「香」は日本で平安時代の貴族から嗜まれていた日本の誇る文化です。
自分で調香した香りを焚いて競い合ったり、衣類に焚き染めて香水のように使ったり、海外のアロマテラピーのように治療に使ったりと様々。
その「香」の世界に使用する香木の一つが「沈香」です。
- 沈香とは?
- 天然沈香と栽培沈香
- 沈香の香り
- 沈香と白檀の違いは?
- 沈香の香りの香水
- 沈香の効果や効能
- まとめ
1. 沈香とは?
「沈香(じんこう)」は天然香料の一つで、主に東南アジア産、自然が長い時間をかけて作り上げた香木です。
ジンチョウゲ科等の樹木が台風や害虫などが原因で傷ついた時、木は傷の治療をするように樹液を出しカバーしようとします。
人間でいえばケガをしたときのカサブタの様なもの。
その樹液が樹脂となり長い時をかけバクテリアなどの働きによって変質し、独特の香りを持つようになったものです。
同じ香りは2つとなくそれぞれ違います。
この状態になるまでに50年以上、高品質なものになるには100年以上もかかります。
樹脂なので木よりも重く、水には沈むことから「沈香」と呼ばれるようになったといいます。
現在は一時期の乱獲により数が少なく、ワシントン条約で輸出入も制限されており、非常に手に入りにくい貴重品です。
1-1. 歴史
一番古くは「日本書紀」に記録があり、飛鳥時代から使われてきたと言われています。
その後平安貴族も戦国武将も、遊びや宗教的な儀式や生活の実用品として様々な使い方をしてきました。
江戸時代に入ってからは町人など平民にも広まり、儀式使用はずっと続いています。
また近年は日本の文化として再確認されつつあります。
1-2. 使い方
沈香はそのままでは香りません。
小さいかけらに熱を加えて香りを発生させます。
通常は専用の香炉の中にまず灰を入れ、おこした炭を埋め灰を温めます。
その上に沈香のかけらを乗せて焚くという方法を取ります。
温まった香木からほのかな香りが立ち上ります。
これを空薫(そらだき)といいます。
平安貴族の時代から行われてきた方法です。
1-3. 買い方
中にはただの木にオイルを染み込ませて樹脂に見せかけたり、香料を染み込ませただけの偽物などもあるようです。
ですので、日本のお香の専門店で購入することをお勧めします。
小さい塊もありますが、焚くには削ったり刻んだりして、グラム単位で販売しているものが便利です。
1-4. 「伽羅」について
沈香は産地などによっていくつかの種類に分けられますが、その中でも、油分の割合が高く特に品質の高いものを「伽羅」といいます。
非常に貴重で昔から珍重されており、かの織田信長も用いたという記録があります。
東大寺の正倉院に保管されている「蘭奢待(らんじゃたい)」が一番有名で、信長ほか何人かが少しずつ切り取って使ったようです。
今では枯渇したとも言われており、安くても1gで数万円する非常に貴重で高価なものです。
2. 天然沈香と栽培沈香
前述のように、天然の沈香は取れにくく輸出入も制限され、手に入れるのが非常に困難になっています。
そこで栽培沈香というものも出回っています。
まず木を栽培して、ドリルで穴をあける等人工的なダメージを与えます。
そうして樹液を出させ、バクテリアも人工的に増殖するのを助けます。
その上で20~30年熟成させて沈香にするというものです。
但し天然ものとは比べ物にならず、中には薬品を多量に使った粗悪品もあり、注意が必要です。
3. 沈香の香り
沈香の香りは、日本人が好ましいと思う香りです。
代表されるのはお線香の香りですが、それをちょっと甘くしたような、と言ったら良いでしょうか。
インドやタイなど東南アジアをイメージしてしまうような、甘さの中にすっきりとした清々しさを感じるような不思議な感じがします。
嗅ぐことで、すっきりし、リラックスできる香りです。
4. 沈香と白檀の違いは?
先に述べたように、沈香は元々匂いのある樹木ではなく、樹脂が長い年月を経て変化したものです。
出来上がるまでに相当の年月を要しています。
それに比べて「白檀」はビャクダン科の樹木の幹をそのまま乾燥させたものです。
つまり、元々樹木自体が香りを持っています。
ですので、木が育てば比較的容易に取ることが出来ます。
また、扇子や家具などの材料としても使います。
英名はサンダルウッドといいアロマテラピーにも使われる、甘くさわやかさもある木の香りです。
5. 沈香の香りの香水
沈香の香りの香水というのは、かなり珍しいものです。
作ろうと思ったらご自身でオーダーして調香していただくという方法で、かなり高額になります。
沈香は香水としてつけるよりも、衣服に焚き染めるという方法をとるのが普通です。
但し、伽羅などの香りのイメージを使ったり分析して似た香りを調合したりというものは、いくつかあるようです。
5-1. 「香十」のオードトワレ
創業400年以上の香りの老舗「香十」のオードトワレです。
「ジュエモン」という名で何種類かの香りがあります。
いわゆる“お香”の香り、着物に似合いそうな香りです。
5-2. 「山田松香木店」の練り香水
こちらも江戸時代創業の老舗です。
液体ではなくクリーム状の練り香水。
「きぉと」に沈香が使われています。
クリームタイプなので、手首や耳の後ろなどにつけて使います。
5-3. 「武蔵野ワークス」の沈香
日本の小さい香水メーカーのものです。
名前はそのまま「沈香」ですが、やはり天然のものではなく香りを分析し作っているようです。
6. 沈香の効果や効能
自分の作品を競いあったり、部屋や衣類を香らせる“香”ですが、香りを楽しむだけではなく海外のアロマテラピーのように治療目的で使ってもいるようです。
近年では脳内物質の分泌に大きく働き、効果があるという研究も進んでいます。
では、実際の効果や効能にはどんなものがあるのでしょうか?
