
4-1. 「恐れ多い」自体は敬語ではないが、謙遜の気持ちを表現する意味を持つ

「恐れ多い」という言葉は、「目上の人(身分・立場が上の人)に使う言葉」であり、「自分にはもったいないこと」や「自分などでは失礼に当たること」などを意味しています。
「恐れ多い」という言葉そのものは敬語ではありませんが、恐れ多いの言葉の意味には「目上の人や尊敬する人に対する謙遜(へりくだり)の自意識」がすでに組み込まれていると解釈することができます。
その意味で、恐れ多いという言葉は、「目下の人・軽視している人(敬意を感じていない人)」に対して使われることはないのです。
4-2. 「恐れ多い」という言葉は謙譲語との相性が良い

恐れ多いの使い方と敬語との関係性を考えると、恐れ多いという言葉は自分自身の存在・言動をへりくだっていう「謙譲語」との相性が非常に良くなっています。
敬語の中でも、尊敬語は「相手の存在や立場を高く見せて敬う言葉」、謙譲語は「自分の立場を低く見せかけることで敬う言葉」となりますが、恐れ多いは「自分の身分・立場・能力ではもったいない」という意味合いがあり、初めから謙譲語としてのニュアンスが組み込まれているのです。
「恐れ多いお言葉に感激致しております」という敬語表現も、謙譲語のニュアンスが含まれています。
「お言葉」は「お」という接頭辞で相手の発言や立場を高めており、「する」を「致すの謙譲語」にすることで感激している自分の立場を低く見せているのです。
「恐れ多くも意見を申し上げさせて頂きます」という使い方も、「言う」を「申すの謙譲語」に変えていますが、非常に自然な言い回し(語用)になっているのです。
5. 恐れ多いを用いた例文

「恐れ多い」という言葉を実際のシチュエーションや尊敬している相手(目上の相手)に使う時には、どのような使い方をすることができるのでしょうか。
この項目では「恐れ多い」の言葉を使った典型的な例文を紹介していきます。
5-1. (自分の言動に対する)恐れ多いことでございます

「恐れ多い」という言葉には、自分自身の言動に対して「自分なんかがそれをするのは失礼に当たる」や「自分などの立場・能力ではとてもそこまでのことはできないです」「自分の立場では分不相応なことなのでできません」という意味があります。
その意味を込めた例文としては、自分が目上の人や尊敬する人(圧倒的に能力・権威が上の人)に対して、批判的なニュアンスもある意見を申し上げる時などに、「恐れ多いことでございますが、一言だけ言わせて頂いてもよろしいでしょうか」や「恐れ多いながらも、意見を申し上げさせて頂きます」といった言い方で返すことができます。
5-2. (相手の言動に対する)恐れ多いことでございます

「恐れ多い」という言葉には、目上の人の言動(賞賛・肯定・待遇など)に対して「自分なんかにはもったいないことです」や「自分の立場・能力では分不相応でとてもありがたいことです」といった意味があります。
その意味を込めた例文としては、仕事のサービスや技術などに対してお客様から「あなたのサービスは非常に素晴らしいですね・あなたの技術力がとても高くて助かりました」と言われた時に、「恐れ多いことでございます」と返すことになります。
社長や上司などから「君の今回の実績は非常に素晴らしい」と褒められた時にも、「恐れ多いことでございます」という例文で答えることができます。
5-3. 恐れ多いように感じる

恐れ多いのよく使われる例文としては、「恐れ多いように感じます」という使い方があります。
「恐れ多いように感じます」の意味も、「自分なんかにはもったいない良い待遇のように感じる」や「自分程度の立場・能力では失礼に当たるのでとてもできない」という意味になります。
例えば、内閣総理大臣や閣僚から表彰されて「賞状・副賞・お褒めの言葉」などを受け取った時に、「私などがこんな大きな賞を頂くことになるなんて、本当に恐れ多いように感じます」といった例文で答えることができます。
この例文には、「自分の立場では非常にありがたく感じる+分不相応であり申し訳なく感じる」という意味合いが込められています。
5-4. 恐れ多い行為

恐れ多いのよく使われる例文としては、「恐れ多い行為」という使い方もあります。
「恐れ多い行為」は、「自分などの低い立場・身分の者がすれば失礼(非常識)に当たる行為」という意味になります。
「恐れ多い行為」には、上記の「恐れ多いことでございます」「恐れ多いように感じる」と比べて、「自分にとってありがたい行為」という意味がない違いがあります。
自分よりも目上の人や尊敬する人に対して「要求・意見・お願い事」などをする時に、「恐れ多い行為ではございますが、今日は一つお願い事をさせて頂きます」というような例文で答えることができるでしょう。
6. 「恐れ多い」を用いた返事の返し方

「恐れ多い」という言葉を用いた返事の返し方は、基本的に「自分よりも目上の人・尊敬する人・立場が上の人」に対してだけ返すということになります。
自分と対等な立場の人や目下の人から、能力や実績などを褒められた時に、「恐れ多いことでございます」という返し方をするのは間違った返事の仕方になるので注意しましょう。
「上司・先輩・尊敬する人・年上の人」などから、「今日は非常に素晴らしい仕事ぶりでしたね」や「あなたのお話を聞かせてもらってとても感動しました」といった分不相応な身に余る褒め言葉をかけてもらったと感じた時に、「恐れ多いお言葉でございます」という返し方をするのが正しい返事の仕方ということになります。
まとめ