6-1. ヒーリング効果
一番の効果といえば、神経を落ち着かせ安定させるヒーリング効果ではないでしょうか。
沈香の香りを嗅ぐことによって脳内にα波やエンドルフィンを発生させる働きがあり、反対にアドレナリンの分泌は抑える効果があると言われています。
精神が安定しリラックスでき、癒されることによってストレスが軽減ざれ幸福感が高まります。
6-2 集中力が高まる.
鎮静効果があるため頭がすっきりし、集中力が高まります。
記憶力もよくなるという研究結果もあります。
戦国時代には武将たちが鎧兜にも香を焚き染めて戦いに臨んだとも言われており、これも戦いでの集中力を高められる効果を考えてのことだったのではないでしょうか。
6-3. 空気の浄化
科学的な話ではないかもしれませんが、空間を浄化してくれる作用もあると言われています。
お線香に代表されるように宗教的な事にお香が使われることも多く、風水でもお香を焚くことで、邪気が払われ空気は浄化されるとされています。
6-4. 一休和尚の“香の十徳”
沈香に限ったことではありませんが、有名な一休さんも“香の十徳”として香の効能を説いています。
上記の他にも“感覚が鋭くなる”とか“眠気が無くなる”また“常に使っていても害がない”長期保存がきく“などと言う内容です。
古くから実用的・効果的に用いられてきた証明ですね。
まとめ
日本古来の昔から、使われ続けている「沈香」。
奇跡的な自然の力で、長い長い年月をかけてもたらされた宝と言っても過言ではないでしょう。
線香など生活に根付いた実用的な使い方はこれからも続いていくと思います。
その中で日本の文化である“香りを楽しむ”というようなものも、是非生活に取り入れてみてはいかかでしょうか?
「香」は日本で平安時代の貴族から嗜まれていた日本の誇る文化です。
自分で調香した香りを焚いて競い合ったり、衣類に焚き染めて香水のように使ったり、海外のアロマテラピーのように治療に使ったりと様々。
その「香」の世界に使用する香木の一つが「沈香」です。
1. 沈香とは?
「沈香(じんこう)」は天然香料の一つで、主に東南アジア産、自然が長い時間をかけて作り上げた香木です。
ジンチョウゲ科等の樹木が台風や害虫などが原因で傷ついた時、木は傷の治療をするように樹液を出しカバーしようとします。
人間でいえばケガをしたときのカサブタの様なもの。
その樹液が樹脂となり長い時をかけバクテリアなどの働きによって変質し、独特の香りを持つようになったものです。
同じ香りは2つとなくそれぞれ違います。
この状態になるまでに50年以上、高品質なものになるには100年以上もかかります。
樹脂なので木よりも重く、水には沈むことから「沈香」と呼ばれるようになったといいます。
現在は一時期の乱獲により数が少なく、ワシントン条約で輸出入も制限されており、非常に手に入りにくい貴重品です。
1-1. 歴史
一番古くは「日本書紀」に記録があり、飛鳥時代から使われてきたと言われています。
その後平安貴族も戦国武将も、遊びや宗教的な儀式や生活の実用品として様々な使い方をしてきました。
江戸時代に入ってからは町人など平民にも広まり、儀式使用はずっと続いています。
また近年は日本の文化として再確認されつつあります。
1-2. 使い方
沈香はそのままでは香りません。
小さいかけらに熱を加えて香りを発生させます。
通常は専用の香炉の中にまず灰を入れ、おこした炭を埋め灰を温めます。
その上に沈香のかけらを乗せて焚くという方法を取ります。
温まった香木からほのかな香りが立ち上ります。
これを空薫(そらだき)といいます。
平安貴族の時代から行われてきた方法です。
1-3. 買い方
中にはただの木にオイルを染み込ませて樹脂に見せかけたり、香料を染み込ませただけの偽物などもあるようです。
ですので、日本のお香の専門店で購入することをお勧めします。
小さい塊もありますが、焚くには削ったり刻んだりして、グラム単位で販売しているものが便利です。
1-4. 「伽羅」について
沈香は産地などによっていくつかの種類に分けられますが、その中でも、油分の割合が高く特に品質の高いものを「伽羅」といいます。
非常に貴重で昔から珍重されており、かの織田信長も用いたという記録があります。
東大寺の正倉院に保管されている「蘭奢待(らんじゃたい)」が一番有名で、信長ほか何人かが少しずつ切り取って使ったようです。
今では枯渇したとも言われており、安くても1gで数万円する非常に貴重で高価なものです。
2. 天然沈香と栽培沈香
前述のように、天然の沈香は取れにくく輸出入も制限され、手に入れるのが非常に困難になっています。
そこで栽培沈香というものも出回っています。
まず木を栽培して、ドリルで穴をあける等人工的なダメージを与えます。
そうして樹液を出させ、バクテリアも人工的に増殖するのを助けます。
その上で20~30年熟成させて沈香にするというものです。
但し天然ものとは比べ物にならず、中には薬品を多量に使った粗悪品もあり、注意が必要です。
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