恐れ多いという言葉の「意味・用い方・類語・英語・例文」などを徹底的に解説してきましたが、いかがだったでしょうか。
「恐れ多い」という言葉には「自分が相手にしていること+自分が相手からしてもらったこと(相手から受けた厚意・恩義)」に対する申し訳なさ、感謝の意味がありますが、相手や状況によって使い方のニュアンスが微妙に変化することもあります。
恐れ多いという言葉は、敬語の中でも謙譲語としての用法が多くなっています。
「恐れ多い」という言葉について調べたい時には、この記事を参考にしてみて下さい。
「恐れ多い」は、少しかしこまった場面やビジネスシーン、自分よりも上位の相手に使うことの多い言葉ですが、具体的にどのような意味があるのでしょうか。
恐れ多いは一般的に「自分よりも身分や立場が上の人」に対して使うことが多い言葉で、「こんなことをしてしまって失礼に当たって申し訳ない+分不相応にこんなことまでしてもらってありがたい」という意味合いがあります。
この記事では、「恐れ多い」という言葉の意味・用い方・類語・例文などを詳しく解説していきます。
1. 恐れ多いの意味

「恐れ多い」という言葉には、具体的にどのような意味があるのでしょうか?
1-1. 恐れ多いには「自分が相手にしていること」に対する申し訳なさの意味がある

「恐れ多い」という言葉は、基本的に「自分よりも身分・立場が上の人」や「自分が尊敬している人・自分の頭が上がらない人」に対して用いられる言葉です。
恐れ多いは、「自分が相手(立場が上の人)に対していること・しようとしていること」が、分不相応で失礼・越権に当たる時に用いられます。
恐れ多いという言葉には、「自分がしていること(自分がしようとしていること)」が失礼に当たるので申し訳ないという意味があるのです。
恐れ多いの言葉を使う時に対象となる「立場・身分が上の人」は、現代であればビジネスシーンにおける「お客様・取引先・営業先」を意味することも多くなっています。
1-2. 恐れ多いには「自分が相手からしてもらったこと」に対する申し訳なさの意味がある

「恐れ多い」という言葉は、「自分よりも身分・立場が上の人」や「自分が尊敬している人・自分の頭が上がらない人」に対して用いられます。
上の説明では、「自分がしていること(自分がしようとしていること)」に対して失礼に当たって申し訳ないという意味を紹介しましたが、「立場が上の人からしてもらったこと・かけてもらった言葉」に対して分不相応(過大評価)で申し訳ない、自分にはもったいないという意味もあります。
尊敬する人や立場が上の人から「厚意・感謝の言葉・プレゼント」などを受けた時に、「自分なんかにはもったいない・非常にありがたくて申し訳ない」といった意味合いが恐れ多いにはあるのです。
恐れ多いは、「身に過ぎたこと(過大評価)で恐縮である・自分には身に余ることで恐縮である」という意味を持っています。
2. 恐れ多いの使い方

恐れ多いには、「主体・相手・状況・目的」に応じたどのような使い方があるのでしょうか?
2-1. 恐れ多いという言葉の「自分の発言・行動」に対する使い方

恐れ多いという言葉は、自分自身をへりくだっていう謙譲語と組み合わせた用法が多くなっていますが、「自分の発言・行動」を謙遜したり遠慮したりして言う時によく使います。
例えば、ある専門分野の権威である大学教授に対してその分野で反対意見に近い意見を述べようとすれば、一般人のレベルで頭が良くて知識が豊富な人でも相当に緊張して恐縮してしまいます。
そんな時には、「恐れ多いながら、一言だけ意見を言わせて頂いてもよろしいでしょうか」といった使い方をすることになります。
元オリンピック選手だった人の前で、その選手の競技のお手本を見せる時には、一般人のレベルで運動神経が抜群の選手・体育教師でも、「釈迦に説法とはなりますが、恐れ多くも拙いながらも演技(競技)をさせて頂きます」といった使い方をしやすいでしょう。
2-2. 恐れ多いという言葉の「相手の発言・行動」に対する使い方

恐れ多いという言葉は、自分自身の言動をへりくだっていう使い方だけではなく、「相手の発言・行動」を持ち上げたり尊敬したりして言う時にもよく使います。
この場合の相手というのは、「自分よりも身分・立場・技術(実力)などが上の人」のことであり、「尊敬している人・目上の人・一目置いている人」などが該当します。
自分よりも立場が上の人や尊敬している人から、自分の実績・能力・態度などを褒めてもらった時などに、「身に余る恐れ多いお言葉でございます」や「恐れ多いお褒めの言葉を頂いてひたすら恐縮しております」といった使い方をすることになります。
尊敬している人やその分野の第一人者から、「これからの健闘に期待していますよ・あなたの将来の可能性に期待しております」などの言葉をかけられた時にも、「恐れ多いことでございます」と返すことができます。
2-3. 恐れ多いの「ビジネスシーン」における使い方

恐れ多いという言葉は、「尊敬している人・立場(実力)が上の人」に使う言葉ですが、ビジネスシーンで用いることも多くなっています。
ビジネスシーンにおいて「恐れ多い」という言葉を使う対象は、「お客様(顧客)・取引先(特に相手が有利な取引先)・上司」などになってきます。
例えば、お客様から「あなたの接客態度は素晴らしいですね・あなたの技術力がとても高いので安心してお任せできます」と褒められた時に、「恐れ多いお言葉です」と返すような使い方があります。
会社・役所の上司から「君の今後に期待している・今日の仕事の出来は素晴らしかった」と激励・賞賛の言葉をかけてもらった時にも、「恐れ多いお言葉です」と応えることができます。
ビジネスシーンで「恐れ多い」という言葉を使う時には、「上司・お客様など立場が上の相手」に限られ、同僚・部下(目下の人・立場が下の人)に対して使うことはありません。
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